新たな旅
交錯する行動
アルム王国がこの世界から姿を消して1週間が
経過した。
ここはとある国の、王城の一室である。
アルム王国が滅ぼされた事で、緊急の会議が
開かれていた。
「……未だ、アルムを滅ぼした者の目処は立たぬか……。」
机を囲むのは、各国の王と、ギルドマスター。
数えると、16人程居る。
一番偉そうな人が、話を進める。
そこに、2人組が入ってくる。
その2人は、座らずに立ったままだ。
「……お主らは、なぜ生きておるよ。」
皆の視線がキルトとユイカに向かう。
2人は説明する。
「…………私たちは、見逃されました。」
ユイカが下を向きながら言う。
するとキルトがそれをかき消すくらい大きな声で言う。
「いやぁ、これは言い方が良くないかなぁ。戦った結果負けたら、国が無くなった代わりに自分達が生き残った☆」
キルトはすごく明るく言う。
すると、一人の屈強そうな男が突っかかる。
「アァ!?国の代わりにお前らだけ生き残っただァ!?フザけてんのか!?」
机をぶっ叩き背中の斧を持ち、キレる。
が、その国の王が止めに入る事で、収まった。
「……まぁ、ガイの言う事も一理ある。」
止めに入った王が、キルトとユイカに厳しい視線を向ける。
「お前らだけ生き残ったところで、国は無くなり、国王は死に、国民も消え失せた。土地だって、何も無くなった。いずれは我らにも被害が来るやもしれん。そこに関しては、どうするつもりだ?」
ご最もな意見である。
ユイカは、キルトに視線を送ると、OKの返事が来たので、言う。
「…私たちは、犯人がわかります。」
一同がざわめく。
「かなり、細かい所までわかります。」
「でも、言うつもりはありません。」
「…どういう事だ?」
さっきまで話を進めていた王がユイカを睨みつける。まぁ、普通の反応だ。
「これは、私達の問題です。」
「貴方達は知った所で、滅ぼされるだけ。」
ユイカは色々覚悟が決まっているようで、
前まででは考えられない発言をする。
キルトは感心しているようで、フォローに入る。
「まぁ実際、全部の国の戦力+ギルドマスター達総出でかかっても勝算は0に等しいね。」
ギルドマスター達がざわめく。
一応、ギルドマスターの中で一番強いのは
キルトらしく、その一言で国王達は全員黙り込んだ。
「…私達の世界の敵は、そんなに強いの?」
話を進めていた王の国のギルドマスター、ルナが問う。容姿相応に、まだ冷静なようだ。
「うーーん、そうだねぇ。」
キルトは溜めて話す。
「強いとかじゃなくて、『勝てない』かな。」
皆、静まる。
「まず、向こうは常時意識を共有し合う2人組状態だ。そして、各自の状況判断で魔法を使ってくる。さらに、魔法の威力はハッキリ言ってヤバい。弱い魔法でも民家ひとつ吹き飛ぶ。」
「さらにさらに、一人の体で二人組な訳だから、不意打ちは通用しない。戦ってみてわかったけど、普通の攻撃だって、一回も当てられなかった。」
「そんでもっていちばん怖いのが、まだ底が
分からない。国ひとつ滅ぼした魔法も、詠唱するだけでクソデカ魔法4つ使ってきたし。因みに、口の詠唱と無詠唱を2人分ね。」
もう皆何を言っているのか分からなそうだった。そこで、ユイカが簡単にまとめる。
「…つまり、もし戦うならこっちの攻撃は当たらないのに、向こうの理不尽な攻撃には耐えながら戦わないといけない…って事です。」
「…そこまでして、この世界を憎むのね。
その人は。」
ルナは眉間を摘む。
というか、皆頭を抱えている。
「…まぁそういう事なので、皆さんは頑張って下さい。私達も、全力で止めに行きます。」
そう言い、ユイカとキルトは帰ろうとする。
そこで、止められる。
「勝算がないのに、どうやって止めるつもりなのかしら?」
確かに、そうだ。現状、勝ち目はない。が、
こっちは負ける気もない。
「うるさいですね。弱者共は黙って滅ぼされててください。これは、私なりの覚悟です。」
途轍もない圧。
カシアとは違う、ただ純粋な圧。
皆が気圧されているうちに、部屋から出る。
「…良かったのかな?あんな事して。」
キルトはからかうようにユイカの頬をつんつんする。
「まぁ、大丈夫でしょう。多分。」
そう言い、ワープでユアが待っている拠点まで帰った。
「…なんなのだ、あいつらは」
残された人達は不満そうにしていた。
「ぽっと出の奴が、出しゃばりおって…」
そう嘆いていると、机の上に一人の少女が急に現れる。
「…!?」
ギルドマスター達は戦闘態勢に入り、
王達は椅子から立ち上がりその場から離れる。
「……あれ、驚かせちゃったかな?」
そう言うと、辺りを見渡す。
「…貴方は、誰ですか?」
ルナが問う。カシアはその問いには答えない。
皆とても良い反応だ。潰しがいがある。
「まぁ、お話だけでも聞きやがれ下さいな。」
そう言うとその人は、全員の首に
『グラディオス』を突きつける。
遠隔で操作できるのは、 本当に便利。
「一歩でも動けば、死ぬからね?」
笑顔で皆を見る。ある人は怯え、ある人は機会を伺う。
「では、私からの宣戦布告を。」
そう言うとカシアは、丁寧にお辞儀をする。
「えっと…なんて言えばいい?」
言いかけたところで、カシアは虚空に語りかける。変なところを向いたので、ガイは自分に向けられた『グラディオス』を破壊し、カシアに自分の斧で斬りかかった。
「…アハ♡」
ようやく動いてくれた、といった感じで、
カシアは新しく展開した『グラディオス』で
ガイの首を斬り落とす。
生首が机の上に転がる。
部屋には、血なまぐさい匂いが籠る。
「だからダメって言ったのに……悪いとは思わないでね。」
カシアは生首を体の方に蹴っ飛ばす。そして、
「『死者蘇生』」
と唱え、ガイを起こす。
「…は?」
皆、同じ反応をする。
ガイは何が起こったのか分からず、首を押さえて固まっていた。
「えー、では改めて。」
この状況でも、カシアは続ける。
「私、カシアって言います。私の目的は、この世界を絶望に包む事です!」
よろしくっ!
と、頭を下げる。
「どう?上手く演技できた?」
真顔に戻り、誰かに問う。本当に、明るく演じしているようだ。
「…貴方が、アルムを滅ぼしたの?」
ルナはカシアに問いかける。
が、カシアは興味無いようで、
「それって、重要?」
ルナを睨みつける。
殺気により、ルナは立っていられず、膝をつく。
国王達は、殺気にやられて全員突っ伏した。
「今大事なのは、貴方達が私の敵になるかどうか…なんだけど、なんか期待できないかな。」
つまんない。と呟くとカシアは、
『グラディオス』の展開を辞め、入口に向かって歩き出す。
さっきのを見てしまえば、誰も動けない。
緊張により、汗が止まらない。
「じゃあね。もしまだ生きたいなら、ここから出ないでね。」
扉が閉まる。
部屋の外では、王城にいる人たちの悲鳴が聞こえる。ルナが飛び出していけば、廊下は血の海だった。
「…あれが、私達の、敵。」
そう呟き、ただただ立ち尽くした。
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