準備と作戦
あの後部屋を出た2人は、キルトから宿を案内してもらい、そこに泊まった。
「さぁユイカ。準備をするよ。」
カシアはお金を持ってユイカに呼びかける。
「そんなに沢山お金を持って、どこへ行くんですか?」
ユイカの疑問にカシアは、
「それはね…」
言いかけたところで、『ぐぅぅぅぅぅ…』
と、お腹がなってしまった。
まるでお腹で返事したみたいだ。
「…わかりました。行きましょうか。」
察したユイカはカシアについて行くことにした。そして近くの肉料理店に入った。
「カシアさん、賊を倒しに行くのに準備しなくていいんですか?」
ユイカが問いかける。
「逆に準備するような物ある?」
カシアが答える。確かに、ユイカは何も持たなくても魔法は使えるし、カシアは『空間魔法』の中に既に『禁忌魔法』の本は入っている。あとは準備と言えば、腹ごしらえ位だろう。
「確かにそうですね。では、いつ出発しますか?」
カシアは少し考え、
「明日は昼に敵情視察。夜に作戦開始の流れで行こう。」
「了解です。」
と言い、2人はステーキにかぶりついた。
今日はとてもよく眠れた。お肉が美味しかったのだろう。
「さぁ、まずはこの森のどこに居るかだね。」
たっぷり寝て万全な2人は森の入口に来て、どうやって敵の拠点を探すかを考えた。
「カシアさんの『サーチ』でいいのでは無いですか?」
ユイカが提案するが、カシアは
「なるべく、禁忌魔法は使わない。『探索魔法』的なものが普通の魔法にあるかはわからないし、無かった場合、ギルド側に怪しまれる可能性があるからね。」
「なるほど。」
確かにバレたら面倒な事になりそうだ、
とユイカもわかった。
「それじゃ、まずは入りますか。」
カシアとユイカは森に入っていった。
「まずは前に男を倒したところまで行ってみようか。」
「はい。」
まずは、あの男との戦いがあった場所に行く事にした。
「やっぱり、何も無いね。」
辺り1面には何も無い。
「証拠はなるべく消しましたしね。」
「あの男が着いてきたのは歩いていた時だから…私達が来た道を戻ってみようか。」
「わかりました。」
まずは歩いて来た道を戻ってみることにした。
あの男が単独で動いていた可能性が高いが、近くに拠点があるかもしれない。
少し歩いて、人影が見える。2人は陰に隠れた。
「当たりだね。」
「そうですね。あの洞窟に門番が居ますね。」
そう言い、2人は森の奥の洞窟を見た。
入口に門番が2人。物資の搬入をしている人は通している。
「うーん、夜も門番がいた場合どうしようか。」
強行突破もありだが、気づかれた場合沢山の人が押し寄せてくる事になるだろう。
「あ、あそこ見て下さい。」
そう言われ、カシアはある男を見る。
その男は、小さな女の子をケージに入れ、運び込んでいた。奴隷として他国に売るのだろう。
もしかしたら私たちもああなっていたのかもしれない、と思うと冷や汗が止まらない。
「助けてあげたいですね。」
ユイカが心配そうにしているが、内心では相当怒っている。
「……いい事思いついたかも。」
カシアがある事を提案する。
「…私はいいですけど、カシアさんがどうなるかはわかりませんよ?それでもいいんですか?」
「まぁこれがいい方法だと思いたい。」
カシアはそう言い、準備に取り掛かった。
そして夜。
2人は洞窟の前に来ていた。
カシアはケージに入れられた奴隷として。
ユイカは捕まえた賊側の人間として。
さっき、洞窟から出た男を1人殺した。
そして、『トランス』という魔法を使ってその男とそっくりになるように変装した。
「おぉ、帰ったか。…ほぉ、中々に上玉持ってきたじゃねぇか」
門番が男…つまりユイカに向かって話す。
「だろ?俺には運があるってもんだ。」
あの男らしく話す。カシアはそれらしく、男達を睨みつける。
「ちっとくれぇ遊ばしてくれてもいいのになぁ。なるべく新品にしなきゃいけねぇのはめんどくせぇな」
門番がつまらなそうに言う。そういう決まりが無かったら、この中は確実に地獄と化していただろう。
「しゃーねぇだろ。ボスが言うんだからよ。」
もう1人の門番が言った。この集団のボスへの信頼は厚そうだ。
「まぁ、ガキ1匹くらいばれねぇだろうけどな」
「おいおい、シェイド様はガキを壊して持ってくるからボスにいつも怒られてるじゃねぇか」
なるほど。あいつはシェイドという名前だったのか。2人はそう思いながら、死んだとも知らずに話す門番の話を相槌を打ちながら聞く。
「ま、俺らには縁の無い話だろうよ。こいつを運んじまうから、通してくれや」
少し経ってからユイカがそう言うと、門番の2人もそれに肯定しながらユイカを通した。
『まずは作戦通りだね。』
カシアは『念話』でユイカの脳内に直接話しかける。
「取り敢えず、私を奴隷置き場に置いてくれれば十分。合図を送ったら、派手にやっちゃっていい。」
「了解です。」
と話した後、ユイカは奴隷置き場にカシアを置き、その場を後にした。幸い、私以外の奴隷は今はいなかった。カシアはバレないように、
「『ディスペリア』」
と唱え、鍵を開けて外に出た。すると1人近付いて来たので、
「『クロノシリア』」
時間を止めて物陰に隠れ、解除した。
賊の1人がカシアが入っていた檻を見る。
「あ?なんで空いてんだ?」
賊が辺りを見渡す。そして、カシアが居る物陰に近付いてきた。
「『透視』…『ファイアバレット』」
2つの魔法を使い、物陰から倒した。
カシアはユイカに『念話』で合図を送る。
「ユイカ。ここからは派手に行くよ。」
「了解しました。ド派手に行きます。」
2人は『トランス』を解き、戦闘態勢に入る。
そして2人の攻撃が今、始まる。
禁忌魔法使いの世渡り 青薔薇 @s7bluerose
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