走り屋

ミハエルは世界的に有名な走り屋だった。

親日家であるミハエルはずっと日本に行きたがっていたが交通整備が行き届いている日本は速度を出して走れる道路が少なく今まで断念していたのだ。

しかしミハエルはとある情報を聞きつけついに日本に上陸した。

「こんな公道でぶっ飛ばすのか?」

助手席に座ったスミスがミハエルに尋ねた。

「もちろんさ、わざわざ人のいない時間帯に来たから問題はないよ」

そういってミハエルは一気にアクセルを踏み込んだ。

すると車は段々と速度を増していきすぐに法定速度である60kmを超えた。

「まだまだいくよな?」

「もちろん」

スミスが聞くとミハエルはニヤついた。

そしてまたアクセルを踏み速度はあっという間に100kmを超える。

「公道なら警察がすぐに捕まえる速度だが本当に大丈夫なのか?」

「もちろんだ!」

スミスが心配になって聞くがミハエルはそれでもまだアクセルを踏み続ける。

車体は一気に加速し120,150,180と上がり続けた。

するとスミスの思った通り後ろからサイレンの音が聞こえ振り返るとパトカーが全速力で追走していた。

「おい、ミハエル! このままじゃ捕まるぜ、振りきっちまうのか?」

「そんなことをしなくても許してくれるさ!」

不安になるスミスとは裏腹にミハエルは終始楽観的だった。

そして車はさらに速度を上げて250kmまで到達した。その頃にはミハエルを追うパトカーの数は次第に増え何十台ものパトカーがミハエルを捕まえようとしていた。

「さすがにこれ以上はまずいぞ、ミハエル」

「このボタンを押せば大丈夫さ!」

そう言うとミハエルは車にある一つのボタンを押し込んだ。

するとミハエルたちを追っていたパトカーは一斉にサイレンを収め一台また一台と散らばっていく。

「すごいな、一体何のボタンだったんだ?」

不思議そうにスミスが尋ねると、ミハエルはサムズアップして答えた。

「ハザードランプは万能ボタンなんだ」

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