終編
「最後の人が、亡くなったよ」
「そうだね。お墓は綺麗な貝殻でいっぱいにしようね」
「うん。ねえ、黒真珠の子どもたちは目覚めるかなあ」
「子どもたちって言っても、僕たちよりうんと昔に生まれた人たちだからね」
「あはは、そうだね。でも、きっと、少しずつみんな目を覚ましているよね。……大地は少しずつ、また海に還っているから」
「支えてくれる海底樹が、脆く壊れていってるんだろう」
「うん。迎えに行かなくちゃ」
「そうだね。おばあさまの、願いだから」
「あはは。おばあさまじゃないよ、ひい、ひい、ひい、ひい、……とにかく、ずっと前のおばあさまだよ!」
「そうだね。おばあさまの家族だった人に、僕も早く会いたいなあ」
「ちゃんとわかるかな? わたしたちのこと」
「わかるかなあ。わかるんじゃないかなあ。だって僕ら、人と貝の一族が、まざった見た目をしてるから。おまえは浅黒い肌に、紫の目と真珠色の髪でしょう。僕は黒髪に青白い肌で、青い目」
「そうね、そうね! それに、真珠だって零せるし!」
「夕焼け色の、とびっきり綺麗なやつをね」
「あら、これは朝焼け色よ」
「どちらでも、きっと綺麗だよ」
「そうね、そうね。さあ、迎えに行きましょ! 露草色の、瞳の人を」
「おまえ、もしかして、その人に瞳の色をつけてもらおうとか思ってないよね?」
「だって、仕方ないじゃない。大地が海の水に浸されているせいで、お花はもう全然咲かないの。でも彼ならきっと、たくさんの綺麗なお花を覚えているから。紫陽花色って言ってもらえるかなあ。それが一番いいなあ」
「どうかな。おまえの目はどちらかというと、あの人よりも青みがかっているから……」
「むう」
「きっと、どの花も同じだけ綺麗だよ。楽しみだね。……さあ、じゃあ、迎えに行こう。僕らの大好きな人たちを。この、青い青い澄んだ世界に」
(了)
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