進展

行動

「もう大丈夫ですか?」


ユイカは頭を撫でながらカシアに問いかける。


「うん…もう大丈夫…ありがとう。」


と、少し涙ぐんだ声で返すカシア。

すると、


「…ふっ」


ユイカが笑った。


「な、なんで笑ったのさ」


「なんでと言われましても…カシアさんもまだ子供なんだなぁ…と」


「…子供で悪かったね」


「…ふふっ」

「はははっ」


雑談しながら二人で笑いあった。



二人で過ごして居て、世界が彩りを帯びてきた気がする。お互い心の内を知っているからだろう。隠すこと無く仲良く接することが出来た。


そして、なんやかんやで沢山の時間を一緒に過ごしていた。ユイカも気が付けば大人の女性になっていた。最早私より歳上のようである。


ユイカからの要望で容姿は20歳の容姿にしてある。なんと言うか、the・大人って感じである。


そんなある日、the・大人なユイカからある提案があった。


「カシアさん、王国へ行きませんか?」


と。


「王都かぁ…確かに捨てられてから行ったことないね」


確かに、捨てられてからはこの森で生活していた。王都に興味を持たなかったし、行く必要がなかった。でも、一度行ってみるのも有りだし、ユイカの望みも少しでも多く叶えてあげたかった。


「よし、行ってみよっか!」


「はいっ!楽しみです!」


と、二人で楽しむことにした。



と思ったが…

カシアはある事に気が付き、ユイカに問う。


「…ねぇユイカ」


「なんでしょう?」


「この森、どうやって出る?」


「出口、分からないんですか?」


…………


「「どうしよう…」」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


少し時が経って…


「ま、まぁ上から見てみるのが1番だよね!」


「そ、そうですね!上から見ましょう!」


と、二人で決めたが。


「そう言えば、私高い所あんまり好きじゃないんだぁ」


というカシア。ユイカも答える。


「えっと…私も苦手です…」


……


またも、沈黙が流れた。

そしてお互いを見合って…


「さーいしょーはグー」


と、始めるのだった。


「う、うぅ…なんで私がこんな目に…」


先程のじゃんけんで、カシアは負けてしまった。嫌々空を飛んで辺りを見渡した。


「や…やっぱりこわぁ…早く見つけよう」


そして、ちょうど迷宮の出口の方向に20キロ程

離れた場所に城壁が見えた。うっすらだが城も見える。


「うーむ、多分あそこかな…うっ、やっぱ高いところはこわい…」


爆速で地上に降りてきた。


「どうでしたか?」


満面の笑みでこちらに結果を聞いてくるユイカ。少し拳が出そうだったが、それを抑えて、


「この迷宮の出口の方向へ20キロくらいかな?そこに城があったよ。多分アルム王国のやつだと思う。」


カシアは記憶に自信があり、城の形は覚えている。捨てられた頃とは変わらず、今も健在なようだ。


「以外と遠いですね。いつ出発しますか?」


と問いかけてくるユイカ。


「うーん、準備って言っても瞬間移動で戻ってこれるし…」


そして1泊を置いて、


「よし今から出発だ」


「そうですねそうしましょう」


と、急遽出発が決まるのであった。


出発が決まって、1キロ程歩いたその時。


「しっ」


と、カシアがユイカに向けて手を向け、しゃがむように指示を出した。

草に隠れ、隙間からカシアが見ていた方向を

見ると、そこには狼型の魔獣がいた。


「あ、あの魔獣って…」


「そ。君が捨てられた時に襲われた魔獣だよ」


自分も、最初は怖かったなぁ…と昔を思い出しながら、ユイカに言う。


「ユイカ、実践練習だ。」


「確かに、実際に魔獣と戦ったことは無いですね。」

「…頑張ります。」


と、ユイカは少し緊張気味に返事をした。

そして、魔獣と対峙する。

ユイカは昔見た魔法書に書いてあった魔法を使う。


「『ファイアボール』」


魔獣に向かって1m程の火の玉が亜音速で飛んでいく。魔獣は為す術なく、焼かれた。


「ふぅ…」


一息ついて、カシアの所に戻っていく。


「どうでしたか?」


カシアに感想を求める。


「一撃で倒しちゃったけど、通用はするね。」

「一撃で倒しちゃったけど。」


すごく強調されているが、褒めと見ていいだろう。ユイカは少し自信が持てた。


「まぁ、あの威力であのスピードなら、今後1人で対峙しても大丈夫でしょう。」


何か含みのある言い方だったが、気にしなかった。


するとカシアは、ふと思い出したかのようにユイカに聞く。


「そう言えば、王国に行って何するの?」


「少し、魔法を知りたいと思いまして。」

「魔法書を買えたらいいなぁ、と。」


ユイカは答えた。

本、あるかなぁ。お金、足りるかなぁ。

そう考え、2人何かに気がついたかのように固まった。


「「お金、持ってない…」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る