第21話 始まりの村
リオトは、これまでの経験とEDDで培った腕前を活かし、驚くべき速さで町の基盤を整えていった。
村と呼ぶには施設が整いすぎており、街と呼ぶにはまだ小さい。
建物の配置は一瞬の判断で決まり、わずか五分とかからず立派な町が形作られていった。
作業を終えたベルノスとユニットたちは、その光景に目を輝かせ、
作業や偵察など与えられた役目を一通り終えて、リオトの側に戻ってその様子を見ていたベルノスとユニットたちは、目をキラキラさせて、その光景に
「おめでとうございます、リオト様。リオト様に与えられた偉大なる神の御業……本当に素晴らしい光景です!」
ベルノスは次々と建物を召喚するリオトの姿に感動を隠せない。彼の声には、驚きと尊敬が滲み出ている。
リオトは少し照れながら微笑んだ。
「は、はは……まあ、神様に与えられた力のおかげかな。これで、基盤は整った」
「はい、ここからが正念場ですね!」
ベルノスは力強く頷いた。
「うん、まだ国としては足りない。今はようやく村と呼べるくらいだ。これから、一気に発展させるつもりさ。」
リオトの瞳には決意が宿っていた。
**********
リオトは建設した建物について確認をしていた。
初期拠点の砦の側には、簡易食糧庫が一棟、そして小型倉庫が合計5棟建設されている。
白狼公ガルディウスとダイヤウルフ八頭の亡骸が、一棟の倉庫を埋め尽くしてしまったため、追加で倉庫を建設する必要があったのだ。
リオトはその
肉は食料に、毛皮は建物や衣類、防具に、骨や牙、爪は武具に、血や内臓は薬や錬金術の素材として使用することにした。
無駄にするものは一つもない。
一つも無駄にはしない。
リオトは報酬として受け取っていた素材も再確認し、小型倉庫に保管した。
どうやら、倉庫がある状態で初めて受け取れる報酬だったようだ。
**********
次にリオトは、
この森に囲まれたこの場所で、安定して木材を確保するにはは欠かせない施設だ。
広々とした屋根付きの作業場には、丸太を木材に加工するための道具が揃っており、全六棟が建設された。森の開拓を進めながら、町の発展も並行して行う計画だ。
次に建設したのは市場だ。
広々とした市場は、古代の交易都市を思わせるデザインで、アークノクティアのシンボルが高く掲げられている。市場内部は現在誰もおらず、がらんどうだが、いずれ商人たちが訪れ、活気に満ちた取引の場所となるだろう。
井戸も町の重要なライフラインとして複数建設された。
作った瞬間から冷たくおいしい水が湧き出し、民の生活を支える。
その他、調合所、武器製造施設、武器保管庫、兵舎、訓練場、狩猟小屋、解体小屋なども順次建設され、町の基盤が着々と整っていった。すべての施設は互いに連携し、町の発展に寄与するものばかりだ。
町の周囲には、木製の簡易柵と見張り櫓が設置され、外敵からの防衛体制も整っている。砂利道も敷かれ、拠点間の移動がスムーズになるよう工夫されている。
リオトは一つ大きく息を吐き出した。
リオトは額の汗を拭いながら、町全体を見渡し、満足げに頷いた。
「ふぅ、一通り完成だね」
ベルノスと配下たちもその光景に圧倒されていた。
大自然の森の中に、ものの数分で町が出来上がってしまったのだから。
**********
その夜、リオトは作業ログを確認していた。
その時、見落としていた二つの項目が目に留まる。
それは、白狼公ガルディウスを倒したことによるレベルアップ報酬だった。
《レベルアップ報酬:ステータスポイント+1を獲得しました。》
《レベルアップ報酬:称号の効果を獲得しました。》
リオトはステータス画面を開き、確認する。
――――――――――
リオトのステータス画面
名前: リオト
種族: 人間(深淵アビス文明の王)
属性: 闇
レベル: 10
次のレベルまでの経験値: 21,900/45,000XP
攻撃力:6 (4+2)
体力:15
防御力:1 (0+1)
ステータスポイント:1
――――――――――
ステータス画面を見ながら、増えた体力に気づき、少し不思議そうに眉をひそめた
「あれ?体力が増えてる……?」
不思議に思いながらも、リオトは次にステータスポイントを確認し、タッチする。
――――――――――
《自分の任意のステータスにポイントを振り分けてください》
攻撃力:4 +
体力:15 +
防御力:0 +
――――――――――
「やっぱり、防御力だな」
EDDの世界では、防御力1は攻撃力1を無効化する強力なステータスだ。
リオトはステータスポイントを防御力に振り分け、次に称号の効果を確認する。
――――――――――
称号:
「深淵アビス文明の王・邪神の神子」:
深淵と邪神の加護を受けし王として、その名を持つユニットたちは自然とリオトに引き寄せられ、好意と忠誠を抱く。邪神の力はその手中にあり、リオトに従う者たちはより強くその意志に従う。
「闇狼の討伐者」
夜に視界が取りやすくなり、暗闇を有利に利用することができ、夜間行動での優位性を手にする。
「森の試練を乗り越えしもの」
自然の厳しき試練を超えた者に贈られる称号。リオトの体力が増し、自然系のユニットとの協力関係が強化される。特定のユニットを使用した際、そのユニットの力がさらなる力を発揮する。
――――――――――
「なるほど、これで体力が増えていたのか……」
リオトは満足げに頷きながら、自分の成長を実感していた。
**********
翌朝、リオトはナイトシャドウ・ウルフを抱き枕にして眠っていたおかげで、異世界で初めての夜にもかかわらず意外とぐっすりと眠ることができた。
ピコンッ!
《デイリー報酬:デッキからカードを一枚ドローします》
(ついに来た!)
ワクワクしてパネルを見続けるリオト。
リオトは興奮してパネルを見つめながら体を起こす。ナイトシャドウ・ウルフもリオトの動きに反応し、顔を上げた。
ピコンッ!
《闇の呼び声を一枚、手札に加えました》
「くっ……」
リオトは期待に反して出たカードに舌打ちをし、そのままナイトシャドウ・ウルフの体に再び倒れ込み、
ナイトシャドウ・ウルフは大きくあくびをして、リオトに合わせて再び眠りについた。
しばらくして、リオトは朝食の干し肉を食べ終え、砦前の広場に集まるようベルノスとユニットたちを呼び寄せた。
「えーっと、今から、俺たちの国の民となる人々を呼び出すことになる」
リオトの声にはわずかな戸惑いが含まれていた。
自分でもどこかしっくりこない感覚に気づいていたが、それをどう言葉にするべきか迷っていたのだ。
ベルノスは、その微妙な変化をすぐに察した。
リオトのわずかな不安、そして自分たちユニットという存在に対する疑念が垣間見えた。
「なるほど……承知いたしました。つまり、
ベルノスが確認するように問いかけ、リオトは頷く。
「多分、そうだ。ただ、どんな人が来るのかはわからない。普通の人間かもしれないし、異種族かもしれない。何人来るのかも不明だ」
言葉にしながらも、リオトの胸には漠然とした不安が広がっていた。
自分が招くのは、一体どんな存在なのか?
この国の未来を築く大切な住人たちでありながら、彼らが自分にとって味方であることも、あり続ける保証はどこにもない。
ベルノスはそんなリオトの心の揺れを見透かしたかのように、穏やかな微笑を浮かべた。
「私は何も心配しておりません。これまで召喚された私たちは、ただ与えられた使命を遂行する存在ではなく、リオト様を主として心から敬い、従ってまいりました。深淵の従僕たちも同じです。彼らは私ではなく、まず真っ先にリオト様に跪きました。つまり、リオト様は私たちにとって、揺るぎない主であり、絶対的な存在なのです……神のお導きがあったからこそ......それもあるかもしれません。しかし、それだけではありません。リオト様の行動と器が、私たちを惹きつけ、主として敬う理由です。私たちは、リオト様そのものに従いたいのです。」
「……ふふ、ありがとう……。」
リオトは昨晩確認した称号を思い浮かべる。
確かに神の加護は得ている。それが力となり、今の自分を支えていることは否定しようがない。
だが、神の意図は? この世界に自分を送り込んだのは、果たして何を求めてのことなのか?
判断を下すには、まだあまりにも情報が不足している。
すべてが、リオトの理解の範疇を超えた「神」という存在に依存しているように感じられた。
(カギとなるのはクロヴィスか)
リオトは心の中で呟いた。
クロヴィスは黒い石に封印されている存在だが、彼は確実に何かを知っている。
白狼公ガルディウスとの会話からも、クロヴィスがこの世界の秘密に通じていることは明らかだった。
リオトは、その知識を得るためにも、この場所を守らなければならないという使命感を感じていた。
「そうだね……ベルノスを信じてみるよ。じゃあ、新たな家を建てる場所へ向かおうか。」
リオトは深呼吸を一つし、意を決して歩き出した。
ベルノスも彼に続き、静かに後ろを歩く。
その足取りは確かで、リオトの背中に向けられた視線には、変わらぬ忠誠が宿っていた。
万が一、意にそぐわぬものが召喚されたときは......排除するまでのこと。
**********
リオトが決意を固め、最後の建物を建設する。
それは、
小さな煙突が突き出ており、いくつかの窓もついている。家は、一家四、五人が住むのに十分な広さを持っていた。
リオトは内装を確認することもなく、家の前でベルノスとユニットたちと共に待機する。
EDDのルールでは、家が完成すれば住人たちは家から出てくるはずだ。
「ガチャッ」
家の扉がゆっくりと開いた。
リオトはその音に驚き、体が一瞬はねた。
だが、すぐそばにいたベルノスが優しく手をリオトの背中に置いた。その大きく暖かな手は言葉なく「大丈夫」と伝え、リオトの不安を和らげた。
扉がゆっくりと開き、静かな瞬間が流れた。
そこから現れたのは――。
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