人生を、もういちど。

『魔の力を持たざる者よ。』


『本を手に取り、運命を破れ。』



この文を見た時、カシアは固まっていた。驚いていた。確かに、自分は魔力を持っていない。

だが、ここは魔法が全ての世界。魔力を持たない者が忌み嫌われる世界。


なのに。


「なんで、魔力が無い人のために…?」


混乱。困惑。色々な考えがよぎった。

理解が出来なかった。

『普通』の人にこんな本はいらない。必要ない。あっても、開けない。でも。だからこそ。


「私なら。」


ページを進めた。そこには、魔法について明記されていた。


「…え?なんで魔法?魔法を使えない人への本じゃないの?」


カシアはそのページをよく読んだ。

だが、そのページには魔法陣についてしか書かれていなかった。なのでその魔法陣についてよく読んだ。ページをめくってみたが、その後は白紙だった。



「この、魔法陣の中心に立てってどういうことだろう…」


カシアは周りを見渡し、柱の奥側にドアを見つけた。


「なんでこんな所にドアが…」


と、疑問を持ったが、

カシアは、答えを出すより先にドアを開けて見ることにした。その先に広がっていた光景に、カシアは驚愕した。


「これって…どういうこと…!?」


カシアの前には、野原のような自然が広がっていた。だが、違和感もあった。

太陽が無い。空が作られている。なのに自然がある。だが、そんな事よりも嬉しい事があった。


「…あっ!家だ!家がある!」


目前の家に、カシアは喜びを隠しきれなかった。迷いなく家に入った。だが、その家には何も無かった。あったのは、少し不気味な魔法陣だけだった。


「魔法陣…これって…本のやつだよね。」

「………『中心に立て。』か。」


カシアは好奇心に負け、中心に向かって足を運んだ。中心に立った所で、魔法陣が光を放った。そして、カシアに異変が起こった。



「えっ、えっ?な、なにこれっ!」


この時、カシアには、何か不思議な物が流れていた。何かが体に巡って行った。

そして、終わった後、魔法陣の真ん中には


『この魔法を、来世に。』


と言う文が浮かんでいた。


よく分からないが、きっとこの魔法陣を作った人は自分と同じ境遇の人を作りたくなかったのだろう。


「あ、そういえば。」


と、本に続きの文がないかどうか確認をしよう。ページを開いたカシアは目を擦った。


「あ、あれ?文字が見える…」


さっきまでなかった文字が、見えるようになった。最初の文には、


『禁忌魔法は、魔力を介さず使用する事ができる。だが、魔力を持つ者はこの魔法を使用できない。世界は禁忌魔法を異質の物とし、神が作ったと言う魔法を否定する物だと考えてきた。故に、この魔法は邪険とされ続け、生み出した私は処刑されるだろう。頑張って逃げてはいるが、捕まるのも時間の問題だ。

だが、使用するのは問題が無いはずだ。

そこでだ。何年後になるかも分からないが、

この文を読んでいるであろう君には、

この魔法を絶えず後世に伝えて欲しい。

もう時期この世を去る私からの願いだ。』


と自筆で書かれていた。その次のページからは様々な魔法だけでなく、世界の事等についても書かれていた。何故だか、カシアはこの人の願いを叶えたかった。同時に、自分に出来るのか。そう思ったのだ。

が、それを実現するための禁忌魔法。

言ってしまえば、それが無いと実現できない。


「…よし!頑張ろう!時間は沢山あるんだもん!」


カシアは思った。この出会いは奇跡であると。

そして、この世界を、自分を、自分の力で変えたいと思った。

もし私と同じような境遇の人が居るならば、見放さず、家族の愛を受けられる様な世界にしたい。


「何年かかってもいい!私は、禁忌魔法で私の世界を変えてみせる!」



これこそが、捨てられた禁忌魔法使いの少女が運命を変えるための長い、長い物語の、序章であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る