第十八話『仲違いの真実』
第19話
――クソ強情だなコイツ・・・政川も、
直治と風蘭の彼氏、庄本ソウタとは中学が同じであり、3年生の時同じクラスだった。彼女と会うたび惚気を聞かされていた直治は、そんな清廉潔白な女子中学生なんているわけないとうんざりしていた。高校に上がって風蘭と出会い、彼女を勝手に過小評価してしまった己を恥じた。が、その数時間後に己を恥じたことを恥じてしまったのはまた別のお話。
「皆!ただいま」
「ランちゃん!おかえり!」
「正影!やべーよ見てこれ!」
「こんな材料あったのがもうない!ヤバくね!?」
2人が1-Eの屋台に戻ると、さっき見た時にはない――『完売しました』と書いた紙が貼られていた。
「アイツらが休憩から戻ってくるまで、俺がほぼ作り切ったからな」
「それを売ったんでしょ?空井君、一体どんな手を使ったの?」
無言で顔を逸らすが、風蘭はそれだけで全てを悟った。
――顔で外部の客と直治のことを知らない一部の生徒を釣ったのね。
「よくやるわ・・・」
風蘭は笑顔で接客する直治の姿を想像した。想像して、鳥肌が立った。
――禄に笑顔も作れないクセに。あ、前は普通に笑ってたんだっけ。
「俺にしかできないことをやったまでだ」
直治は自慢げに言う。風蘭にとっては、今日彼がサボらず持ち場にいたことだけで万々歳だった。
「じゃ」
直治はビニール袋を持ってその場を後にする。
「あ、待って。撤収作業・・・!」
「いーよあんな奴」
「ランも残りあとちょっとだけど、他の店周ってきなよ!彼氏に会ってきたら?」
「え?でもやること残ってるのに・・・」
「いーからいーから。俺たちに任せとけって!」
「おまいう」
「清水が言うと不安―」
「何だと!」
クラスメイトに背中を押され、風蘭は屋台から追い出されてしまった。風蘭は少し考え、彼氏のいる校舎ではなく、空井が歩いて行った方向に足を向けた。
「こんなところでボッチ飯とかかわいそ」
紫水と話した校舎裏には木と芝生が植えられており、いつ設置されたのか分からない銅像や石のオブジェがある。直治は人が座れるくらい大きな石の上で、ソースがたっぷりかかったはしまきを食べていた。
「うるせーよ。来んな。庄本んとこ行けよ」
「ソウタとは昨日周ったからいいの」
風蘭は仁王立ちをやめ、直治の横で体育座りをした。
「・・・やっぱお前、そっちの方がいいよ。敵は増えるかもしれねーけど」
「アンタこそ、喧嘩腰でいるのやめたら。『占い』を嫌ってるって思想自体少数派なんだから。ツンケンしても周りはドン引きするだけ」
直治は黙ってではしまきを喰らう。風蘭は意を決したように口を開いた。
「紫水は・・・アタシのこと、何て言ってた」
「確か、『仲直りしたい親友』って」
「聞くまでもなかったわ・・・」
「お前は?」
「アタシは・・・アタシだって」
風蘭の目から涙が零れる。
「紫水とずっと親友でいたかった・・・!」
正影風蘭と政川紫水は小学校1年から中学2年まで、同じクラスかつ出席番号が前後という運命的な繋がりを持った親友だった。
性格は正反対だが、逆にその相違が良い具合に噛み合ったことで、喧嘩という喧嘩をすることなく順調に年を重ねていった。
「紫水は、アタシよりも背が低くて、運動も、勉強も、人望も、大体全部、アタシの方が上だった。けど中2あたりから、背も伸びて、贔屓目無しに可愛くなってきて『sou』に言われて塾に通い始めた。まだアタシの方が成績良かったけど、すぐ親に頼んで紫水と同じ塾に入って、競い合うように勉強した。本人はアタシの思惑なんてこれっぽちも気づかないで、テストの結果が出る度心から賞賛してたけど」
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