最終話『告白の結果』

第42話

私が駅に着いてから、最初に向かった場所は畳のスクエアベンチが置いてある休憩スペースだった。何となく、ここに空井君がいる気がしたから。


――いた。本当にいる・・・!


あえて迂回して別の道から来たため、空井君の背中を取ることができた。私は息を殺して近づき、彼の斜め後ろに座る。真正面から想いを伝えるには私の勇気が足りなさすぎる。こればかりはどうしても無理だった。


――よ、よし、言うぞ・・・!い、言うぞ・・・!


心臓の音がうるさい。背中越しのはずなのに、緊張でたった4文字の言葉が出ない。


「空井君。私・・・あの・・・えーーーっとぉ・・・!」


――言え!早く!人が来ないうちに!


「・・・好き、です」


――い、言え、た・・・。


私は大きくを息を吸って続ける。


「・・・一目惚れです。『占い』関係なく、空井君のことを知りたい。ずっと一緒にいたくて。空井君のこと考えると胸が苦しくなって。でも凄いあったかい気持ちになるの。空井君の過去を聞いても、その気持ちは変わらない・・・好きです。空井君のことを好きで、いさ・・・」


2回目の『好きです』の部分で顔を上げると、空井君は足を組んで漫画雑誌を読んでいた――耳に、ワイヤレスイヤフォンをつけたまま。


「・・・」


――え。


「そ、空井君」


恐る恐る声をかけるが、返事はない。彼は黙ってページをめくり続ける。


――え、え。


「・・・!!!!」


私はリュックを掴み、全速力で駆けだした。




どこかの乗り場のホームの端っこで、私は体育座りで蹲っていた。


――うわああああああああ失敗したあああああああ何でええええええええ!


しばらくの間悶え苦しんでいると、急にスマホが振動した。


「・・・あい」


誰がかけてきたのかをよく見ずに、そのまま通話ボタンを押す。


「もう告白したの?」


「今したよおおおおおおおお!したのにいいいいいい聞こえてないっ゛ぽくてえええええええ!」」


私は風蘭ちゃんに今抱えているありったけの感情をぶつけた。


「――落ち着いた?」


「うん。ごめん。支離滅裂なことばっか言っちゃって」


「状況はちゃんと把握できたから。大丈夫」


「風蘭ちゃん、私どうしたら・・・」


「もう1回行きなさいよ」


「・・・っうえ」


――鬼!?少なくとも今日はもう無理だよ。風蘭ちゃん。


「断られてないんならノーカン!予行演習だと思ってまた本番に臨んだら?」


「そ、だけどさ」


「Xデーだろうがなんだろうが、チャンスがあるならそれをモノにできるよう努めなさい!紫水ならできる!というかやれ!」


「わ、分かった!」


――私の恋は、まだ終わってない。大丈夫。


「ありがとう。風蘭ちゃん。私、もう1回行ってみる!」


私は手を強く握りしめ、胸に当てる。電話越しでも私の度胸が伝わるように。


「アンタそのメンタルどうやって鍛えたの・・・アタシだったら死んでるわ」


「けしかけたのは風蘭ちゃんじゃん!」


私の思いは虚しくも、風蘭ちゃんをドン引きさせるだけに終わった。


電話を切って、『sou』を開く。何回見ても今日の私の運勢は最高に悪いままだ。でも――。


「嫌なことがあっても、私は1人じゃない。もう少し、自分で選んで生きていこう」


――きっと、これからも。受け入れて頑張っていくんだ。


私は来た道を戻りだす。


好きな人にもう1度、想いを伝えるために。

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