第11話
せっかく最寄り駅が同じなのに、ここで分かれて別々で駅に向かうのは寂しいなと思っていると、「良かったら一緒に駅まで行こう」という林くんからの嬉しい誘いを受け、そのまま他愛のない話をしながら駅まで向かう。
中学までは全然話したことが無かったのに、今こうして林くんの隣を歩いて話をしているのが凄く不思議で、杏璃は夢を見ている気分になった。
ーーー好きな人の隣ってこんなにもドキドキして幸せな気持ちになるんだ。
「今日は、一緒に帰ってくれてありがとう」
「こちらこそ。中村さんと話せて楽しかった」
いつもは長く感じる乗車時間もあっという間で、気付くと最寄り駅に着いてしまった。
もっとたくさん話したかったな......あっ!
急いで口を押さえたとてもう遅い。杏璃は、心の中で思ったことをそのまま言葉にしてしまったからだ。
少し驚いた表情を見せたあと、柔らかく笑った林くんに心が弾む。
「俺で良ければ、また一緒に帰ろう」
「うん!」
「それじゃあ、また明日」
「また明日」
また明日...同じ高校に通っていなければ交わすことも出来なかった言葉だろう。杏璃の家から今の高校までは少し距離がある。そのため同じ中学出身の生徒はとても少ないのだが、接点のなかった2人が偶然にも同じ高校に通うことになり一緒に帰る仲にまで発展するなんて中学時代の杏璃からは想像もつかなかっただろう。
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