第2話
杏璃が林くんのことを知ったのは中学生の頃。
2人は一緒の中学校に通っていたが、同じクラスになったのは最後の1年だけで特に何の接点もなく当然話したことがなかった。
中学最後の席替えで廊下側の席になった杏璃と真逆の窓側の席になった林くん。
きっかけなんて分からない。たまたま彼の読書する姿が目に入っただけなのかもしれない。
陽の光が漆黒の髪の毛を艶やかに照らす。
黒縁メガネの隙間から見える澄んだ瞳に鼻筋の通った整った鼻。
「綺麗だな...」
気付けば杏璃は林くんの読書する姿を盗み見るのが習慣となっていた。今思えば、この時から彼のことが気になる存在になっていたのかもしれない。しかし、卒業までの日々はあっという間で何の進展もなく2人は中学校を卒業した。
林くんの読書姿は中学で見納めだと思っていたので、入学式の日に隣の席を見て驚いたのは言うまでもない。何より、私の名前知っていてくれたんだ..
「おはよう、中村さん」
「..おはよう、林くん」
「また1年よろしくお願いします」
柔らかい表情で林くんが話し掛けてくれたので先程まで驚きと緊張で硬くなっていた杏璃の硬さが和らいでいく。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
杏璃は、再会出来た嬉しさが溢れ出し満面の笑みを浮かべる。その表情に林くんも優しい笑顔を向けた。
それから2人は毎日挨拶をする仲になった。
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