第10話
「ううん、何でもないよ!」
せっかく遊びに行く場所を考えてくれている紗希の前で暗い顔をするなんて、とても失礼なことをしてしまったと思う杏璃は必死に笑顔を取り繕う。
頭を切り替えて紗希が見せてくれたスマートフォンの画面を見ながら行き先を話し合う。
「じゃあ、ここにしようか!」
「うん。楽しみだね!」
行き先は、新しく出来たショッピングモールになった。ここは、映画館やアウトレットなども併設されているので完成前から多くの人が関心を持っていた施設でもある。
午後からの授業も終わり、放課後になるといつも通り部活動に所属している生徒達は足早に教室を後にする。
かくいう杏璃も、今日は予定があり真っ直ぐ家に帰るので手早く帰り支度を済ませてクラスメイトと挨拶を交わしながら足早に教室を後にした。
玄関口へと向かうと、先に教室を出た林くんが下駄箱からローファーを取り出しているところだった。杏璃に気付いた林くんは、杏璃の方へ顔を向けると声をかけてくれた。
「今日は、図書室に寄らないんだね」
「予定があって。林くんも、今日は早いね」
話をしながら、自分の名前が書かれた下駄箱を開けローファーを取り出した後、履き替えた内履きを中へとしまい込む。
「うん。今日は、父さんが久しぶりに帰ってくるから」
「そっか。それじゃあ急いで帰らないとだね!」
単身赴任なのか、はたまた違う事情があるのかは分からないが、林くんの表情や声色がなんだか嬉しそうなのでつられて杏璃まで笑顔になる。
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