第5話 隠し事

――――――――ある日の仕事終わり。


電車を降りる時、たまたま目が合う奴がいた。

僕より少しガタイが良くてイケメンで…ちょっとムカつくやつ。


そいつはホームで立ち止まって僕が来るのを待った。こいつは手に取るように僕の行動、欲求が分かる。ムカつくけど…凄いやつ。


僕が隣を通り過ぎようとすると、腕を掴まれて抱き寄せられた。


「……。」

あえて何も言わない。


「…やめろ。」

「あぁ?」

「やめろ!!…」


振りほどこうとしたが包まれた。


「そんな簡単に逃がすかよ。」

「やめろ!!」


俺にはかけるが居る。

こいつにもう流されないって決めたんだ。


「…ダメか?もう無理か?」


…体が熱くなりかけていた。

何度も何度もこいつに抱かれた。

かけると再会する少し前の事、こいつにハマってた。


心はかける。でも体はこいつだった。

長い腕で包み込んでくれるこいつに溺れてた。


でも今は…。


「無理だよ…。」

「女でもできたか?」

「うん…。大事なやつがいる。」

「そうか…なら仕方ないな…。」



彼が僕を離した瞬間に僕は走った、走って、走って、走って…。


―――――――――――――――「……!!」


「おかえり。え?!…どうしたの?!…」

「かける…。」


僕は泣いていた。

泣きながらかけるを抱きしめていた。


「どうしたの??ねぇ、りょうた?!ねぇって!」

「大丈夫…なんでもない…しよ。」

「ちょっと待って…」

「かける!!…」

「りょうた!!…」


かけるは思いきり僕の頬を叩いた。


「……。」

「何があったか説明して。じゃないと夜ご飯食べさせないから。。…いいから座れ。」


僕は静かに食卓テーブルの長椅子に座った。

かけるは静かに隣に座って体を向けた。


「…で?なにがあったの?」

「……。」

「僕に隠し事してる?」

「……お前と付き合う前、男がいた。」

「それで?」

「そいつと駅で会った。」

「それで?」

「…抱きしめられた。」

「それで?」

「もうダメか?って。」


「ダメでしょ。僕いるじゃん。」

かけるが我慢出来ずに重ねて来た。


僕はかけるを強引に抱き寄せた。


「めちゃくちゃ好きだった。優しかった。体もでかかった。けど、もう流されたくなかった。俺にはかけるが居る…かけるが待ってる。だから…」


かけるは我慢の限界で襲いかかるようにキスしてきた。


「りょうたは僕のものだ。絶対に誰にも渡さない。りょうたは僕だけのものだ…。」

「……なら、遠慮すんじゃねぇよ。」

「こっち来て。ご飯なんか後でいい。」




―――――――――――――――。

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