果物の爆買い

 翌日、前世では考えられないくらい熟睡してから、朝8時頃に起床。


「ふわぁあぁー…」

 背伸びと同時にあくびをしたところで気付く。


(そうだった、昨日は風呂も着替えもしていないまま寝たんだった…って、荷物整理してないから着替えの服がないのか)


「…なら、風呂に入ったら今日は朝食を食ってから荷物整理から始めるか。まず着替えから取り出そう」


 ベッドからバスルームに向かい風呂に入る。その後リビングに向かい、テーブルに串焼き肉3本と昨日と同じようにコップと水を用意してからイスに座る。


「いただきますっと」

 手を合わせてから串焼き肉を頬張る。


 うん、やはり美味い。

 当分飽きなさそうな旨さをしているが、前世の経験でいくら最初は美味く感じても、そればかり食べているとどうしても飽きが来てしまうことを知っているので、また別の食料を調達せねばならないだろう。


 オーク肉の串焼き肉は一本あたりが少々高かったので、次の食料は抑えめにしないと、すぐ生活費が尽きてしまいそうだ。


 肉ばかりだと体に悪いだろうし、今度は野菜や魚類を買うか。パッと食えるようなものが見つかったら買うように心のスケジュールに加える。


 あ、でも消費を抑える必要はないかも知れない。

 自分には【魔法石生成】のスキルもあるし、魔法石を生成してどこかに売りつければお金には困らないかも。


 あぁでも無限に売り続けるわけにもいかないか?なんでそんなに持っているのか聞かれたら困る。


 少なくとも冒険者ランクが1人前と呼べるほどになってからなら、いくらでも説明はつくのだが。


 街の外での冒険の際に大量に魔法石を発見して、【アイテムボックス】に入れて根こそぎ持ってきたんですよ~、とでも言えば納得せざるを得ないだろう。


 などと悪巧みをしながら串焼き肉を食べきる。


 そして立ち上がり、玄関に向かいそこに置いてある荷物群を一度『収納』に入れてからリビングで全て取り出す。

 早速、荷物の整理を始めようか。


 ───30分後───


 無事に服や食器、タオルなどなどを整理して適切な場所に配置した。

 ついでに収納していた教本や制服も忘れずに配置。


 杖に関しては一応『収納』に入れたままにしておいた。

 実力のカモフラージュに必要になることも考えての行動だ。


 荷物に入っていた筆記用具とメモ帳も『収納』に入れておく。

 記憶力にはそこまで自信がないので一応ということで。


(あ、なら予備の制服も入れておくか。どこかで必要になる可能性を否定できないし。家に置きっぱなしにしておくくらいなら『収納』に入れておいたほうが柔軟だ)


 さて、荷物整理も終わったし、食料を漁りがてらなので『転移』は使わず歩いてギルドに向かいますか。

 この時間ならギルドも混んでいないだろうしね。


 ということで、寮を出る際に管理人さんに挨拶をしつつ、ギルドのある方向へ進む。


 そうして通りを歩く中で、果物店を見かけたので立ち寄る。

 魚でも野菜でも無いけど体には良いのは間違いないし、買っておこう。


「あら、いらっしゃい」

 女性が対応してくれる。


「すいません、少しお聞きしたいんですけど、体に良くてパッと食べられるような果物ってありますか?」


「そうねぇ、果物は大抵体にいいけど、敢えて挙げるならなら皮ごと食べられるリンゴーンとか、朝食に最適なバナーナ、免疫力が付くジオレンかしらね」


 そういえば、この世界の果物は日本で見られるものと見た目も効果も同じで、名前だけが少し変わっているけど、見た目と合わせて考えればすぐ分かる。


 この場合だと、リンゴーンはりんごで、バナーナはバナナ、ジオレンはオレンジになる。


 現代と違って季節を無視して植物を育成するためのビニールハウスとか温室栽培とかの技術などなさそうに思えるが、ならやはりこれは魔法の力ということなのだろうか。


 ファンタジー作品において、時に魔法の力で現代の技術を超えている作品も見たことがあるので、そういう可能性も十分にありえるだろう。


「やはりその辺りになりますか。ありがとうございます。では、すべて買ってしまうと他のお客さんの迷惑になると思うので、リンゴーン、バナーナ、ジオレンを売れるだけください。お金はありますので」


「あるだけって、どうやって持っていくの?それに食べきれないでしょう?」

「安心してください。自分は収納空間で時間がほとんど流れない【アイテムボックス】を持っていますので、問題ないんです」


「あら、【アイテムボックス】とは珍しいねぇ。しかも時間が流れないなんて、初めて聞いたわ。うん、それなら納得ね。今から代金を計算するからちょっと待っててね」

「分かりました」


 返事をして待つ。


 そして、女性が代金を計算し始めて1分ほど経ってから結果を伝えてくる。

「リンゴーンが60個で12000オボルスで、バナーナが120房で18000オボルス、最後にジオレンが50個で2000オボルスになるから、合計で32000オボルスね」


(バナーナ、多いな…朝食にぴったりだし、よく食べられていたりするのかもな)


「分かりました」

 そう了解の意を示してから、銀貨を3枚と青銅貨を2枚『収納』から手に出現させ女性に手渡す。


「うん、銀貨を3枚と青銅貨2枚、ちょうどいただいたわ。持っていってちょうだい」

 それに頷きリンゴーンをまず収納し、次にバナーナを収納、最後にジオレンを収納する。


「凄いわね、一気に果物が無くなるのは壮観だわ。うん、良いものを見せてもらったしいっぱい買ってもらったから、サービスでこのイーチゴを1パックあげるわ」

「いいんですか?ありがとうございます。では、頂戴しますね。」


 そう言ってイーチゴが六個入ったものを受け取りこれも収納する。

「急に無理を言ってすみませんでした。では失礼します」


 感謝の意を込め一礼してギ引き続きギルドに向かう。

 よし、これで当分は果物に困らないだろう。良い買い物だった。

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