第24話 新しい配下
拠点を構築し始めてから、早くも十六日――あれから二週間が過ぎた。
邪神の封印はまだ解けていない。
だが、街の発展も思うように進まず、人口100人のミッションも未だクリアできていない。
最初に木の城壁で囲った初期拠点と主要な建物、そして六軒の住居を「第一層」とするならば、第二層への開拓を試みていたが、それはリオトの想像以上に困難を極めた。
最大の障害は、この場所が人の手がほとんど入っていない古い森であり、しかも巨大な樹齢を誇る木々が立ち並んでいたことだ。
最初に拠点を設置した一帯は、比較的若い木や背の低い木が多く、また「森の試練」での戦闘によって大木が少なくなっていたため、開拓は比較的スムーズに進んだ。
だが、この第二層のエリアはまるで別世界だった。樹齢が数百年から千年に及ぶような巨木が無数に立ち並び、その伐採は極めて難易度が高かった。
現代の重機でもあれば話は別だが、リオトの手元にあるのは、EDDのシステムで備え付けられた鉄の斧や大きな
そのため、第二層の開拓にはリオトの予想を遥かに超える時間がかかり、最初は1週間ほどで済むと思われた作業が、結局2週間かかってなお、終わっていないかった。
リオトは、EDDのゲームでの伐採速度と実際の木こりの苦労を想像できていなかった。それは一緒に計算していたベルノスも同様だった。
樹齢を重ねた木々は、幹の直径が太く、切り倒すにはその巨大な重量と硬さが大きな障害となった。
特に百年以上も経過した木は伐採に時間がかかりすぎ、切り倒す際のリスクも高かったため、切りやすい木を選んで慎重に進めざるを得なかった。
伐採は難航し、その後の整地作業にも多くの日数が必要となった。巨大な木の根を取り除き、大自然が作り出した石や凹凸を平らにする作業は、伐採と同じかそれ以上に重労働だった。
リオトやベルノスをはじめ、作業ができる全ての人型ユニットや国民が総出で整地作業に取り組んだ。
この2週間の間に、リオトは毎朝のドローでかなりの数のユニットを手に入れていた。
特に、人型ユニットの中には、顔なじみの「深淵の従僕」がカードから二人加わったほか、以下のユニットが増えていた。
深淵の監視者 ×3名
深淵の影兵 ×2名
深淵の騎士 ×1名
深淵の司祭 ×1名
深淵の司祭はベルノスが進化する前と同様、身長2メートルの蛇顔の男で、司祭の衣装をまとい、肌には鱗が見える。攻撃力4、体力6とステータスは高く、知能も高いため、ベルノスの部下として内政官に任命され、整地作業も手伝ってもらっている。また、召喚時の能力により深淵の従僕三人が既に召喚され、すでにそれぞれに仕事を任せている。
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深淵の監視者
監視や偵察を得意とするサポートユニットで、遠くの状況を魔力で監視し、リオトと視界を共有できる能力を持つ。
攻撃力は2、体力は4と標準的だが、その姿は、まるで空中を漂うだけの幽霊――2メートルの長身を黒いローブで覆い、時折赤い無数の目が開かれる神秘的な存在。
顔には一つ目があり、常に動き回って周囲を監視している。浮遊して移動するため、その姿は一層と大きく見える。
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深淵の影兵
隠密と奇襲を得意とする暗殺向けのユニット。
攻撃力1、体力2と低めだが、敵に気づかれないまま接近できる。
身長は170cm程。彼の姿はほとんど見えず、黒い霧に覆われ、ぼんやりとした輪郭しか見えない。フードに覆われた顔からは、赤く光る目だけが不気味に輝いている。
短剣を握るその手は、影のように不確かなものだが、リオトは彼が敵に気づかれずに近づき、静かに仕留める姿を想像した。まさに絵に描いたような暗殺者だ。
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深淵の騎士
高い防御力と攻撃力を誇る巨大な騎士。
攻撃力5、体力5という高ステータスを持ち、身長は2.5メートルを超え、全身を黒いプレートアーマーで覆い尽くしている。
古代文字が刻まれたその鎧は、光を吸い込むかのように暗く、その中から赤い光がかすかに漏れている。
また、その巨体に劣らぬ巨大な大剣を操り、戦闘時には黒い影の翼を生やして突進や瞬間移動が可能。――その姿はまるで、魔王城の守護者か、魔王そのもののようだ。
物資の運搬、伐採や整地でもその力を発揮し、まさに人間重機のような存在だ。
――――――――――
新しい配下の内、深淵の監視者と深淵の騎士は、最低限の単純な会話は可能だ。
深淵の影兵は会話はできないが、頷くなどの意思疎通などは可能である。
会話が可能かどうか、という点はおそらくユニットのレア度に関係しているように思える。
新たに加わったユニットたちは、それぞれの役割を果たし、作業効率の向上に貢献していたが、それでも作業は遅々として進まず、リオトはさらに伐採場を4軒増設した。
そして、第一層にあった伐採場2軒を潰し、その場所に木の小屋を4軒建設して住民を17人増やした。新たな木こりも増員され、作業が少しずつ進展していった。
しかし、なぜ一気に木の小屋を増やさなかったのか。
それは、森が完全には安全でないため、城壁で囲まれていない場所に住居を建て、国民を危険に晒すわけにはいかなかったからだ。
また、整地が済んでいない土地では、満足に建物を建てられなかったのも一因だった。
リオト自身も、内政どころではなく、土地の整地や伐採した木材の運搬など、重労働に従事していたため、2週間で彼の顔つきはより
そして迎えた14日目の朝。
リオトはいつものように筋肉痛に顔をしかめつつ起床し、日課となった今日のドローを確認する。
その瞬間、リオトの表情が固まった。
しかし、次第に彼の顔は喜びで歪み、立ち上がると大きく叫んだ。
「よっしゃああああああああああああ!」
その声に反応し、彼の抱き枕代わりになっていたナイトシャドウ・ウルフが顔を伏せたまま、尻尾を大きく振った。
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ピコンッ!
《デイリー報酬:デッキからカードを一枚ドローします》
ピコンッ!
《深淵の巫女 セリフィアム・エスカ を一枚、手札に加えました》
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