第4話

杏璃は、受け取った参考書から目線を彼へと向ける。


「他に必要なものがあれば声をかけて」と杏璃に伝え、そのまま近くにあった参考書をいくつか手に取り自習が出来る座席がある方へと向かって歩いていく林くん。




その背を見つめて心の中で小さく呟く





「...好き」






ーーー私の初恋は、まだ始まったばかり






杏璃も自習をする為に図書室へ来たので彼と同じ方へと向かって歩みを進める。


将来、何になりたいとか特別な夢はなく安定した職に就いて安定した給料を貰えて普通の生活が送れたらいいなと思い勉強に力を入れてきた。




可愛いものが好き、甘くてふわふわしたお菓子が好き、ピンクのリボンや小物が好き。



好きを生かすにも、これじゃあなんの職種を選べばいいのか分からない。ボヤけて見える自分の未来。





ペンケースの中からピンクのシャープペンシルを取り、ノートと参考書を広げて書き進めていく。




ある程度書き進めたところで、少し休憩をしようとペンを置く。疲れた目を休ませるため静かに目を閉じると聞こえてくる音に耳を澄ます。



本のページをめくる音。ノートに文字を書く音。遠くから聞こえてくる運動部の声。吹奏楽部の演奏の音。



そして目を開けると見えてくる斜め前に座る彼の姿。



ここの図書室はとても落ち着く。




外から見える桜の木は暖かい風に吹かれて花びらを散らしている。そんな春の暖かい日差しに包まれ知らぬ間に夢の中へと落ちていった...。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る