新歓コンパでの体験談②
とりあえずそんな感じで無事テーブルも埋まって、猪狩部長の音頭で飲み会が始まったんだ。この辺からは申川も一緒だったんだから詳細は省くぞ?途中から酒が入って会話の内容もちょっと怪しいし、それぐらいはそっちで書き起こしてくれ。話の本筋でもないし、適当に脚色してくれていいから。
──飲み会の感想かあ。うん、まあ楽しかったかな。先輩達の小説談義はマニアック過ぎてついていけないところもあったし初めて飲んだ酒は苦くて頭が重くなるしだったけど、先輩達は悪い人たちじゃないのはよく理解できたし酒も飲んでるとテンション上がってくるし。
申川だってそんな感じだったろ?まあ、それも途中までの話しだったろうけど。──そうそう、場があたたまってきて人がテーブルを行ったり来たりするまでな。俺もその辺から酒が回り始めて記憶が怪しいから流れの確認がてらその辺から詳しく話そうか。
テーブルで一緒におしゃべりしてた先輩が何人か抜けて他のテーブルに行った時、俺も申川も移動しようとはしてなかったな。俺は元々会場の隅っこから動かないつもりだったし、酒で動くのも億劫だったしな。
……ちなみに申川はなんで動かなかったんだ?──ふ、ふうん。まあ確かに、先輩達に話しかけられてばかりで俺と申川は直接話せてたわけじゃなかったしな!同じ一年同士で仲を深めるのはいいことだよな!
……まあ結局、それも蝶野先輩がテーブルに来たせいで台無しになるんだけどさ。
あの人、最初から申川に馴れ馴れしかったよな!席なんてたくさん空いてるのにわざわざ申川の隣に座ってさ!無駄にボディタッチも多かったし!
申川もいい気持ちはしなかっただろ?……あんまり嫌そうじゃないな。──いや変な人ってお前、明らかに申川のこと狙ってる目してただろうが!あの人目線とかめっちゃ胸元にいってたし!
──え?それは分かってた?──お、俺も?いや、た、確かに俺もちょっとは目がいってたかもしれないけどさ、蝶野先輩ほどでは……。──いやホントすんませんです、はい……。
ま、まあ俺から見たら、蝶野先輩が申川が拒否らないのを良い事にあまりよろしくない絡み方してるのをイライラしながら見てたわけだ。──何でって、そ、そりゃあ目の前でそんなことされたらイラッとするだろ……。セクハラ染みてるっていうかさ……。
で、そんな様子だけでも駄目だったのにあの人やたらと申川に酒を飲ませようとしてただろ?あれって完全にアルハラだよな。周りの先輩も申川が断り切れずに飲まされてるのに蝶野先輩を止めないし。
──いや、なんでそこだけ妙に体育会系な発想なんだよ……。先輩の命令は絶対なんて今時野球部でもそうそう無いっての。……いや、実際はあるのかもしれないけどさ。
次第に申川が酔ってぐでぐでになっていってるのがわかったから、そのままお持ち帰りされる心配よりも申川がアルコール中毒でぶっ倒れる方が心配になってくるぐらいだったのに、あの先輩容赦なく申川のグラスに酒を注いで「先輩命令ね」なんて抜かしやがる。
それでまあ、カチンときてな。それで、その……。マジで恥ずかしくなってきたからここだけ端折っていいか?この後のことはちゃんと話すから──、あ、駄目ですか。
ええと……。カチンときてつい、申川が飲もうとしてたグラスを奪い取って中身を全部飲んだ後、蝶野先輩に「ちょっと無理矢理飲ませすぎじゃないですか」って意見をな……。──いやいやいや、そんな強い言葉は使ってなかったって!もうちょっとこう、穏便な感じだった、はず……。
確かに?酒の勢いもあって気が大きくなってたのは間違いないし、蝶野先輩に喧嘩売るような感じの言葉遣いに聞こえなくもなかったかもしれないけどさ。あの人だって逆ギレすることないじゃん?まあそれも酒のせいだったのかもしれないけど、ホント酒っていうのは恐いものだって身に染みたよ。
そんなこんなで危うく酔っぱらい同士の喧嘩がおっ始まろうって時に、猪狩部長が颯爽と割って入ってきて場を収めてくれたんだよな。
いやあ、まさか蝶野先輩を問答無用でぶん殴って黙らせるとは思わなかった。──ん?グーじゃなくてパーだっけ?まあどっちでもいいよ。蝶野先輩が一発でKOされたことには変わりないんだから。あれは腰の入った良い一撃だったなあ。あの後のこととか聞いてないけど、蝶野先輩生きてるのかね。どうでもいいけど。
で、猪狩部長に華麗に救出された俺としては先輩にお礼のひとつも言いたかったんだけど、直前の一気飲みが余計だったんだろうなあ。急に酔いが回ってきてそれどころじゃ無かったわけ。
申川も確かその時にはもうグロッキーだったよな?新入生ふたりがアルコール中毒で仲良く病院送りになってたら洒落にならなかっただろうなあ。今朝猪狩部長に聞いた感じだと流石に二次会って雰囲気じゃなくて解散したって事だし、その時点で死ぬほど気まずくはあるんだけれども。
申川はそっからの記憶あるか?──ああ、半分ぐらい寝てるなとは思ってたけどやっぱり駄目だったか。俺も正直断片的だよ。気がついたら猪狩部長の部屋にいて、先輩に介抱されてた感じだ。
半分推測だけど、タクシー使ったか他の先輩達に手伝ってもらっただかして部屋に担ぎ込んだんだろうな。
その辺の経緯を聞いた俺は、休憩場所に猪狩部長の部屋を選んだのは最悪俺たちに何かあった時に自分が部屋で飲ませたって言って部を守ろうとしたんだろうと思ったね。
だってそうだろう?部員の不始末とはいえ、わざわざ女の一人暮らしの部屋に酔った男を連れ込む必要なんてないんだから。同性の申川の事は引き取ったとしても、俺のことなんて誰か男の部員の部屋に押しつければよかっただろうし。
まあ、実際はそんな愛部精神に溢れた理由じゃ無かったわけなんだが。
まさか俺が平気そうなのが分かったら即押し倒してくるとは思わなかったよ。しかも理由が女の子のために先輩に啖呵切るのが格好良かったからって、組み伏せられながらも大学生は発想が違うなって感心したね、俺は。高校で同じような事があったとしても好きになるがせいぜいで押し倒すなんて考えられないわ。
そうやって熱烈にお・誘・い・を受けたわけだけど、その時の俺は酔っ払って身体は動かないわ頭はパーになって正常な判断はできないわで抵抗する間もなく……な。
……なんだよその分かってますよみたいな目は。いや本当だって!た、確かにごく普通の青少年としてはそういうことに興味があったのは否定しないけどさ!あの流れで強情に拒否するのはちょっと無理だって!
それに、酔ってベッドで爆睡しているとはいえお前が同じ部屋にいたんだぞ?そっちが気になって集中できなかったわ!酒も入ってたせいか感覚も鈍かったし!……お陰で三擦り半なんて無様を晒さずに済んだって説もあるかもしれないけど。
……ごほん。で、猪狩部長が俺の上にまたがって腰振ってる時に、何の気も無しにベッドの方を見たら申川とばっちり目が合ったと。寝るのに邪魔だろうからって眼鏡も外してやってたのに、わざわざかけ直してまで観察しやがって……。猪狩部長がいつ気がつくかと思って気が気じゃ無かったわ。
──いや確かに部屋の電気は消えてたし、プレイに集中してた猪狩部長が気がつく可能性は低かったかもしれないけどさ。──プレイ内容?いやお前その辺は自分の目でばっちり……ああ、申川の方も暗くてよく見えてなかったのか。そりゃあ良かったよ。
行為自体を見られてただけでも死にたくなるのに、内容がどうとかサイズがどうとか言及されてたら死にたくなるところだ。──それぐらいは申川が上手いこと想像して書いてくれ。官能小説で食ってくつもりなら、そういうことを自分の想像力で書けるようになっておかないと駄目だろ。
んで、やる事やったら後はふたりでシャワー浴びて俺は床の布団、猪狩部長は狸寝入りの申川の横に潜り込んで寝て、朝起きたら朝食をご馳走になってふたりで部屋を出て。
……こうして申川の取引に乗ってクソ恥ずかしい事をさせられているわけだ。
もうこれで大体の事はしゃべっただろ?──OKね。はいはい。
やれやれまったく酷い目にあった……。──確かに脱童貞は男の子としては喜ばしいけどな。せめてもっと普通な感じで済ませたかったよ……。
次?……あ、有るわけ無いだろそんなん。こんなおいしい展開そうそう転がってないっての。
これでだいたいのことは話したろ。ちゃんと話したんだから、部活の人たちには黙っててくれよ?ホント頼むぞ?絶対だからな?
次の更新予定
一目惚れした女の子に自分の×××な体験談を語らされるお話 萬屋久兵衛 @yorozuyaqb
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。一目惚れした女の子に自分の×××な体験談を語らされるお話の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます