第六話『恋の恐ろしさ』
第7話
現在進行形で好きな相手に話しかけられ、彼から(貰ったお金で引いた)マグネットを貰ったのでお礼に私も(ダブった)マグネットをプレゼントするという一生忘れられない思い出を友達に語った。
――その結果、千ちゃんからお叱りを受けることになるなんて。
『占い』には『叱られるから話すな』的な内容は書いてなかった。おかしい・・・。
「聞いてんのか」
「聞いてます・・・」
「違うよ。『聞いてたけどはぎゃー君のこと考えてた所為で忘れました』でしょ」
「紫水!」
「かんちゃん!?油!それ油だから注がないで!」
「今日の紫水ぼーっとしすぎ。紫水だけに」
――さらっと駄洒落言った!真顔で!
「おもんねーわ馬鹿。はぎゃ男と会ったたことについては言及しないが、日常生活に支障をきたすのはどうかと思う」
返す言葉もない・・・私は朝教室に来てから昼休みまでの愚行を思い返す。
千ちゃんが登録している『タロット』というアプリは『sou』みたく結果を数値化してグラフにすることは出来ない。『タロット』の強みは、他人のことも占えるところにある。
今朝起こったことで例えると、『sou』では『午前8時から9時の間、スマートフォンには触れない方が良い』と表示されたけど『タロット』では『早朝、政川紫水 さんのスマートフォンが先生に没収される』と表示されたらしい。友達想いの千ちゃんは朝練を早めに切り上げて、私が無防備に操作していたスマホを先生に見つかる前に隠してくれた。
「その節は本当に助かりました。後ろの入り口から原先生が入ってくるなんて誰も分かんないってー」
「3日没収&生徒指導室で反省文書かされるとか・・・想像するだけでぞっとする」
「ウチも先生がよりにもよって生徒指導ってのにはビビった。てっきり1時間目の田村かと」
――あの時は本当に終わったかと思った。
この高校ではスマートフォンは電源を切って鞄の中に入れる決まりになっている。校内で『占い』を確認したいときは学校支給のスマートウォッチを使うんだけど・・・今朝は無意識でスマホを開いちゃった。しかもそのタイミングで後ろから原先生が来たもんだから本当に終わったと思った。
「6時間目の移動はさっきみたいに支えてもらわなくても大丈夫だから!もう階段踏み外さないよう気を付けて下りる!」
「本当かよ・・・」
「信用ない」
「そんな・・・」
――どうしよう。私が彼のこと考えすぎて他のことに注意散漫になったから、2人に凄い迷惑かかってる。彼は迷惑そうな顔も様になってたな・・・器用に肩眉あげてて、アメリカ俳優みたいだった――じゃなくて!
「・・・紫水もすっかりはぎゃ男にメロメロだな」
「はぎゃー君のどこにはぎゃったのかをはぎゃりながら言うところ見てみたい」
――2人とも彼のこと『はぎゃー』呼びしだした・・・かんちゃんに至っては気に入ったのか私より使いこなしてる・・・止めてって言ったら止めてくれるかなー。
「ごめんなさいでした・・・あの、彼のことはぎゃー呼びじゃなくてもっと別の」「ならはぎゃ男の本名は」
「え、まだ・・・」
「ん?」
「まだです・・・2人の顔見てまだ名前聞けてないって思い出したんだよね」
「こ、こいつ、アホだ・・・」
「千。心の声漏れてる」
ぶっちゃけお腹と胸と脳みその容量がいっぱいいっぱいで、あの時自己紹介する余裕なんて私にはなかった。
――けど今日、もし昨日の奇跡が今日も来てくれるなら。
『お金を返して、名前を聴く!』を忘れないよう繰り返唱えすぎたお陰で、古文の授業中答えと間違えて黒板に書きかけた。千ちゃんが消しゴムをぶつけてこなきゃそのまま席に戻るとこだったよ・・・『恋』、恐るべし!
学校が終わった瞬間、超特急で例の場所に向かった。
――彼は、まだ来てない、かな・・・。
周囲を確認するが、彼の姿はない。ため息をつくが、慌てて首を振ってマイナスな感情を消した。
――彼が来るまでの間に、シロナガスクジラ当てるぞ!
私は100円玉が沢山入った小銭入れを手に、ガチャポンの前に対峙した。
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