Side ルーナ

 私は、あのとき見た魔法に憧れている。


 セグスト君が使っていたあの魔法。

 手のひらサイズのファイアボールだったけど、なぜだか強く印象に残っている。

 全力で詠唱していたから?すごく嬉しそうに喜んでいたから?理由はわからない。


 嬉しいことに、自分にも【魔の才】があるし、能力値も魔法使いに十分なれる素質がある。

 なら、と自分は両親に頼んで魔法使いを雇ってもらい、魔法について学ぶことにした。

 実際に私が魔法を使うことはまだできないけど、そのための知識なら子供でも学ぶことができる。


 その魔法の先生は女性で、名前はイーリスと言う名前の魔法使い。しかも初めて見るエルフ。

 その人は私に魔法使いとして良い素質を持っていると言って、隣国のファブルアーリアにあるアウロラ魔法学園への入学を勧めてくれた。


 イーリス先生、今は休職しているんだけど、実はアウロラ魔法学園の教師をしていたらしくて、私が魔法学園に入学する意思を伝えると、先生もせっかくだし復職すると言った。

 道理で魔法を教えるのが上手いわけだ。なんで休職してたのかは言ってくれなかったけど。


 そういえば、後から魔法について学んでいて分かったことだが、触媒魔法に使われた魔法石は一回限りで壊れるのが普通だったらしく、あのとき焦ったように見せられた魔法石が実はあの魔法には関係していないことを知った。


 ということは、あれはやっぱり詠唱魔法だったんだと気づいて驚いた。

 5歳の子が詠唱魔法を使って実際に魔法を発動するなんて、常識的に言えば危険だ。

 黙っててってお願いされたから、余計なことは誰にも言わなかったけど。


 あの日セグスト君に逃げられてからセグスト君とまともに接する機会が無かったから、あの時のことを結局聞けなかった。

 でもどうやらお父様が言うには、セグスト君も同じ魔法学園に入学することになっているらしくて、それならいつかは聞けるかなと思ったんだけど…。


 リーベル家領主のソール様が、セグスト君が魔法学園に入ることをお父様に伝えたらしくて、それでお父様がどうせなら同じ乗合馬車で行ってはどうかという提案をしていたらしくて、それを聞いた私は、じゃあその時話せるかな、と思っていたんだけど、その後セグスト君の希望で先にセグスト君が魔法学園に向かうことになって、それも無くなっちゃって。


 なんだろう、やっぱり避けられているのかな?

 まあ、それも魔法学園に行けば分かるかな。

 あの時からセグスト君がどうなったのか気になってるんだけどね…。


 さて、私も今日が出発の日だし、そろそろ行こうかな。

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