敵ではなく味方で良かった
穢れが負のエネルギーというのであれば、その逆の正のエネルギーもあるということ。
神から選ばれ特別な能力を与えられた余所者だけではなく、この星に生きる生命は基本的にこの正のエネルギーを使っていた。
魔力、霊力、生命力、元気などなど。名称こそ違えどそれらが正のエネルギー。
穢れが破滅を象徴する負のエネルギーであるのならば、正のエネルギーは再生や創造を象徴していると言えるだろう。
正があるから負も存在してしまう。だからこそ、穢れというものが生まれ続けるのだ。
「そう、あっしの能力は穢れが重要になっているんですよ」
「精霊は穢れを浄化し、お前はその際に生まれるエネルギーを魔力の代用にしている……ってことか」
「なんか、植物みたいっすね」
穢れが澱んでいる場所を事前に把握しておき、必要な時にいつでも使えるように拠点を構えているらしく。
今目指しているのはテレポートをするのに必要な穢れが溜まっている場所、ということになる。
拠点と言っても仰々しくででーん! と家や小屋を用意しているわけではない。そのほとんどは地下に掘った最低限の広さを確保した空間であるのだそう。もし仮に誰かが近くを通ったとしても気付かれる可能性は低いのだとか。
見つかる可能性が特に高いのは精霊使いなど同業者の場合。流石にミツキくらいになると瞬時に見つかってしまうが、アインくらいのレベルの者ならば意識してい探さないと見つからないくらいの隠密性であるらしい。
「……今更だけど、そんな場所を私達に教えて大丈夫なのか? 普通は隠したがるだろそんな重要な場所」
「信頼の証、と捉えていただければ。それに、場所が分かっていたとしても悪用するのは難しいでしょうし一つや二つの拠点を廃棄したところで支障が出ることもないんですよね。あ、だからといって悪戯しちゃだめですよ? 勝手を知らないと拠点ごと爆発して木っ端みじんになっちゃいますから」
既にイノシシちゃんは最初のテレポートポイントへと向かい始めていて、今はゲゲによる諸々の説明会が開かれていた。
忠告も含んでいるゲゲの言葉に改めて気が引き締まる思いの二人。
よく考えれば素性もほぼ知らない相手なのだ。今まで通り適当で済ませていると痛い目を見るんじゃないかと、ここでようやくそのことに思い至る。
精霊というよく分からない存在が身近にいる状況にも警戒をしておくべきだった。
今はあちらに敵意はないとしても、今回どこかで弱みを握られてしまえば今後何かあり敵対関係になってしまった時に不利になるのは自分達になる。
あちらも情報を開示してくれている以上そのつもりはないのであろうが、少し気を抜きだろうと。
普段は小難しいことなんて考えないヒメがそこまで慎重な考えになるのはそれだけミツキのことを評価しているからであった。
戦闘した姿を見たわけでもない。精霊使いとしての実力なんて予想もできないのに。いや、だからこそと言うべきなのか。
今回派遣されてきた精霊のゲゲを従えていることもある。他の依頼を受ける余裕がなくなったと言うのであれば、その分報酬を上乗せするというゲゲからの伝言もあった。
少なくともそこらの腕自慢なんかよりもよっぽど脅威になる存在なのは間違いがなかった。
先に敵として出会っていなくて良かったと思うヒメである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます