今の強さ

「「お金、持ってない…」」


そう気付き、焦る2人。


「お金が無いんじゃ、買うどころか街にも入れません!」


「お、落ち着いて!なにか方法はあるはず!」


「……あ、これはどうでしょう!」

「遠い村から冒険者になるために来て、お金がありません!とか!」


「お金が無かったら、冒険者登録の為の試験も受けられないでしょ!」


「そこは、なにか持ってるものを売ればどうにかなります!きっと!」


2人での話し合いは続いた。


そして、20分が経った。


「はぁ、とりあえず、私達は冒険者になるために王国に来た村娘2人。ってことでいいのね?」


と要点をまとめるカシア。


「そうですね。それで合ってます。」


と、頷くユイカ。だがカシアは乗り気では無い。なぜなら。


「なんで!12歳にならないと!いけないの!」


正しく、これだった。


「しょうが無いじゃないですか!20歳の大人が

『私たち、冒険者になりに来た村娘です』なんて言ったら変じゃないですか!」


「まぁそれはそうだけどさぁ…」

「わ、私の成長したお身体が…」


カシアはあの成長した身長が恋しく感じた。

お胸はあんまりだったけど。


「しかも私が剣士なんてねぇ…」


色々と1人でへこむカシア。


「我慢して下さい。これは必要なことです。」

「パーティーを組むには前衛後衛が1人ずつ必要なんです。」


淡白に答えるユイカ。確かにユイカは魔法しか使えないし、これでいいのかもしれない。

しかし。こいつはちっちゃくなっても大きいところは大きい。許せん。くそが。


そんなこんなで、2人は拠点にワープしたりで1週間かけて王国の前まで来た。


「ではカシアさん。手筈通りにお願いします。」


「はいはいわかったよ…」


乗り気では無いが、久しぶりに王国に入るとなると、緊張が先に来る。


そして、門の前まで来た。


「止まれ。身分を提示出来るものを出せ。」


門番に止められた。そしてカシアは精一杯の演技をする。


「あ、あの、私達、冒険者になりに来たんですけど…」

「出てきた村が田舎で、お金とか、そういうの持ってなくて…」


と、もじもじして言う。後ろで真顔だが心は笑っているユイカには、後でちゃんとおしおきする。


「どこの村から来た?」


門番は少し表情を緩めて問う。


「バルバ村です。」


すると門番は驚いたような口調で、


「バルバから来たのか。遠いのによく頑張ったな。少し待っていろ。すぐに隊長に掛け合ってみよう。」


と言い、もう1人の門番を横の部屋に行かせた。


「大変だっただろう。どれくらいの旅をしてきたんだ?」


話しかけてきたので、それっぽく答える。


「えっと…4ヶ月くらいですかね…?」


「すごいな。君たちは強くなれそうだ。」


世間話をしていると、帰ってきた門番が通っても良いと伝えてくれた。


「さぁ、王国へようこそ。頑張れよ!」


門番は門を通してくれるようだ。


「あの…入国料とかは…?」


カシアは驚いた表情をして言ってみる。

まぁあらかた予想はつくが。


「なぁに、ここまで頑張ってきたんだ。」

「そのくらいなら、見逃してやる。」


ふっ…と内心思いながら、


「「ありがとうございます!」」


2人で礼をして、門を通った。


そこには昔と変わらないような、でも少し変わっている、懐かしくもあり憎くもある光景が広がっていた。


「本当に、戻ってきたね。」


「はい。何だか感慨深いです。」


2人で王国を見上げながら、感傷に浸った。


「まずは、持ってる魔獣の色々なものを売らないと」


「そうですね。店を探しましょう。」


と、人に聞きに行こうとするユイカ。

だがカシアはユイカを止め、


「昔のままなら、確かこっちにある。」


と言い、ユイカを連れて大通りをスタスタ歩いていくカシア。


「凄いですね。覚えているなんて。」


褒めてくれたので、少し鼻が高くなるカシア。


「ま、記憶力には自信があるからね。」

「さぁ、着いたよ。色々売れる場所。」


そんなカシアが指を刺したのは、冒険者ギルドだった。


「え、ここって、冒険者じゃなくても入っていいんですか?」


と疑問に思っているユイカに、カシアは自慢げに答える。


「たまに売りに来る人がいるんだよ。」

「私たちは、売りに来て登録もできるから一石二鳥ってやつだよ!」


「確かに売れるとは聞いたことがありましたが、子供でも行けますかね…?」


心配しているユイカと、2人で入っていく。


中は冒険者で賑わっていた。

任務を行うための掲示板。任務に行くパーティー募集。併設された酒場など。


カシア達は『魔獣物資売却』と書かれた所に向かった


「次の方どうぞ〜。あら、子供?どうしたの?」


と優しく声をかけてくれるギルド受付嬢さん。


「あの、冒険者登録をしたいんですけど、」

「村から出てきたばかりでお金が無くて…」

「途中倒してきた魔獣の物を売りたいんです。」


と言って、背負っていたバッグから前に取った石の様なものを取り出して、カウンターに置いた。その他にも、怪しまれない程度の、牙や皮等。


「すごいね、倒してきたんだ。鑑定するから、

少しの間待っててね。お名前は?」


「カシアです。」


「カシアちゃんね。終わったら呼ぶからね。」


と言い残して奥に入っていった。


「とりあえず、何とかなりそうだね。」


「そうですね。少しはお金になるといいんですが…」


そんな事を話していると、1人のでっかい酔っ払いがこっちに来た。顔が真っ赤だ。


「よ〜ぉ嬢ちゃんたち、ここに何の用だぁ?」


と、絡んできた。周りの目が集まり静まるが、助けようとはしない。そういう場所だ。


「うわぁ、典型的な悪い人ですね。」


ユイカがにやにやしながら煽るように言った。


「んだとクソガキ!舐めてんのかてめぇら!」


男は拳を振り上げ、こちらに振るってきた。

だが、2人は当然避けたのでその拳は当たること無く、床に刺さった。なんか、周りも盛り上がってきた。


「カシアさん、どうしますか?」


と判断を委ねてくるユイカ。


「私がやる。実力を測っておきたい。」


そう言うとカシアは、どこからか木で作った短剣を取り出し、構えた。


「んな物で勝とうとしてんのか!?」


男は高笑いをし、振りかぶって来た。


「はははっおっそい攻撃だねぇオジサン。」


そう言い軽く避け、男のつるぴか頭に短剣を思いっきり叩きつけた。


「いってぇ、なぁぁ!」


もう1発きたのだが、怒りにまかせており隙だらけなので今度は容赦せず、拳に短剣を突きつけて指を折ってあげた。パキパキといい音が響き渡った。


「ぉぉぉぉ!!いってぇぇぇ!!」


そう叫びながら手を抑える男に、


「うーん、快感。」


と言ってやった。本当に気持ちがいい。


「はぁ、俺を怒らせちまったなぁ嬢ちゃん。」

「こっからは武器使わしてや」


といい、今のカシアの半分くらいある剣を持ってきた


「いいの?オジサン。取り返しつかないよ?」


と警告してみるが、


「いいんだよ!俺の気がすめばなぁ!」


話を聞かなかったので。


「そっちが悪いんだからね!私はもう知らないよ!」


と言った。突っ込んできて、あと少しで剣が私を貫きそうだ。


「あぶな〜い!」


わざとらしく声を出し、またも小さい体を生かししゃがんで避け、しゃがんだ足を活かして男に一瞬で近づいて男の首に本物の短剣を突きつけた。


「まだやります?」


少し煽ってみたが、男は剣を落とし、


「降参だ。やるな嬢ちゃん」


と言ってきた。これで確信した。今の私は

『禁忌魔法』が無くてもそこらの冒険者よりかは強い。これならユイカでもいけそうだ。


気がつけば周りがもう1段階盛り上がって、うるさい程になった。カシアが短剣をしまい、ユイカの元へ向かう。すると、1人の男が降りてきた。その男を見て、皆は静まり返った。


「いやぁ、見させてもらったよ。凄いね。」


チャラそうな見た目をした、金髪に緑色の目をした男だ。だが、直感でわかる。この人は強い。


すると襲いかかってきた男が口を開いた。


「はっ!ギルマス直々に来やがったか!」


その言葉に、カシアとユイカは固まった。


「ギ、ギルドマスターさんですか?」


なんで一番偉い人がこんなメスガキ達に構うのかわからなかった。


「せ〜いか〜い!僕がギルドマスターだよ!」

「名前はキルト!」


名前を聞き、思ったことを言う。


「平民の出なんですね」


「そうだよー!成り上がったんだ!かっこいい?」


と反応が欲しそうにこちらに返答を求めてきたので、


「驚きました。こういうのは上の身分の人がやる物だと思っていたので」


少し冗談を交えて返した。だが、そう思ったのもまた事実だ。


「まぁ冒険者は実力があればいいしね!」

「まぁそんな事より、君達は冒険者登録しに来たんだよね?」


「はい。2人で登録しに来ました。」


「カシアちゃーん。終わりましたよー…なんですかこの状況…?しかもなんでギルドマスターまで…?」


受付の人は混乱していた。はっきり言って今の状況はなかなかにカオスである。


「ははっ少し目立ちすぎたかな?」

「ちょっと話したいことがあるから、ついてきてくれる?」


キルトが上の階に誘ってきたので、


「わかりました。行こうユイカ。」


と、2人でついて言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る