第6話 記憶を繋ぐ
あの日から僕はかけるに隠し事をしている。…そんな気がしていた。
―――――――――いつもの駅。
僕の目は忙しく動いていた。
…そう。あいつを探していた。
―――――――――数年前。
「ぁあ!!…っ!!…」
「何。痛いって言いたいのか?本当にそれだけか?」
僕は週末になると当時の相手に体を痛めつけられていた。
天井から吊るされた手枷を付けられて、
全身真っ赤になるまで…でも、終わった後には頭がすっきりしていて、また何よりもよかったのが、その後、優しく、激しく、愛して、抱きしめてくれた。
――――――――――――――――――。
「なに。待ち人来らずか?」
満員電車で揉まれながら耳元でそう囁かれた。
明らかにアイツだった。
「っ……」
まるで吸血鬼のように首に噛み付いてきた。
「勿体ないな。どうせ知らないんだろ?お前がこんな奴だって。」
「……。」
「待ってたんだったら素直にそう言えばいいのに。」
――――――――――――僕は次の駅で慌てて降りた。
そして直ぐにかけるに電話した。
「かけ!!今すぐ来い!!いいから来い!!………」
僕は過呼吸を起こしていた。
かけるは僕の異変に気付いて冷静に、
「今どこ?すぐ行くよ。」と優しく答えてくれた。
「…隣、…隣の…駅…」
僕が駅の影で呼吸が苦しくてパニックになりながらかけるを待っていると、暫くして、かけるが駆け寄ってきた。
「りょうた!!」
直ぐに僕を抱きしめてくれた。
「りょうた、帰ろ。大丈夫。もう大丈夫。」
―――――――――暫くして僕が少し落ち着いたのを見るとかけるは僕の手を引いて近くのホテルへ引き込んだ。
―――――――――――――――。
「………。」
「来たことあるの?」
「ある。」
「元彼氏と?」
「うん。」
「……。」
「……。」
「脱いで。」
―――――――――――――――。
「……ありがとう。」
「どういたしまして。…初めて見た。りょうたのこんな顔。」
「引いたか?」
「ううん。やっと見れた。」
「…隠してたんだけどな。」
「バレるから?前の人の事。」
「うん。」
「過去は過去でしょ。…僕も言えなかったんだよ?」
「なにを?」
「『どこまでやっていいの?』とか、『どっからが嫌?』とか。そういうのりょうた嫌いじゃん?」
「嫌い。」
「気を遣わせてるって思っちゃうしね。」
「……。」
僕は無言でかけるの手を自身の体に当てていた。
「りょうたは貪欲だね。。。」
―――――――――――――――――――――。
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