光と出会った一人の少女の物語
@Hanana_mirai
第2話 信頼
家に着いた。
大翔は電気をつけ中に入っていく。ふり向くと、ほのかは部屋の前に立ったまま。雨で体が冷え顔色が悪くなっていたので、急いで大翔はほのかをお風呂に入ってきてもらった。
大翔は考えていた。どうしようか、と。なぜならばほのかは本当に目を離すと消えてしまいそうなほど弱っているように見えたからだ。そして「死んだほうがマシだ」と言っていたときのまっすぐな目。
大翔「、、、。」
ガチャ(ドアが開く音)
そこには髪が濡れていてベチャベチャなほのかの姿。大翔は「風邪引くから」と言い、ほのかの髪を乾かした。
艶のある肩下まであるまっすぐな髪。改めてほのかを見ると、真っ白な肌に身体は凄く痩せていた。
大翔「疲れてるだろうから、ベッドで寝ていいよ。俺はこっちのソファで寝るから。」
そう言ってほのかを寝室へ案内した。
大翔はソファに横になり、考えながら眠りについた。
翌朝
大翔は2人分の朝食を使っているときだった。寝室からほのかが出てきた。大翔が「おはよう」と声をかけるが、ほのかは少し頭を下げるだけだった。
しばらくの時間、外からの鳥の鳴き声や車の音が聞こえてくる。
そして2人は再び警察署へ向かった。
しばらくすると、ほのかと話をしていた上司が来た。「何も答えてくれない。お前から頼む。」とのことだ。
それを聞いて大翔は思った。きっと彼女は何を聞いても答えないだろう。それほど大きな何かを抱えているのだろう、、、。
大翔「このまましばらく、彼女のことを僕に任せてもらえませんか?」
上司「どういうことだ?」
大翔「しばらくの間、彼女のことを僕が預かります。きっと帰りたくない理由、何も答えない理由があると思います。無理に家へ帰して何かが起きてからでは、、
上司「わかった。」
上司は「頼むぞ」とだけ言い、大翔はほのかを連れ家へ戻った。
食卓テーブルを挟み向かい合う2人。ほのかはずっと下を向いている。そんな姿を見て大翔は言った。
大翔「何も聞かない。家にも帰らなくていい。少しずつでいいから、話したくなったら俺に話してね。全部聞くから。」
ほのかは顔を上げた。少し驚いた顔をしてまた下を向いた。なんだかホッとしたような顔だった。
朝。
いつもと変わらない朝食の時間。毎日朝と夜は二人で食事をしている。
大翔「食べよう。いただきます。」
そう言って大翔は朝食を食べ始めた時だった。
ほのか「、、ぃただきます。」
大翔は思わず手が止まった。初めていただきますと言ってくれたことにとても驚いた。ほのかはそんなこと気にもせず淡々と食べていく。
そして夜。二人で夜食を食べているときだった。ほのかがじっと、こっちを見てくる。なんだ?
大翔「どうした?」
ほのか「、、〇〇高校に通ってる。2年生。しばらく学校には行ってない。家の住所は〇〇〜、、
大翔「ちょっと待って!急にどうしたの?!」
ほのか「、、、。」
ほのか「話すと、家に帰されると思ってた。だからずっと答えなかった。、、だけど、ここならそうはならないと、思った。」
大翔「そっか、ありがとう。」
大翔「学校にはどうして行ってないの?」
ほのか「全部、どうでも良くなった。学校に行く意味もわからなくなった。」
・
・
・
あれから3時間ほど経っただろうか。
どうやら彼女の父親は幼い頃に亡くなって、それから母親はほのかを1人置いていなくなり、それからずっと1人だったらしい。
学校へいかなくなった理由は“いじめ”だった。
その日以来ほのかは随分と話すようになった。たまに、凄くたまに笑みも見せるようになった。
おはよう、いただきます、ありがとう、おやすみを少しずつ言うようにもなって、2人の会話は少しずつ増えていった。
そんなある日
ほのか「ひろと、私学校に行ってみようと思う」
この言葉を聞いて大翔は感じた。彼女は少しずつ向き合おうとしている。こうやって勇気を出して一歩踏み出したのだからどうにか支えてあげよう。力になろう。そう決めたのだ。
次の日、二人はほのかの家へ向かった。
一緒に車から降りた。家の前に立つほのかを見て大翔はほのかの背中をポンっと押した。ほのかは鍵を開け中に入る。
そのまま荷物を持ち、大翔の家に着くとほのかは制服を見ながら肩が震えていたのだ。
どれほどの思いで行くと決断したのだろう。そう考えると大翔は気づけばほのかの肩をそっと抱きしめていた。
ほのかは安心したかのように静かに泣いていた。
光と出会った一人の少女の物語 @Hanana_mirai
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