二年後(7歳)
はい、もう7歳です。
正直に言うと、色々やっているからあっという間に時間が過ぎて行くんだよなぁ。
魔力制御の訓練に、人目を憚りひっそりと隙を見ては誰もいない場所へ転移してからの魔法訓練。
魔法訓練中はルーナの時のように誰かに見つかる可能性を考えて周囲への警戒を、【完全隠蔽】による気配遮断と、ファンタジーおなじみ、魔力を薄く薄く広げることによって魔力で何かが接近した際に気づくことができるやつ再現して行っていた。
この薄く広げるやつを再現してずっと使っていたら、半年後にはスキルとして【気配察知】を発現させることができた。絶対に役に立つと分かるスキルだ。
【気配察知】としてスキルになってからは更に精度と範囲が広がった。
(スキルとして発現すればその行動に補正を受けられるようになるということだろうか)
魔法訓練は、安全マージンとして基本魔法より上位の魔法を使わず、各属性の基本魔法で魔法訓練をしていた。
上位属性の基本魔法については雷、氷までは詠唱がゴブリン魔法書に書いてあったが、光と闇は希少性が高いためかゴブリン魔法書には基本魔法が記載されていなかった。
両親からは魔法の教師を雇わない代わりに、せめて、ということで魔法書を誕生日の時などにプレゼントしてもらっているのだが、やはり光と闇属性については記述が非常に少ない。
ということで光と闇については、独自に考えた詠唱で基本魔法っぽいものを発動していた。
光だろうと闇だろうと、魔法の具体的なイメージに関してはこの世界の人間と比べて何歩も先を行っていると勝手に思っているので、それができないというのは悔しかったのだ。
そして空間属性の基本魔法は『転移』と『収納』などがそうである、という直感というか、説明が難しいが感覚で分かるのだ。
(神様も空間属性は練習をしなくてもある程度使えるはずと言っていたし、特に問題はないよな)
というか、こうして魔法の訓練をしていて思うが、自分には強力なイメージ力があるので、正直なところ魔法書や授業などでわざわざ覚えなくとも、自分のイメージ力に任せて自分で魔法を作り出せてしまう。
故に自分の作り出した魔法が基本なのか中位なのか、はたまた高位か極位かの判定が、知っている魔法を基準にした相対的なものからしかできない。
そして、自分で魔法を作り出せるということは、人前で使う際にはそれに合わせて一つ一つ詠唱が必要になるということだ。
この問題は無詠唱で魔法を発動できることを隠していなければ無視できるので特に問題はないのだが、無詠唱を隠している場合は詠唱を省略できない。
最初は、わざわざ長ったらしい詠唱をして魔法を発動させるのもめちゃくちゃ楽しかったのだが、訓練の効率も考えて途中からはほとんど無詠唱で訓練を行っていた。
このままだといざというときマズイ気もするが、ありがたいことに詠唱の短縮という概念は無詠唱と違って普通に伝わっているので、その場その場でそれっぽく短い詠唱をしてやれば大きな問題にはならない、と思う。
(「風よ」とか「火よ」とかでも、まぁ、うん)
人目につくときはできるだけ普通にそれっぽく詠唱して、緊急時は短い詠唱で対応、さらにそれを隠れ蓑にして一人行動の際には無詠唱で運用していこうと考えている。
まあなんだかいつかボロが出そうな気もするが。
訓練中ずっと無詠唱でやっていたせいで体に染み付いてしまっているというか、条件反射を引き出させられたらおそらくあっという間にバレそう。事前にカバーストーリーを用意しておくか。魔法石とか。
さて、では恒例のステータス確認に参ろうか。
-本当のステータス-
<名前> セグスト・リーベル
<種族> 人間
<性別> 男
<年齢> 7歳
<スキル> 【完全隠蔽】【成長促進】【魔力自動回復】【魔の才】【武の才】【鑑定】【全耐性】【言語理解】【オーバーチャージ】【結界術】【無詠唱】【魔力制御】【気配察知】
<能力値> HP: 60/60 MP: 11550/11550 STR:33 DEX:25 VIT:22 AGI:20 INT:35 MND:80 LUK:10
<適性属性> 火・水・風・土・雷・氷・光・闇・空間
MPとMNDの成長が目覚ましいことこの上ない。やはりこれは本格的に魔法を扱い始めたからだろうか?訓練最高!
他に関しては体が発達してきたのに伴った普通の成長具合かな?
でも【成長促進】さんが力を発揮している可能性も踏まえて、偽のステータスはこれよりも抑えめにしておこう。
-偽のステータス-
<名前> セグスト・リーベル
<種族> 人間
<性別> 男
<年齢> 7歳
<スキル> 【魔力自動回復】【魔の才】【武の才】【鑑定】
<能力値> HP: 50/50 MP: 70/70 STR:27 DEX:22 VIT:19 AGI:19 INT:27 MND:40 LUK:9
<適性属性>火・水・風・土・雷
よし、こんなもんかな。
例のごとく【気配察知】も偽のステータスには表示しない。勘ぐられたりしたら堪ったものじゃないからな。
そして、本日は七歳になって初めてのソールによる基礎訓練のお時間である。
前世ではスポーツなんて全くやってこなかったし正直不安しか無いのだが、ここは【武の才】に期待するしか無い。
現在向かっているのは家の敷地の中にある訓練場だ。父は文武両道なのでそのための訓練場をわざわざ用意したのだとか。
以前自分も見たことがあるが、入ったことはない。が、多分剣道の道場とかそういう感じの建物だと予想している。
そう、何を隠そう自分がソールに習うことになる武術というのは、剣術である。前世では剣なんて全く触ったことがないので、今自分はただの素人の子どもとしての意識でいようと思っている。実際そう変わらないので。
さて、着いてしまったな。早速門のような扉を開けて中に入る。
内装は予想通り道場感をそこはかとなく感じさせるものだ。
そして、中には中央で既に訓練を始めている兄レムスと父ソールが居た。
「おお、セグ。やっと来たか!」
「これで僕も休憩できます。ふぅ」
父が歓迎の意を示し、兄が既に父にしごかれていたのか息を切らしてその場に座り込む。
どちらも意味は違えど自分を待っていたようだ。
「ふむ、まだまだな!」
「お疲れ様です。兄様」
「ありがとう、セグ。全く、父上はついついやりすぎてしまうきらいがあるのが玉に瑕ですよ。セグも気をつけるようにね」
早速不穏なことを言われて怖くなってくる。
本当についていけるだろうか。
「さて、セグよ。早速基礎訓練を始めるとするか」
「分かりました、父様」
「うむ、では早速、やっていこうか。と言っても、剣術を習うのならまだしも今は体を作るためのただの基礎訓練だから、そう難しいことはしない。だからそう不安がるな」
ギクッ。
(…さすがソールだ、よく見ているなぁ。表情とかに出ていたか。…ふむ、忘れていたがいい機会だし、二人とも鑑定しておくか)
鑑定を人に使うのは勝手に重要なプライバシーを覗き見るみたいで、必要に迫られていなければあんまり気が進まないため乱用はしない。
どんなもんかな?まずは父様から。
-ステータス-
<名前> ソール・リーベル
<種族> 人間
<性別> 男
<年齢> 32歳
<スキル> 【指揮】【武の才】【身体強化】【剣術】【気配察知】【弱点看破】
<能力値> HP: 300/300 MP: 150/150 STR:120 DEX:55 VIT:98 AGI:100 INT:88 MND:65 LUK:15
<適性属性>火・土・雷
なるほど、指揮や武の才は生まれ持ったものだろうが、残り4つはおそらくは後天的に発現したものだろうな。全体的になんだか強そうって感じはする。
次はレムスだな。
<名前> レムス・リーベル
<種族> 人間
<性別> 男
<年齢> 9歳
<スキル> 【美形】【人心掌握】【武の才】【身体強化】【剣術】
<能力値> HP: 85/85 MP: 65/65 STR:40 DEX:28 VIT:34 AGI:36 INT:45 MND:34 LUK:7
<適性属性>火・水・風
おっと、これはルーナと同じ【美形】か。もしかして結構いたりするのだろうか。いやでも、後天的に発現するという感じのスキルでもなさそうだし、たまたま、なのか?
そして【人心掌握】…。色んな意味に捉えられるけど、洗脳とかじゃないと思いたい。まあ洗脳だとしても自分は神由来の【全耐性】で無効化できるだろうけど。
(よし、勉強になった)
「いえ、大丈夫です。後々自分のためになるのは理解していますから、存分にお願いします」
「そうか、よく言ったセグ!ではそうさせてもらおうか!」
「あんまり刺激しないほうが…」
レムスは小声で呟くが、誰にも聞こえていない。父はやると言ったらやる男だ。「存分にお願いします」なんて今では言えたものではない。
レムスは、7歳にして思い切りしごかれるであろうセグストを不憫に思うのだった。
───1時間後───
「っ…ハァ…ハァ……」
そこにはレムスの懸念通り、しっかりしごかれてしまった汗だくのセグストが居た。
「今日は初日だからな、このくらいにしておくか!」
(初日でこれとは…言うは易し、行うは難し、だな…)
剣術の基礎訓練ということで、内容は素振りと重心をコントロールするための訓練を詰め込んだものだった。
素振りの方は分かる。まだ分かる。でも重心をコントロールするための訓練は普段使わないような筋肉を使うために何度か筋肉が攣りそうになった。
神様由来の【武の才】も、そのあたりはフォローできないと見た。観念するしか無いだろう。【成長促進】様に、存分に成長を促進してもらおう…。
「これからはこういった基礎訓練をセグが10歳になるまで続ける。そして、必要だと私が思ったら適宜訓練時間を伸ばしていくぞ」
「わ…かりました…ふぅ…」
「お疲れ様、セグ」
レムスがタオルと水筒を持って来てくれた。
「あ、ありがとうございます。兄様。頂きます」
顔の汗を拭いて水筒の水を飲み干すかのように喉に流していく。
「はは、良い飲みっぷりだね。セグもこの辛さが分かるときが来たんだなぁ」
「あはは…」
(ええ、大変に辛かったですとも!)
でもまあグダグダぶうたれるつもりもない。
これはこの先旅をするなり一人で生きていく上で間違いなく役に立つ技能だ。それを学べる環境にあるのだから、前世のようにそれを無下にするようなことはもったいないししたくない。
ならば気合を入れていこう。
「では今日はこれにて終了!レムスも終わりだ」
「「ありがとうございました!」」
さぁて、これから基礎訓練に魔法訓練に、更に忙しくなるな。
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