三年後(10歳)

 はい、またまた年数が飛びます。今度は3年後の10歳のセグストからお送りしますね。


 いやぁ、訓練って沼だね。沼。

 いくらやっても終りが見えないというのは、努力をほとんどしなかった前世ではあまり馴染みのなかった感覚だ。


 まあそれはいいか。本当にもう超頑張ったんですから。主にソールの訓練ですけど。


 それ以外にも魔法に関する訓練は怠らなかったし、持ち前の慎重な性格(と自分では思っている)が幸いしたのか、特に誰かにバレてはいけないことがバレるということも、おそらくはなかったと思う。実際はどうかわからないが。


 それと、基本魔法(基本魔法だと勝手に判断している自作の基本魔法も含む)の訓練ばかりやっていて少しマンネリ化してきたので、中位魔法への進出と【結界術】の練習を始めてみた。


 中位魔法はやはり基本魔法と比べて攻撃魔法らしい魔法を発生させることができるので、使っていて非常に爽快感がある。


(これぞ本当の魔法攻撃、って感じで楽しいのだこれが)

 ついつい魔力に物を言わせて無詠唱でポンポン打ちたくなってしまうが、周囲への被害と騒音が凄いことになりそうだったので、ここで【結界術】と空間魔法を使用して対策した。


 まず、結界を発動したときの風景が映し出されたままになる幻覚系の結界をイメージしてから【結界術】でその結界を周囲に張り、その後その結界の内側を囲むように空間魔法で強度抜群の透明な空間を固定し、周囲が荒れないようにした。


 しかも空間魔法で作り出した空間が強度抜群すぎて、どの属性の中位魔法でも破れなかった。


 これはぜひ盾にということで、『シールド』という基本魔法を作ったが、正直もう空間魔法に関してはどんな状況でも無詠唱で良いのではないかと思っている。


 パッと見が透明なので魔法の発動自体に気づかれにくく、また発動に気づかれても自分が発動したとは思われないだろう。


 それでも発動先を辿られて自分が何らかの魔法を発動したことがバレたとしても、そもそも空間属性を持つものがほとんど居ないはずなのでおそらく言い逃れができる。


 最悪言い逃れができなくても、バレたのが知らない相手なら最終手段として『転移』してしまえば前提から覆せるので、隙がない。

 ということで、そういう方針にした。


 その点、光や闇属性は発動したということが光ったり暗くなったりですぐ分かるので、その使い所に困るかも知れない。まあ大方単独行動の時とか正体を隠した状態でのみでの運用になると思う。


 さて、今回も新しいスキルが発現した。

 おそらくスキルの発現はそれなりに珍しいはずなのだが、もう恒例化していることが少し笑えてくる。


 まずは【魔力運用】で、効果はおそらくだが魔力の効率というのか、そういうものが良くなったのを感じているので、それが効果だろう。魔力に関してのスキルは諸手を上げて歓迎します。


 次に【魔法石生成】だ。これはルーナの魔法バレ事件の際にとっさにやった火の魔法石生成のことを思い出して、半年ほど前から各属性の魔法石を作っては使い作っては使いを続けていたら発現した。ルーナに感謝だ。

 お礼としていつかルーナに何かで返すとするか?


 効果については、習得してから魔法石を触媒とした魔法の威力や効果が向上していたので、おそらく魔法石の純度を補正してくれるのだろう。

 また生成自体もやりやすくなって、手のひらサイズの透明度の高い魔法石も生成できるようになった。


 流石にこれは市場に流してはいけないと勘が言っているし、自分もそう思うので流さない。見てくれがもうほぼ宝石だもんこれ。

 なので、もう少し小さなサイズのものなら売ってもいいかなと思っている。


(フフフ…これで資金繰りじゃあ!)


 と楽しいだけなのはここまでで、ここからは基礎訓練の成果についてだ。

 ソールズブートキャンプはマジできつかった。マジでね。


 訓練に慣れたかと思うと、それをソールは目ざとく見抜いて練習量を調節してくるから、終わりがないのだ。こんなところでまたも終わりがない感覚を味わうなんて。


 内容は素振り、重心のコントロールから始まり足運びの訓練や反応速度を鍛える訓練などだ。中でもきつかったのはシンプルにスタミナを養うための持久走だ。


 思えばあれは前世から大の苦手だった。特段脚が遅かったというわけではなかったが、普段運動しないような体で急にやらせられると脇腹は痛くなるし、喉はカラカラになるし、翌日は100%筋肉痛になるしで散々なものだった。


【武の才】と【成長促進】がなければ途中で折れていたんじゃないかって心底思う。でもこの2つがなかったらなかったで、ソールはそれに合わせて練習量を調節していたのだろうし、結局かな。


 前世よりマシだったのはスキルが有るおかげか、成長を早めに実感できた点だ。やはり成長を実感できる、というのは大きなモチベーションに繋がる。前世でもこうだったら良かったのに。


 ソールは度々それらの訓練で度を越してしまうことがあるが、母であるテルースに諌められることが多いので母には感謝している。


 さて、ステータスの発表へと参ろうか。

 それがこちらだ!


 -本当のステータス-

 <名前> セグスト・リーベル

 <種族> 人間

 <性別> 男

 <年齢> 10歳

 <スキル> 【完全隠蔽】【成長促進】【魔力自動回復】【魔の才】【武の才】【鑑定】【全耐性】【言語理解】【オーバーチャージ】【結界術】【無詠唱】【魔力制御】【気配察知】【魔力運用】【魔法石生成】

 <能力値> HP: 120/120 MP: 14050/14050 STR:60 DEX:35 VIT:52 AGI:49 INT:60 MND:120 LUK:14

 <適性属性> 火・水・風・土・雷・氷・光・闇・空間


 うむうむ、訓練の成果がしっかりと数字に現れているな。営業社員ならしっかり数字を取ってくるエリートだ。

 特筆することもなさそうなので、早速偽のステータスを更新しよう。


 -偽のステータス-

 <名前> セグスト・リーベル

 <種族> 人間

 <性別> 男

 <年齢> 10歳

 <スキル> 【魔力自動回復】【魔の才】【武の才】【鑑定】

 <能力値> HP: 100/100 MP: 140/140 STR:42 DEX:31 VIT:36 AGI:39 INT:40 MND:65 LUK:10

 <適性属性>火・水・風・土・雷


 よし、ソールの訓練で重点的に鍛えていた部分は一応高めに設定しておいてと、これでいいかな。


 さて、この感覚、雰囲気は3年前の初めて基礎訓練を受けたときのシチュエーションと似ているが、今日からソールズブートキャンプは終了となり、本格的に剣術をソールから習うことになる。


 もうここまで来たらやるしかない。ということで、早速あのときと同じ様に訓練場に向かう。


 訓練場に到着し、扉を開ける。

 すると、父と兄が木剣を手に剣戟を繰り広げていた。


 カンッカンッ、と木剣が小気味よい音を立てながら木剣を交えている。

 口を開かず真剣に父と兄が木剣を数分打ち合っていたが、ようやくここで自分がやってきたのに気づいたのか打ち合いが終了する。


「すみません、お邪魔してしまいましたか?」

「いや、そんなことはないぞ!早めに来て待っていたのだが時間を持て余すのも何だしレムスを捕まえて時間を潰していただけだからな!」

 そうか、ならよかった。


「本当に、急になにかと思えば剣の訓練とは驚きましたよ。一応、僕も領主になる予定の人間としてそこそこ忙しいのですが…?というかあなたはその領主でしょうに…」

「ははは!大丈夫だ、公務を貯めておくのは性に合わんから先に終わらせている!そうでもなければ訓練の時間など取れないからな!」


(そういえばそうだな、一応領主なはずなのにいつも訓練ができているのは、先に公務をすべて終わらせていたからか)


「さて、セグストよ。以前から言っていた通り今日からは基礎訓練を必要最低限に抑え、その分の時間を剣術の習得に努めてもらうぞ」

「はい、分かっています」

「なら良し。では早速…」


(ああそうだ、忘れないうちに魔法学校への進学について聞いておこう)


「あの、一つお願いがあるのですが!」

「ん?なんだ、言ってみなさい」

「この剣術の訓練が終わって13歳になったら、ファブルアーリアのアウロラ魔法学園への入学を許可していただきたいのですが!」


(さて、これで許可がもらえなかったらどうしようか。その場合はファブルアーリアをすっ飛ばしてマルスに行こうと思っていたが、魔法訓練をし始めたことでますます魔法への興味が強くなってしまったし、困ることになるな…。かの魔法学園は身分を問わずその門戸を開いていると聞くし、身分を偽って平民として入学するのもあり、か?)


「なんだ、そんなことか!無論言われずともセグに魔法使いとして才能があるのは鑑定で分かっていたことだしな。セグが生まれたときからもとよりそうするつもりだったぞ!」

「本当ですか!?ありがとうございます!」


 よっし!これでなんの憂いもなく魔法について学べることが約束された!

 ははは、今からもうすでに楽しみだ。そのためにも剣術の訓練は頑張らないと!


「そうか、セグがアーリアの魔法学園に…。そうだね、寂しくなるけど、セグにとってそれがやりたいことならそうするのが良いと思う。僕もセグはアーリアへ行くべきだと思うしね。」

(そうか、魔法学園は寄宿制だからそっちで生活してくんだもんな)


 料理とか、メイドのアンナかヘレンに習ったほうが良かったか?いや、どうせレシピを忘れるからな、今生でも変わらず男飯止まりかな。

 こんなんじゃ【料理】スキルは発現しないだろうし。


「はい!存分に魔法について学びたいと思っています!」

「うんうん、知識欲が豊富なのは良いことだね、励むと良いよ。まあ3年後の話なんだけどね」

 そう言ってクスッと笑うレムス。イケメンかよ。


 とりあえず良かった。できることなら流石の自分でも身内には禍根を残すことなく魔法学園に学びに行きたかったし。


「そうだな。それまでは今日からの剣術の訓練に励んでもらうぞ、セグ!」

「はい、よろしくお願いします!」


 ───3時間後───

「節々が、つ、攣りそうです…ふぅ…。」

(基礎訓練を3年やっていてこれなのか……キツ…。)


「フハハ!そうだろうとも。私も初めて剣術を習い始めたときはそんなもんだったさ」

 まったく、今日は基礎訓練初日を想起させるようなことばかりだ。


 ソールが自分に伝授してくれたのはヤヌス流剣術と言って、この国ヤヌスが興った時代の騎士が使用していた流派だそう。

 故に伝統的なもので、現代のヤヌスの騎士や貴族は基本的に誰でもこの流派を一度は教養として学ぶそうだ。


 故に、ヤヌス流剣術は弱点を分析されまくっているというわけだ。

 だが、ここは異世界。そういう弱点は魔法の力で補ってしまえばいいというもの。

 そして、そういったアレンジに関しては【武の才】さんが補助してくれることだろう。


 第一に四種の基本の構えから始まり、第二に四種の基本技、第三で四種の応用技、第四が最後で3つの組み合わせ技、といった構成になっている。


 組み合わせ技の3つに関しては有名な組み合わせのみを基本の組み合わせ技として習うが、独自に組み合わせ技を作り上げるのももちろん可能。


 それぞれの解説は時間がかかってしまうので今はやめておく。


 レムスは領主の卵なので、自分への訓練が始まったら少しして戻っていった。ありがたいことだ。

 自分の自由のために何としてでもレムスには領主になってもらわねばならない。

 よろしく頼んだぞ、レムスよ!自分も頑張るので!


「本日はありがとうございました!」

「おう!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る