第2話 手を引いて

「お久しぶりです。」

「久しぶりー!」相変わらず綺麗だねー!」

「そんな事ないですよ?」

「あれ?彼氏?」

「そうです。」

「いいねー。幸せそう。」

「はい。お陰様で。」


──────かけるが街でばったり知り合いとあった。


楽しそうに話す姿を見てなんだかイライラしてきた。だから、先を歩いて椅子に座った。


少ししてかけるが僕の目の前に立った。


「…バカじゃないの。なにヤキモチ妬いてんの。」

「あぁ?そんなんじゃねぇから。」

「じゃあなんでそんなイライラしてんの?」

「お前が…」

「僕が何?」

「……」

「ったくもう…寂しがりなんだからりょうたは。」


僕の顎をつかんでじっと目を見て来た。


「……。」

「わかってるからいいよ。」


かけるは僕の横に座って手を握ってくれた。


「安心して?僕、女の人に興味無いし、だからといって他の男の人にも興味無い。昔からなんだ。いわゆる『Aセク?無性?』なんだと思う。でもキラキラしてるもの好きだしネイルも好き。ピアスも好き。イヤリングも。ブレスレットも。」

「昔からお前はふわふわしてたもんな。でも可愛かった。今も変わらずな。だからイライラしてた。俺がお前が好きだからみんなお前が好きだと思ってた。」

「知ってた。本当に変わんないよね。心配性なとこ。」

「……嫌なんだよ。」

「病気。」

「うん。」

「でも僕が綺麗なのは好きでしょ?」

「好き。」


「顔赤いぞ。」

かけるが可愛くいじってくる。


「…うるせっ。」

「…クレープ食べたい!りょうた!クレープ食べたい!」

「えぇ?急に?」

「クレープ!クレープ!行くよ!」

「あ、あ、うん…」


かけるに手を引かれてクレープの売り場へ向かった。



───────────。


「りょうた、何がいい?僕これがいいな。」

「なにこれ!ザクザクチョコ?」

「美味しそうだね。それにしようか?」

「お前食べねーの?」

「え?分け合うんだよ?」

「……」

「何想像してんの。」

「え?」

「あ、すみません、このクレープ一つお願いします。」


────────────近くのテーブルと椅子がある場所。


「ほら、あーんして。」

「うん、…うまい」

「美味しい?……ほんとだ。ザクザクも面白いね。」

「……」

「?」

「付いてる。」

「…りょうたも。」


お互いがお互いの口に付いたクリームを指でとって舐めていた。

やってる事は全く一緒。だから楽しいし、面白い。


「…そうだ!プリクラ撮りに行こうよ!」

「え?プリクラ?」

「いいじゃん!行こうよ!行こう!」


まだ口の中にクレープが残る中、また手を引かれて連れて行かれる。


でも僕はこいつに引きずり回されるのが好き。

僕を犬のように扱ってくれるから。


僕は昔からこいつの犬だったから。居心地がいい。

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