第六話『エステラVSデイザスター』
第7話
紡ぎ手さんに指定の場所まで案内され、戦闘準備に入る。先程からしゃっくりは出なくなっていた。まぁこの状態も一定時間だけど。
「――準備はいいですか?」
「はい!しゃっくりも出ませんし・・・万全です!」
原理は不明だが、1日に数回『ヒカップ家の呪い』が発動しない時間が訪れる。この仕組みの所為で助かる時もあれば、簡単に死ねないのが厄介だと憎んだこともある。何せしゃっくりが止まる時間も、頻度も日によって違うのだ。
――この『呪いが発動しない時間と頻度』の仕組みさえ分かれば、少しは進歩だけど・・・また後で紡ぎ手さんにも相談してみよう。
深呼吸をし、少し離れたところで紡ぎ手さんを見守る。デイザスターが瀕死の状態になるまで私の出番はない。それでも・・・彼が危険な目に遭いそうだったら、私が守らなきゃ。
「では始めます・・・・・・」
紡ぎ手さんが何か呟いた瞬間傘が自立し、石突きの部分についていた髑髏の目が赤く光った。
――な、何この魔力・・・!
邪悪な魔力を直に肌で感じ、冷や汗が流れる。瞬きの間に――黒い魔法陣から3メートルを優に超える四足歩行の魔物が姿を現した。
『ォ・・・グオオオオオオオオオ!』
「ヒ・・・」
――え・・・?あんなのを今から・・・?
「
悲鳴を上げる間もなく、紡ぎ手さんが右手に持った杖の先から大きな鎖が伸びた。そのままデイザスターを拘束する。
「ヒカップさん。よろしくお願いします」
「え!?」
――ここで!?嘘でしょ無理無理無理!
「・・・
「ヒカップさん!?」
紡ぎ手さんが驚くのも無理はない。私は今、魔法で生み出した棺桶の中に入っていた。これはヒカップ家に代々伝わる絶対防御魔法であり、この中に入っている間はどんな魔法も干渉できない・・・まさに最強の死んだフリ!
「無理です!私あんな化け物倒すような魔法知りません!というか圧倒的力不足です!」
「え、絵面が・・・棺桶が喋ってる・・・じゃなくて!ヒカップさんが会得している中で一番威力が強い魔法をぶつければいいんです!」
「で・・・でも」
「もしヒカップさんの詠唱魔法がアレに通用しなくても大丈夫です!僕がついてますから・・・一度でいい。色々鬱憤が溜まっているでしょう?ストレス発散がてら、デイザスターに手加減無しの一撃。かましてみませんか?」
「ストレス・・・」
そんなのありすぎて困るくらいある。紡ぎ手さんの言葉は、ビックリするほど深く私の心を打ってきた。
「・・・」
自力で棺桶から出て、デイザスターと対峙する。紡ぎ手さんは歯を食いしばってデイザスターの動きを繋ぎ止めていた。
「
『グアァァァァァ!』
紡ぎ手さんの「今です!」の声を合図に、私は詠唱を開始した。
「ヒカップ家、禁忌魔法・・・!」
――怖い。けど・・・!やるんだ!
「スクリュー・ユヒック!」
しゃっくりと混ぜた詠唱魔法が発動してすぐ『キィィィィン・・・』と鋭い音がデイザスターを襲う。その一拍後、私の魔法をまともに喰らったデイザスターが悶絶し――その場に昏倒した。
『ア・・・アアアアアアアアァァァァ・・・』
「はぁ・・・はぁ・・・ヒック!」
――や、やった・・・?
すぐに紡ぎ手さんがデイザスターの状態を確認し、感心したように一言。
「・・・凄い。肉体を保ったまま息の根を止める魔法とは・・・え?内部神経が破壊されてる?恐ろしい魔法だな・・・」
ヒカップの血を引く者のみが使用できるとされる禁忌魔法。私は自分の呪いを調べる中で、ご先祖様が編み出した禁忌魔法という存在に触れた。詳細が綴られていた書物の冒頭に『門外不出』とあったので、私がこの魔法を会得していることは両親も知らない。
「あ、あの・・・」
――引くよね・・・こんな魔物を一撃で倒す呪い持ちなんて・・・気味悪がられたらどうしよう。
ショックを受ける前にこの場から逃げ出そうとした寸前、紡ぎ手さんがこちらを向いた。
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