第十七話『ミッション成功・・・?』
第18話
「・・・直治のことはどうするの」
「急に話変わるじゃん」
そんなぁ。としょげていると、「文化祭終わった後も会うの」と痛いところを突かれる。
「それは・・・」
「どーせトントン拍子で上手いこと仲良くなってるけど、『sou』頼りでほぼノープランなんでしょ」
「そ、そんなことは」
「直治の『Chat』持ってんの。それか『インスター』は、アイツやってないっけ」
「もってないです・・・」
メッセージアプリ『Chat』の交換はできたら今日頼む予定だったけど、写真・動画共有SNSを空井君がやってないこと自体初知りだった。
「超恋愛初心者なところは成長してないね」
「んん・・・だってこういうの初めてで」
「しょーがないから!アタシが紫水の『相談相手』になったげる!」
「・・・えっ。お、わああ」
思わぬ提案に背筋が伸びる。風蘭ちゃんは私が引っ付いた状態のまま無理やり立ち上がった。慌てて風蘭ちゃんから離れる。
言っとくけど!と風蘭ちゃんは振り返って私に指を突き立てた。
「友達じゃないから!あくまで相談相手だから!」
「んんん」
「返事ぃ!」
「わーん!」
「お前ら、うるせーよ」
空井君が角から出てきた。自覚なかったけど、だいぶ大きな声で話してたみたい。
「直治・・・あんたいつからいたの」
風蘭ちゃんは顔をしかめる。
「お前が『相談相手』がどうのこうの喚いてんのが聞こえたから、あぁそこにいんだなって」
――あ、危な・・・なら、私が空井君のこと好きっていうのは聞かれてない・・・?
風蘭ちゃんも同じ考えだったのか、私の目を見て小さく頷く。
「紫水!直治!スマホ出して」
「え?」「は」
「『相談相手』として、『Chat』交換してあげる!アンタ達も友達なら『Chat』交換くらいしなさいよ!」
「んでお前に命令されなきゃいけねーんだよ」
「と、友達・・・!」
私は目を輝かせる。
――風蘭ちゃんナイスすぎ!
風蘭ちゃんの誘導が功を奏し、いとも簡単に空井君の連絡先を入手することが出来た。けれど、その感動に浸っていたお陰で、私は2人の会話を聞き逃してしまった。
「紫水はアンタの連絡先欲しそうだけど?『友達』として」
「・・・男女に友達なんてねーだろ」
「・・・え?直治、アンタまさか。あれ、でもあの人はーー」
「・・・黙れ。潰すぞ」
あの時の2人の会話を聞いていたら、少しだけ傷つかずにすんだのに。
直治と紫水は校門を挟むように、向かい合わせで立っていた。
「他のとこ見なくてもいいのか」
「うん。空井君と、風蘭ちゃんに会えたし」
「俺は」「屋台抜けてるなら、早く戻らないと!残りの真中祭楽しんで!」
紫水の心情は『また私のために大切な時間を割いてしまった』という罪悪感が大部分を占めていた。そのため、空井が目元を赤くして何かを伝えようとしていることに気づかない。
「空井君今日はありがとう!またね!」
「おー」
校門まで紫水を見送った直治は、紫水の姿が見えなくなっても尚、その場にとどまっていた。
「どういう風の吹き回し?直治が女子に優しくするなんて。しかもよりによって紫水」
「・・・早く戻れよ」
直治の後ろには、先程紫水の見送りを拒否したはずの風蘭が立っていた。
「アタシが先に戻ったらアンタ逃げるでしょうが。文化祭はまだ終わってないの」
直治が睨んでも、風蘭は全く怯んだ様子を見せない。
「1-Eのつまはじき者とこのアタシが並んで歩いてたって、アタシは何の問題もない。むしろアタシの株が上がるだけだわ」
「ここまで来ると潔いな」
中庭まで戻ると、風蘭は『いい子』の笑みを張り付ける。
「正影がこのキャラ続けてんのって、政川のためだろ。もういいんじゃねーの」
「キャラとか言うな。『sou』は止めてないんだからいいの。それにソウタの前では元からこうだし」
風蘭はズレた眼鏡を直す。
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