第四話『イケメン、見つけちゃいました。そして出会っちゃいました』
第5話
心の声が漏れ、慌てて自分の口を手で塞ぐ。一言で表すと、目の前で倒れている男性はまさに『白馬が似合いそうな王子様』だった。瞳は閉じられているが、きっと柔らかな金髪に生える碧眼に違いない。いやそうであってくださいお願いします。
私にとって、今日の疲れが全て吹っ飛ぶレベルのご尊顔だった。
――えっえっ超タイプ・・・!でも何でこんなところで倒れてるの?
軽く触れて確認を取ったところ、目立った外傷や状態異常はない。単に意識を失っているだけのようだった。
――さっき拾った薬草を額に貼れば意識を取り戻すんだろうけど・・・貴重な私の収入源・・・。
頭の中で秤がぐらぐらと動く。そして――
「ヒック!」
――勢いよく薬草を彼の額に貼り付けた。人命救助が優先!
薬草が肌に浸透し、完全に消えて暫くすると・・・エメラルドブルーの瞳がゆっくりとこちらを見た。
「ここは・・・」
――っっキャーー!声もカッコいい!
「は、ヒック!えっと、ここはメタトロン魔法学校近くの山で、ック。私そこの生徒で、薬草取ヒック!してたら偶然貴方を見つけたんですけど・・・ック」
「成程・・・」
しゃっくりをしつつ説明すると、王子様系イケメンが思案顔で俯いた。私はその様子をドキマギしながら見つめる。
――覚醒してまだ間もないし・・・このまま家に運んで介抱したら『実は僕、行く当てがないんです。どうか暫くの間住まわせてください』ってまさかの展開になっちゃって、ドキドキ!謎の王子様系イケメンと夢の同棲生活とかキャーーーー!
見事に頭の中に花畑が生まれ、幸せな世界にトリップしてしまう。それに追い打ちをかけるように、イケメンが私の手をそっと握った。
「!!??」
「貴女は命の恩人です。どうか僕にお名前を・・・」
「は、ぁう・・・ヒック!」
チカチカする目を懸命に瞬かせ、自己紹介しようとしたその時――
「
――電撃がイケメンを襲った。
『バチバチバチッ!』
「ギャアアッ!」
――ドサッ。
「・・・・・・へ?」
怒涛の展開に目が点になり、しゃっくりが出た。何度瞬きを繰り返しても、目の前に広がる光景は変わらない。イケメンの白を基調とした衣装は電撃で真っ黒焦げ。思わず撫で繰り回したくなるような金髪はチリチリのアフロに。一目惚れした顔面は白目を拭いて泡を吐く始末。
「わ、私のラブロマンスヒクッ!ヒストリーがぁ・・・」
私はガクッと膝をつき、ひと時の恋が終了したことを悟った。
「――お怪我はありませんか」
ショック受けている暇もなく、私の恋愛フラグをぶち壊した張本人がいけいけしゃあしゃあと話しかけてきた。しゃっくりで喋れないのでコクコクと頷く。
「手加減はしたので死んではいません。早く安全な場所まで離れましょう」
「は・・・え?え?」
――この人もイケメン・・・!その仮面取ってくれないかな・・・。
この国では珍しい黒髪に、見慣れない黒の軍服を身にまとった青年が手を差し伸べてきた。私は慌ててその手を取って立ち上がる。
「あ、あのヒクッ!この人、私が来るまで倒れてて・・・介抱していたんです」
「そうだったんですか?すみません・・・てっきり貴女が不審者に襲われかけているとばかり。彼のことはわ・・・僕に任せてください。後ほど医療施設まで運びます」
「ヒクッ!は、はい・・・」
端から見ればそう捉えてもおかしくないなと独り言つ。私より頭一つ分高いイケメンの目元は紅い仮面で隠れており、目の部分から感情は読み取れなかった。しかし、こちらを気遣うような雰囲気を醸し出しているため、彼に対する恐怖心は0だった。
――キてる!キてるよママ!私にもモテ期だかイケメンの波とやらがざっぱーんと押し寄せてるよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます