第5話
本のページをめくる音が聞こえてくる。
ゆっくりと目を開けると斜め前に居たはずの林くんが隣の席でブックカバーのついた本を読んでいる。
机に伏したままの上半身をゆっくりと起こすと林くんの目線が本から杏璃へと移る。
「おはよう」
優しく微笑む林くん越しに見える空は、オレンジ色に染まり黄昏時へとなっていた。図書室に残っているのは杏璃と林くんのふたりだけ。
「林くん、ありがとう」
私が1人きりにならないよう、起きるまで待っていてくれたのかもしれない。もし違うとしても林くんが本を読んで残っていてくれたおかげで私は一人にならずにすんだ。
「本を読んでただけだよ」
そして日が沈む前に帰ろうかと言い、杏璃がカバンに荷物を入れるのを待ってくれて2人で図書室を出た。
同じ中学に通っていた杏璃たちは地元も一緒なわけで、もちろん最寄り駅も同じ。
学校から駅までの帰り道、さりげなく車道側を歩いてくれたり電車の空いてる座席に私を座らせて林くんは違う人が前に立たないよう前に立ってくれたりと優しい一面をたくさん見せてくれた。林くんが優しいという事は、纏っている雰囲気で分かってはいたけどさほど関わりを持たない私たちはお互いを深く知らない。今日1日で林くんの優しさにたくさん触れて更に彼への気持ちを募らせていった。
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