第11話 即閉め出した
取り敢えず、勇者の年齢が低すぎるので、まずは健康に成長してもらうのが第一だと魔王討伐の話は一旦横に置かれることになった。
なったがしかし、不安は残る。主に今後の流れについて。
(ぐだぐだ考えるより、いっそのことこっちがハニトラして絶対的な味方作った方がいいんでない? セバスチャンとか好みのイケメンだから頑張れるよ私。だけど顔だけ王子より絶対頭いいから陥落させるの難しそう…でも媚びれば色々情報が手に入るかもしれないしなぁ…)
魔王についての説明を終えて一息ついている対面の男達をねっちょり眺める。
顔だけ王子はキラキラしているがそれだけだ。私がときめくのはやはりセバスチャンのほう。異世界人問題は忘れられるくらい好みだ。
これは、JKのブランドを最大限に活用するときがきたかもしれない。
通じないけど。
ところでこれは私の個人的な考えだが、男は愛嬌がよくてちょっと馬鹿な女ほど好きだ。遊び相手に、と注釈が付くけど。
結婚相手には貞淑を求めるくせに、遊び相手には刺激を求める。そして結婚相手より遊び相手のほうに口が軽くなる。
遊んでいる男はかなりおしゃべりだ。口数少ないのにモテるのは顔がいいか経済力があるかのどっちか。場合によっては運動のできる男も入る。いいじゃん運動できる男。もうそれだけでブランド扱い。
花の乙女十六歳。オツキアイの経験はそれなりにある。何せメロンなので異性の視線をかっ攫った。そこで恥ずかしがると舐められるので、堂々と胸を張って挑発して遇うくらいできないとペロッと食われる。
軽いボディタッチは許してやるわ。だけどそれ以上は簡単に許さない。調節が難しいところ。
男ってのは、下半身と脳が繋がってのよ。理性じゃどうしようもない。知ってる。
多分、顔だけ王子の反応を見れば異世界の男も地球の男と変わらないだろう。
となれば、このメロンを最大限利用して情報を集めることもできるかもしれない。
ただ、ここで求めるのは口の軽い男。
残念なことに、セバスチャンは絶対そういうタイプじゃない。
(そう、身持ちの堅そうなところがいい…くそ! 本気の相手としてなら好みドンピシャなのに! ここでガチ恋愛したら私のほうが病む! 異世界で幼女を抱えながら恋の駆け引きとか器用な真似は流石にしたくない!)
みーちゃんをお世話してくれる
話を聞けば聞くほど任せちゃだめだと思ってしまう。
目を離した瞬間、勇者教育始まっちゃいそう。
子供の世話、本当にしたくない。したくないのに、しなくちゃいつの間にかみーちゃんが異世界教育で歪められちゃう。
今だって魔法の犬と遊んで楽しそうだけど…自分で魔法を使ってみたいとか言い出したらどうしたらいいわけ!?
異世界の技術だよ!? しかも魔法を教えるって魔王討伐の道へみーちゃんを導くってことじゃん!? そんな判断私にできるわけなくない!?
魔王を倒さないと帰還に五十年必要って言われても、五十年後にみーちゃんが帰りたいっていうと思う!? 親御さんの顔忘れる年月だよ!? 私だって危ういのに幼女が覚えていられるわけないくない!?
(私に他人の一生が決まるような選択させないでよー!)
また泣くぞ。今度は床に転がってやろうか。
ここで自分一人だったなら、玉砕覚悟でも好みのイケメンに夜這いの一つや二つ仕掛けただろうに。みーちゃんがいると思えば不用意な真似はできない。
小娘一人、いてもいなくても変わらないかもしれないが、少しでもみーちゃんがRPGみたいな冒険の旅に出なくてもいいようにごねたい。
取り敢えず旅立ちは見送ることはできたが、旅立ちを見込んだ教育はどう阻止できるだろうか。
世界が衰退している…つまり滅びに近付いていると言われても、私は「へーそうなんだ」としか思えない。
だって私は地球にいても地球の環境問題も。他国の戦争も。自国の政治的未来も。県で起きた事件も。学校のあちこちで起きているいじめ問題だって、どれも親身になって考えたことなんかない。
自分に直接関係ないもん。
そう言うと偉い人達はそうじゃないって言うけど、関係ないわ。
現役女子高生が一番気にするのは自分のお小遣いと化粧品、洋服代が見合っているか。SNSで話題な店にはいつ行けるか。
将来のことを考えても、どれだけ楽に生活できるかが重要。
汗水流して働きたくない。対人とかこの時代、気を遣いすぎてすぐ心を病みそう。客としてなら利用できても、店員としては利用したくないサービスだらけ。人手が足りないと聞こえてくる製造業には近寄りたくないから、いかにキラキラしたままお金を稼げるかくらいのことしか考えていない。
保育士なんてもってのほかだから、本当に幼女の世話は頭が茹だるかと思った。
本当に、他人の子供の面倒を見るとか凄いわ保育士。尊敬する。でも憧れない。私にはまったく向いていないことだけがわかった。
距離が近付いたみーちゃんは見ている分には可愛いけど、そんな幼女の将来を背負う覚悟なんかできていない。無理無理。
とにかく何が言いたいのか。
(この世界の事情とかどうでもいいわ!)
なんで被害者が加害者の実家事情を慮らねばならんのか。知らんわ。
(壁や天井を破壊してでも、絶対帰ってやる…!)
そのためには自分が信じられる情報が必要で、情報を得るために行動しなくては。
(そう、確かに身持ちが堅そうだけどそういう奴に限って快楽に弱かったりするかもしれないもん。ギャン泣きしている姿を見られているんだからホームシックを装って抱きついて押しつけて慰めてって囁けばメロン試食会が始まるかもしれない。こっちの世界にわいせつ罪あるかな? 痴漢は通じる? 身分ある相手だし若い子に手を出したって言いふらされたくなかったらって脅すのありかな。いや負けそう。脅すんじゃなくて懐柔する方向で…)
なんてお菓子を食べながら考え事をしていたのだが。
「それにしても、叔父上の魔法は随分命令に忠実ですね。あの犬を作るのは慣れているのですか」
「ああ、幼い頃のメアリーにも魔法を使ってあやしたことがある。久しぶりに使ったが、不備はないようで安心した」
(…んっ?)
聞こえてきた叔父と甥っ子の会話に、夕張メロンの頭の中で警報が鳴った。
「…メアリーって?」
「私の娘です。今年十二になります」
――――つまり既婚者じゃねぇか!
(なしだわ!)
私は即行で、ねっちょり考えていたハニトラ案に×を付けた。ついでにセバスチャンの顔にもしっかり×を付けておく。もちろん、頭の中で。
略奪愛は創作だから楽しめるのであって、どれだけ好みのイケメンだろうと売却済みなら手出し不要。
私は人様の男に手を出すなんて不躾な真似をするほど、生き急いでいないわ。
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