有名なバンド
アルマンは大通りを歩いているとビルの電光掲示板にニュースが流れているのを見かけた。
そのニュースはとある有名バンドがライブを中止するという発言をしたという内容だった。
ニュースを眺めながら足を止めていたアルマンに通りすがりの男が話しかけてきた。
「よお、このバンド知ってるのか?」
アルマンは一瞬ぎょっとしたがすぐに落ち着いた声で答えた。
「曲を聞いたことがある程度……有名ですからね。去年は世界ツアーも成功させたとか」
「そうなんだよ。だがライブの中止が多くてな」
ため息をつく男を見てアルマンは電光掲示板を指さした。
「ちょうど今も流れていますね」
「ああ、でもこれが初めてじゃねえよ」
男は少し語気を強めて言った。
「ええ、たしか2年ほど前にも似たような騒動がありましたね」
「そうさ、そして今回はもっとひどい。購入されたチケット代は返金されないと来たんだ」
男はついに怒りを隠さず拳を握りしめていた。
「その……チケットは買われたんですか?」
アルマンは男の気に障らないよう控えめに訊ねた。
「ああ、200ドルもしたいい席だ」
「それは、残念ですね……」
男を気遣うアルマンだったが、男は思ったよりも楽観的ですぐに立ち直った素振りを見せるとスマホの画面を見せてきた。
「実はな、今回のことで起こったファンたちがこのバンドたちが住む家に暴動に行こうって賑わっているんだよ」
「ええ、そうなんですか!?」
「よく見てろよ」
アルマンは驚いて男が差し出すスマホを覗き込んだ。
するとそこにはファンコミュニティで拡散されたバンドメンバーの家の写真と住所が載せられており、暴動の準備が進められていた。
「よく、家の場所まで特定できましたね」
アルマンが聞くと男は自身気に答えた。
「実はこいつらのマネージャーが情報流してくれたんだよ」
「なるほど……成功するといいですね。たしかにチケット代を返金しないのはやりすぎですよ」
アルマンは男の肩を叩いてその場を離れた。
そして少し歩くとアルマンはスマホを取り出して電話をかけた。
「マネージャーも呼んですぐに俺の家に集まってくれ、話がある」
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