第二十五話『勉強仲間』

第26話

最良かどうか考えるより、本能的に、彼と一緒に過ごしたいと思った。


――どーせトントン拍子で上手いこと仲良くなってるけど、『sou』頼りでほぼノープランなんでしょ。


私は風蘭ちゃんの言葉を思い出す。


――これは私の恋だ。私が動かなくてどうする。


「・・・」


空井君は私の意図を読もうとしているのか無言だ。


「嫌なことがあっても、別のことに没頭すればそのこと考えなくて済むじゃん。丁度もうすぐテスト習慣だし!ほんとは私、誰かと一緒に勉強した方が捗る派なんだけど、友達は1人の方が良い派らしくて」


「ダチとする勉強会は実質遊びみたいなもんだけどな」


「んん」


「けど政川となら、ちゃんと勉強会になるかもな。友達じゃねーし」


「ぇ」


頭を鈍器で殴られたような衝撃が走る。あのな、と空井君は半ば呆れた口ぶりで話す。


「男女に友情なんてあるわけねーだろ。知人・・・いや、勉強仲間として、よろしく頼むわ」


青ざめていた顔が徐々に赤みを帯びていく。


「な、なんだ、そういうことか・・・うん!こちらこそよろしく!がんばろ!」


――よ、よかったああああああ!嫌われてるわけじゃなかったああああああ!


心の底からホッとしていると、空井君は屋外時計を見やる。


「もう行かなくていいのか」


「え?」


――何の話だろう。


「塾だろ?何で俺が覚えてんだ」


空井君に指摘されてようやく、塾の存在を思い出した。


「そだ!行かなきゃ!」


私は慌ててリュックをしょって立ち上がる。空井君!と呼ぶと、駅に戻ろうとしていた彼は緩慢な動作で振り向いた。


「今日も一日、お疲れ様!またね!」


私は、精一杯の気持ちを込めて手を振った。





あれから数日後、私は塾のない火、木、金曜日の放課後を空井君との勉強時間に充てていた。部活はテスト期間なので休み。って言っても週一しかないゆる部活だけど。


私は富潟駅前にあるスーパーへ向かう。今日の会場はスーパーにある休憩スペースだ。空井君は『sou』に勉強場所を指定されることが気に食わなそうだったけど・・・説得の甲斐あって、ちゃんと毎回変わる待ち合わせ場所に来てくれる。


「久しぶり!真中祭以来じゃね?」


肩を叩かれ、振り向くと空井君の友達?の細倉君がいた。


「び、びっくりした・・・久しぶり」


「ゴメン急に!やー偶然政川さんっぽい子見かけて、髪降ろしてるけどこれ本人じゃね?って勢いで追いかけた!」


そうなんだ。と言いかけて私の視線の先――細倉君の後から、4人の富潟中生がこちらにやってくるのが見える。


私が軽く会釈をすると、彼も後ろの人たちに気づいたようで「なぁ!この子が直治が連れてきた子!多分彼女!」と割と大きな声で言い放った。

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