第十一話『颯爽と現れたのは』
第12話
私は文化祭に来て早々、先輩達の洗礼を受けていた。
「かわいいー!」
「田崎ナイス!」
「高校どこ?」
愛想笑いで質問に答えている中、頭ではどうやってこの場を切り抜けようか考えていた。
――はしまき、めっちゃソースかかってる!というか私の今日の『占い』も終わってるし!
私は今日の『占い』を思い出す。この空気感で今はやめときますなんて言えない。
――買うだけ買って、家で食べるか空井君にあげようかな・・・。
「はい!サービスでソース多めにかけといたから!」
「ありがとうございます」
――わーん!
念のため白色の服は避けたけど、もう持っているだけで怖い。
「じゃあ・・・」失礼しますとここから去ろうとした瞬間、連れて来た張本人――田崎先輩がとんでもない提案をする。
「良かったら、ここで食べない?」
「・・・え?」
「政川ちゃんめちゃくちゃ可愛いから、そんな子がはしまき食べてくれたら他のお客さんも買ってくれると思うんだよね」
「いや、でも。私よりきれいな先輩沢山いるじゃないですか!」
そう言って女の先輩方に視線を向けても佐藤先輩はやれやれとかぶりを振る。
「え?見て分かんない?どっからどう見てもゴリ」「ごめんねウチのカスザキが変なこと言って」
ベリーショートの先輩が現れたその時、タザキ先輩が腹を抑えて崩れ落ちた。
「わっ!」
「あんな奴のことは気にしないで。」
頷くと、先輩は笑顔になった。
「でもよかったら味の感想も聞きたいし、邪魔にはならないから、ここで食べてかない?」
――一難去ってまた一難だぁ・・・。
諦めて箸を割ると、後ろから肩を掴まれて引き寄せられた。
「すいません。こいつ俺の連れなんで。引き取ります」
――この滑らかな低音ボイスは・・・!
「空井君!」
「行くぞ」
私は会釈してその場を後にした。空井君の大きな手が私の肩を抱いたまま、しばらく中庭を歩く。
――か、肩・・・手!!カップルじゃん!もうこれどっからどう見ても彼氏の文化祭に遊びに来た彼女じゃない!?
「・・・髪」
立ち止まり、抱いていた手がそのまま私の髪に触れる。
――ふぉわぁぁぁぁぁぁぁ!きゃ、キャパオーバーすぎる・・・顔あっつ!
「あ、うん!友達にやってもらって」
「私服もそんな感じなんだな」
「ワンピースって楽だから何着か持ってて・・・その、変かな。場違いじゃない?」
「まぁ、客も在校生ばっかだから私服は場違いっちゃ場違いだけどな」
空井君は手を離して再び歩き出した。すぐにその後を追う。
――それは来た時から思ってた。今もちらほら視線感じるし。
「確かに。やっぱり制服で来ればよかったかなー」
「何でだよ。ちゃんと可愛いから、堂々としてれば」
――か
――か、かわいい!?!?
「本当!?嬉しい!」
えへへと頬を緩める。私も喜びをお返しすることにした。
「空井君のクラTは紫なんだ!かっこいいね!」
「・・・正影が手を回したらしい」
「風蘭ちゃん紫好きだから・・・」
――あれ?
「そういえば・・・」「着いた」
彼の手首を見て、違和感を覚えた。そういえば、あの時も・・・と記憶を辿っていると、『1-Eベビーカステラ』の前で立ち止まった。
「あ、ここが空井君の出し物?」
「おっせーよ直治!」
「チッ」
紫のクラTに前髪をヘアピンでとめた男子が凄い剣幕で空井君に食いかかってきた。
――な、
「え!誰々?めっちゃ可愛いじゃん!初めましてオレ細倉!直治のしんっ」
空井君の拳が空を切る。この高校バイオレンスな人多くない!?
「避けんな」
「避けるわ!グーで殴るとかサイテー!」
どう思うコイツ!と急に巻き込まれてしまった。咄嗟に思っていたことを言う。
「あ、あーえっと、そのヘアピン!ウォンバットだよね」
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