第2話 貴族

夜通し眠ったにもかかわらず、再び朝まで深く眠ってしまった。体をかなり使い果たしていたようだ。窓からはミリアムと子供たちが遊んでいるのが見えた。外に出て、疲れから椅子に腰掛けた。



「ミリアム、狩ったオークはどこに持っていけばいいんだ。」


「はい。素材買取所がありますのでそちらへ運んでもらえればお金に換金してもらえます。」


そう言うと、ミリアムは俺の手を握り、町の案内をしてくれた。彼女の体温が手を通じて伝わり、私は心臓が跳ねるのを感じた。



ミリアムに案内された先は、周囲の建物よりも一際大きく、受付カウンターには列をなす人々がいた。



「ここに魔物を持ってくると換金できます。ただ、私もここに来たことはなくて勝手がわからないんです。」


「そうか、ありがとう。聞いてくるから大丈夫だ。」



 カウンターの列に並び、順番を待つ。



「オークを狩った場合はここに持ってくればいいのか。いくらで買い取ってくれるんだ。」


「オークの場合は丸ごとであれば裏の倉庫へお願いします。買取価格は90シーロです。」



 貨幣の価値がよくわからない。



「なにか運ぶもののレンタルはないか。」


「それでしたら荷車のレンタルが50シーロです。」


「それならいい。」


「ミリアム、昼食の値段はだいたいどれくらいだ?」


「えっと、5シーロくらいですね。」



 1シーロが100円くらいの価値か。



「ひとまず狩りに行ってくる。」


「えっ…外は危険ですよ……」


「俺は大丈夫だ。見ただろう。」


「そうですが……」


 心配そうに見るミリアムの頭を撫でてやり昨日の門に向かう。



「あっ……これを持って行ってください。門を無料で通れます。」


「ありがとう。助かるよ。」


昨日はこれが原因で揉めていたのか。これがなければお金がかかるというわけか。昨日はお金を払った感じはしなかったが、どうしたことだろう。


昨日までいた森に再び足を踏み入れると、1時間ほど歩いたところでオークがゆっくりと歩いているのを見つけた。オークは私に気づくと、すぐに突進してきた。


 俺はマシンガンを構えてなるべく引き付け、引き金を引いた。5発ほどでオークは倒れ、血を流して横たわっている。死んだようだ。オークを運ぼうと思ったが重くて背負えない。俺は心でイメージして念じる。


目の前に白い軽トラックが現れた。この周辺は木が少なく、軽トラックなら走行可能だ。ガソリンが満タンだったので、オークを引きずりながら荷台に乗せ、走り出した。



門兵には止められたが、「新しい馬車です」と言って通過した。素材買取所の裏で軽トラックを停め、オークをカウンターまで引きずっていった。


「なんだいあの荷車は。魔法で動いているのか。」


「ああ、そうなんだ。それよりもオークを引き取ってくれ。」


 オークは銅貨9枚(9000円相当)で引き取ってもらえた。


 その後も軽トラで4往復してオークを運ぶと銅貨が45枚になった。



「ミリアム、これだけ稼げたぞ……いないのか。子供達を置いてどこにいっているんだろうな。」



 夜遅くにミリアムは帰ってきたので稼いだ銅貨を渡す。



「一日でこんなに……すごいです。」


「ベッドと食事を貰ってるからな。これで足しにしてくれ。」


「ありがとうございます。」


 マシンガンの中には30発が入っていて一日オーク6匹ほど倒せるようになった。


数日が経ち、その日は早めに孤児院に戻るつもりだったが、街道でミリアムの姿を見つけたので、軽トラックに鍵をかけて彼女の後を追った。


ミリアムは大きな邸宅に入っていった。私は稼いだお金で購入した透明になれる指輪を使って、その貴族の家に忍び込んだ。



「ミリアム、今日もあなたを抱けると思うとぞくぞくします。さあ、こちらへ。」



 ミリアムと貴族のあとからゆっくりとドアを開けて忍び込む。


「ミリアム、さあ、いつも通りあなたの卑しい体を見せてください。」



 ミリアムは貴族の前で一枚一枚薄皮をむくように服を脱いでいき、真っ白な肌を露出させた。

 俺の心臓が一気に高鳴り、顔から温度が抜けていくのがわかった。



「手をどけて見せてください。」



 ミリアムはゆっくりと手をどけると貴族はミリアムの胸を強く鷲掴みにし、先端を音を出して舐めだした。



(ミリアム……何をしているんだ……)


「ミリアム、なんて言うのですか。」


「んっ…ご主人様……卑しい体をもっと舐めてください……」


 ミリアムは俯き、震えながら、貴族にいいように舐められている。



「自分で準備をしてくださいね。」


「はい……」



 そう言うとミリアムは手を股の間に持っていき、指を動かし始めた。


「準備できましたか?」


「はい……ご主人様……卑しい私の中にあなたのものを入れてください……」



 ベッドに腰掛けた貴族の膝の上にミリアムは足を開いて腰掛け、自分の中に咥え始めた。



「もうグチャグチャじゃないですか。そんなに欲しかったんですか。」



 ミリアムは貴族の肩に手をおいて、貴族にキスをしながら自分で腰を前後させている。その後は貴族がミリアムに覆いかぶさり、お尻を叩かれ、パンパンと打ち付けられて中に注がれた。




 俺は頭を朦朧とさせながら孤児院に先に戻り、ミリアムを待った。しばらくするとミリアムが元気が無さそうに孤児院に戻ってきた。 



「おかえり。大変だったね。」


「えっ……あの……サトウ様もお疲れさまでした。」



 俺は俯くミリアムの前に立って腰に手を回した。



「あの……サトウ様……」



 俯く顔を顎を手で上げて無理やりにこちらを向かせ、少しづつ顔を近づけていくとミリアムは目を瞑った。

 ミリアムは先ほどの貴族とのやりとは打って変わって、積極的に俺の背中を抱きしめて激しい息遣いで唇を求めてきた。


 そのまま、抱き上げてベッドに運んでいき、服を脱がすと股の間から手を離さないので、力ずくでどけると、白い汁が股から逆流していた。



「サトウ様……見ないでください……」


 俺は何も言わずに逆流するミリアムの中に入っていった。



「サトウ様……私……あっ……ごめんなさい……あっ……」



 横になるミリアムは体を上下に揺らされながら、目に涙を浮かべた。


翌日、喜んでいるミリアムに連れられて町の店を案内された。魔道具店、武器店、日用品店を巡った。


いつも訪れる素材買取所の隣に訓練所があることをミリアムから教わり、能力の適正を測定してもらうことにした。


木製の槍や剣、弓を使ってみたり、魔力が流れることをイメージしながら、水や火など様々な要素で魔力を集中させてみた。その結果、俺には弓と風の魔法が適していることがわかった。

弓道をした経験はなかったけれど、今日初めて挑戦してみて、矢が次々と的中するのが非常に楽しかった。銃での射撃が上手くいったのも、もしかしたら弓の才能があるからかもしれない。


笑顔で待っていたミリアムにその適正について話すと、まるで自分のことのように喜んでくれた。



「サトウ様、弓の腕前すごかったですね。風で的を切り落としたのもすごかったです。」



 この街に商業組合が存在すると聞いたので、ミリアムと一時別れてそちらへ向かうことにした。素材買取所のごちゃごちゃとした雰囲気とは異なり、室内は洗練された作りで、客層も上品な服装の人が多いようだ。



「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ。」



 入ると受付があるのに個室に入らされた。



「今日はどのようなお話でしょうか。」


「はい。私はサトウと言いまして、実は隣の大陸との貿易を考えているのですが、こちらの町の需要を調査したいと思いまして伺いました。なるべく単価の高いものを扱いたいと思っています。」


「そっそうですか。この街カルビアは魔法都市シャームが近いこともあり、魔法付与させるアクセサリーの材料需要が高いですね。」


「それは、宝石などですか。」


「はい。宝石などの材料や、アクセサリーが高く取引されます。」


「高く取引される宝石を教えてもらえますか。」


「はい、透明度の高いカナリン、赤色宝石のピラッド、緑色宝石のイッシュです。」


「カリナンはどんなものが好まれますか。」


「カリナンは大きいもの、透明度が高いもの、不純物のないもの、きれいな研磨がされているものが高く評価されます。」


 僕はポケットの中で大きく透明で、不純物のない、丁寧にカットされたダイヤモンドをイメージした。



「これはどうですか?」



 苺ほどのダイヤモンドが掌にあった。でかい……。なんとなくイメージしたがこんなもの見たいことないぞ。



「えっ……少し見せていただいてもよろしいでしょうか。」



 男は手袋をポケットから出して、恭しく受け取るとすぐに俺に返してきた。



「こんなに素晴らしい宝石を私は見たことがありません。他の職員をつれてきてもいいでしょうか。」



 そう言うと急いで個室から出ていった。僕は怖くなり、指輪などを外してダイヤモンドを傷つけないように丁寧に手で包み込んだ。


 ドアから入ってきたのは白髭を生やした男性だった。



「この商業組合の長を務めております、グイードと言います。宝石の取引をご所望だとか、私にも見せていただけますか。」



 グイードは手袋をしてダイヤモンドを見ると顔を青くしていった。



「この透明度、大きさ、どれほどの値がつくかわかりません。今後、このような宝石を取引きいただけるのでしょうか。」


「この宝石は今の手持ちの中でも特別です。今後、取引きが順調に進んだら売ってもいいと思っています。」


「そうですか。ぜひ商業組合と取引させていただきたい。」


「こちらで取引できる大きさはどの程度のカナリンですか。」


「はい。少しお待ちください。」



 しばらくすると最初に応対した男が木箱を持ってきた。



「こちらが今ここにある最大のカナリンです。」


 箱を開けると俺が見せたダイヤモンドの1/3ほどの大きさのもので、透明度、輝きはかなり落ちると素人目にもわかるほどだった。



「このカナリンで10万シーロ(1000万円相当)です。この大きさでしたら、すぐにお取引が可能です。」


「わかりました。明日また来させていただきます。」



 商業組合を出て明日のことを考える。お金の心配はもうしなくてよさそうだ。




(商業組合にて)


「おい、サトウ様が明日いつ来ても俺に話を通すように全職員に良く言っておけ。」


「はい、わかりました。」


 あの服装、ただものではないと思ったが私の目は間違っていなかったあれほどのカナリン、いったいいくらの値が付くのか。1000万シーロ(10億円相当)、いやそれ以上か。あの輝き、研磨技術、どこの技術者によるものか。

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