第二十七話『設問早解きゲーム』
第28話
――風蘭ちゃん、自分が勝てる勝負しかしないからなぁ・・・。
シャー芯を詰め替えつつ、風蘭ちゃんに呆れた視線を向ける。
「内容は」
「設問を早く解いた方の勝ち。アタシが勝ったらそうね・・・質問に1個答えるっていうのはどう?」
「なんだそれ」
「学級委員長として、クラスメイトのプロフィールくらい把握しておかなきゃでしょ」
「・・・科目は英語表現でどうだ」
「さらっと得意科目・・・だけど、上等」
かなり苦しい言い分だけど、意外と空井君は乗り気みたいだった。
――くだらないって一蹴しそうなのに。
カチカチとノックして、新しい芯を出す。いつの間にか私は審判を任されてしまった。
「えーと、準備は出来てる?なら・・・はい。よーい始め」
20分後
約600単語の英語長文問題を2人はものの10分ちょっとで解いてしまった。
――は、早すぎる。待ってる間問題文眺めてたけど、多分私は15分くらいかかっちゃうな・・・。
おっかなびっくりノートを受け取り、手早く採点をする。
「・・・空井君の方が解き終わるの早かったけど、正答率は風蘭ちゃんの方が高かったから、この設問は風蘭ちゃんの勝ち?」
結果発表を聞くないなや、よっし!と小さくガッツポーズを決めた風蘭ちゃんと対対象的に顔を歪める空井君。
「何で疑問形?紛れもなくアタシの勝ちだから!ってか解くのだって僅差だったし!」
風蘭ちゃんは不満そうに口を尖らせる。
「あーここやっぱ3が正解か・・・1問差じゃねぇか」
空井君は風蘭ちゃんのノートを指ではじく。
「勝ちは勝ちだしぃ?」
ドヤ顔の風蘭ちゃんを見つめていると、名前を呼ばれた。
「直治に聞きたいことあったら言いな」
「・・・え?風蘭ちゃんが聞くんじゃないの」
「・・・今ちょっと思いつかなーい」
質問権を譲ってもらえたというまさかの展開に、軽くパニック状態になってしまった。
「え、え、いや、でも、んんーー」
――質問?聞きたいこと?どうしようどれ聞こう。いきなり趣味からいくのは重いかな。特技・・・私も特にないって空井君もめっちゃこっち見てるし、というか何で空井君冷静なのああああああ・・・そうだ!
「そうだ!空井君、お菓子って何が好き?」
「菓子・・・?」
2人はポカンとした表情で私を見る。
――んん?私変なこと聞いた?あれ?質問って勉強のこと限定!?
「あれ、もしかして私間違えた?」
「菓子は・・・たまにチョコとか食うけど」
「っそ、そうなんだ!私おやつ買ってくる!」
勢いよく立ち上がり、財布を持ってお菓子売り場に直行しようとしたが大きな手に腕を掴まれてしまった。
「いや待て。俺が買いに行く。何か食いたいもんある」
「え、いや私が」「さつまいもチップス!」「ええー!」
風蘭ちゃんが真っ先にリクエストする。あれも駄目これも良くないと逡巡した挙句、風蘭ちゃんが勝手にわちゃアニビスケットを注文してしまった。
「風蘭ちゃん!」
「だって紫水よく食べてるじゃん」
「食べてるけど!空井君にあのお菓子は似合わないよ!」
わちゃぽいアニマルズが集合しているパッケージデザインのビスケットは、空井君が持つには少々可愛すぎる。
「最高。セルフレジなかったらもっとよかったのに」
「遠慮ないな・・・」
――空井君、今頃選んでるんだろうな。
私の所為でおやつをパシらせてしまったことに罪悪感が湧く。軽くしょげていると、風蘭ちゃんがシャーペンのキャップをこちらに向けた。
「何でさっきあんな質問したの」
「んん。直観・・・おやつ食べたいなーって」
「アンタね・・・」
風蘭ちゃんは険しい表情で『sou』の画面を見せる。そこには『正影風蘭 さんが将来結婚する相手』の結果が表示されていた。
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