第27話 深淵の巫女 セリフィアム・エスカ②
リオトは、セリフィアム・エスカと共に国づくりに必要な情報を共有し、これからの計画について話し合っていた。しかし、頭の片隅には「セフィ」と呼ぶことに対する微妙な違和感が残っていた。
ゲームをプレイしていた時は、気軽に呼んでいた名前――だが、今や彼女は目の前に実在する存在だ。リオトはその違和感を押し殺し、今は目の前の現実に集中しなければならないと自分に言い聞かせた。
「それじゃ、セフィ。召喚したばかりで悪いんだけど、ベルノスたちも含めて少し話がしたい。君が知っていること……神やこの世界のこと、俺自身についても、何でもいいから教えてくれないか?」
リオトの言葉には、期待と同時に少しの不安が混ざっていた。
この異世界の謎が徐々に解明されていくことを望みながらも、何か恐ろしい真実が待っているのではないかという疑念が頭をかすめる。
セリフィアムは一瞬思案するように目を閉じた後、静かにうなずいた。
「はい、リオト様。私が知りうる限りのことをお伝えいたします」
彼女の言葉は落ち着いていたが、その紫色の瞳の奥には、どこか不確かな感情が揺れているように見えた。それは、彼女自身がすべてを理解していないという戸惑いの表れなのかもしれない。
リオトたちはこれまでの状況をセリフィアムに説明し、彼女もまたリオトの質問に答えていった。
しかし、その回答にはどこか物足りなさが残っていた。
「
セリフィアムは目を閉じ、記憶を手繰り寄せるようにゆっくりと息を整えた。その表情には緊張が漂い、何か大切なものを思い出そうとしているかのようだった。
「どんな些細なことでも構わない。教えてくれ」
リオトが前のめりになるように言葉を
セリフィアムの記憶の奥に、何か重要な秘密が隠されているような気がした。
「はい、かしこまりました。私が目を閉じると、浮かぶ光景が一つあります。私たち……いえ、深淵の教会、そしておそらくリオト様の言う深淵文明が、他の国々と共に敵と戦っていた記憶です。『アルテラシア王国』という名の国でした……」
セリフィアムの言葉には慎重さが感じられ、語る度にその声にはどこか悲しみが漂っていた。
リオトはその様子を見て、彼女が何か大切なものを失ったのではないかと感じた。
「それで?」
リオトが続きを促したが、セリフィアムは首を振り、口を閉ざした。
「それしか思い出せません。たくさんの同胞たちの
そう言うと、セリフィアムは左手の薬指に光る指輪をそっと撫でた。
リオトは、その指輪に何か特別な意味があることに気づいたが、彼女がその思いを言葉にしないことを感じ取った。
「わかった......一応の確認だけど、セフィは死んだわけではないんだよね?」
リオトの問いかけに、セリフィアムは一瞬ためらうように視線を落とした。瞳がわずかに曇り、言葉を探すのに少し時間がかかる。
「……わかりません。死んだのか、それとも神の御心でここに導かれたのか、そのどちらかだと思います」
彼女の曖昧な答えに、リオトの胸には新たな不安が広がった。もし彼女がただの召喚された存在ではなく、別の理由でここにいるのだとしたら……?
「なら、やはりクロヴィスの封印が解けるのを待つしかないか」
リオトは呟くように言い、彼女の反応を待った。
セリフィアムは眉を少しひそめたが、すぐに理解したように頷いた。
「クロヴィス様……ですか?」
「ああ、森の守護者、白狼公ガルディウスとの戦いの最中に何か言っていたんだ。この世界に異界の者がいる理由について、何か知っているようだった」
セリフィアムは、リオトの言葉を黙って聞いていたが、どこか考え込むような表情を浮かべていた。
「……そうですか。なら、待ってみましょう」
そう言うと、彼女は再び指輪を撫でた。その仕草に、リオトは胸の奥が締め付けられるような感覚を覚えたが、それを言葉にすることはできなかった。
「よし、じゃあセフィをみんなに紹介しよう。これから国づくりの手伝いをお願いすることになるから」
「かしこまりました!」
セリフィアムは微笑みを浮かべ、優雅に一礼した。
その姿勢はどこか高貴で、彼女の忠誠心が自然とリオトに伝わってきた。
しかし、彼女の内心では別の感情が渦巻いていた。
「(クロヴィス様も、きっと知らない。語ることもできないだろう……なぜなら、もし私の夢が真実ならば、私たちが戦っていたのは、神や邪神以上の、もっと恐ろしい存在だったのだから)」
セリフィアムは自分の胸の中にある不安を、リオトには打ち明けることなく、冷静な振る舞いを続けた。しかし、彼女の心には、忘れられない記憶が深く刻まれていた。
**********
リオトは、セリフィアムを国民たちと他の配下たちに紹介した。
彼女の登場に、男たちからは野太い歓声が上がり、それに対して奥様方は眉をひそめて怒りをあらわにする場面も多々あった。
しかし、彼女の美貌と気品は、最終的に皆の心を掴み、無事に受け入れられた。
セリフィアムは、その見た目だけでなく、さっそくリオトの期待を超える能力を発揮して見せる。
――――――――――
深淵の巫女セリフィアム・エスカ
種類:ユニット(レジェンド)
攻撃力:2 体力:5
特殊能力:
サポート型ユニットで、範囲内の味方と敵に影響を与える範囲アビリティを持つ。
説明:
深淵の力を操る美しき巫女。特定条件下で味方ユニットを強化し、敵を混乱させる能力を持つ。彼女の声は闇の力を引き寄せ、周囲の味方を強化する。
深淵の加護(パッシブ効果・範囲内):
範囲内(半径約50m)の味方ユニット全体に、攻撃力+1のバフを付与し、敵ユニットには攻撃力-1のデバフを付与。
闇の調和(発動型アビリティ):
一定時間(約1分間)範囲内の味方ユニット全体に、攻撃力と体力をそれぞれ+1上昇させる。
――――――――――
セリフィアムは、戦場のコントローラーそのものだった。
彼女の能力はサポートに特化しているが、その効果は絶大だ。
低いステータスを補う圧倒的な範囲アビリティを使いこなすことで、彼女が率いる軍勢はレジェンドユニットさえも凌駕し、まるで神の軍勢が敵を呑み込むかのごとく進軍する。
その恩恵は、ただユニットである配下たちだけに留まらず、一般の民にも及んだ。
人々は精力をみなぎらせ、作業効率が格段に向上し、農作業や建設が急速に進んでいく。
特に深淵の騎士は、彼女の「深淵の加護」と「闇の調和」のダブルバフを受け、凄まじい力を発揮した。
2メートル近い大木を、まるで現代のチェーンソーすらも形無しの大剣による一太刀で切り倒してしまう。
リオトはその光景を目の当たりにしながら、彼がここで一番の活躍を見せているのだと心の中で思わず笑みをこぼした。
しかし、当然のごとく、リオトとベルノスは依然として素のステータスにおいてはトップである。
特にリオトは、セリフィアムの加護を受け、まるで自分がスーパーヒーローにでもなったかのように力を発揮した。
筋肉が増えたわけでも、体が大きくなったわけでもない。
それでも、ありえないほどの力を出せる自分に驚き、苦笑しながらも、無駄にせず黙々と作業に取り組んでいた。
ベルノスもまた、セリフィアムの巫女としての力に
また、嬉しいことに、セリフィアムもベルノス同様に、ゲーム時代にはなかったカードに記されていない能力を持っている。彼女は次のような高位のスキルを行使できるようだ。
大きな外傷や内傷を癒す『ハイヒール』
強力な麻痺や毒、頭痛、呪いを取り除く『ディバインヒール』
呪いを完全に破壊し、その呪いをかけた者へ逆に返す『カースブレイズ』
広範囲の物理攻撃や魔法攻撃を軽減する『ディバインシールド』
周囲を浄化し、強大な光を生み出す『パージライト』
加えて、彼女はベルノスと同じく、低位のヒール、ステータスヒール、カースブレイク、シールド、ライトも使えるとのことだ。
そうして、セリフィアムとゴリゴリマッチョたち(一部はガリガリの者もいるが)の
そして、2週間以上かかるだろうと予想されていた第2層エリアの開拓は、その半分の一週間で完了したのだった。
ピコンッ!
――――――――――
《ミッション5:領地の人口を100人にせよ。をクリアしました》
《クリア報酬:+10,000XPを獲得しました。》
《クリア報酬:各種資材を獲得しました。》
《クリア報酬:専属商人が解放されました。》
《専属商人・ガレオンが市場にやってきました》
《クリア報酬:建築可能な建造物が新たに解放されました。》
《初期拠点が、石造りの拠点へとのレベルアップが解放されました。》
《木の小屋(空き家)を建造できるようになりました。》
《製粉所(風車)が建造できるようになりました。》
《
《水車小屋が建造できるようになりました。》
《石造倉庫が建造できるようになりました。》
《中規模農場が建造できるようになりました。》
《牧場の拡張施設が建造できるようになりました。》
《食糧加工施設が建造できるようになりました。》
《水源管理施設が建造できるようになりました。》
《
《会計庁が建造できるようになりました。》
《
《
《裁判所が建造できるようになりました。》
《外交館が建造できるようになりました。》
《木の防壁が建造できるようになりました。》
《深淵文明の建造物が解放されました。》
《深淵の礼拝堂が建造できるようになりました。》
《深淵の神の祭壇が建造できるようになりました。》
ピコンッ!
《デイリー報酬:デッキからカードを一枚ドローします。x7》
《深淵の影兵を一枚、手札に加えました。》
《邪神の封印を一枚、手札に加えました。》
《闇の呼び声を一枚、手札に加えました。》
《深淵の騎士を一枚、手札に加えました。》
《滅びの聖域を一枚、手札に加えました。》
《邪神のしもべを二枚、手札に加えました。》
《邪神の封印を使用し、一枚ドローします。》
《深淵の司祭を一枚、手札に加えました。》
ピコンッ!
新しいミッション!
《おめでとうございます!国にとって大きな一歩となりましたね!
ミッション6:領地の人口を1000人にせよ》
――――――――――
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