閑話休題⑤
◆森の試練◆
古くより、太古の森は神々の加護を受け、文明の侵入を許さぬ神秘の地とされている。
その森に足を踏み入れる者――冒険者、密猟者、そして神の目に留まった勇者たち――彼らには必ず試練が与えられる。
神々は直接手を下さぬ。
試練を告げ、審判を下すのは、神々に愛されし守護者、自然の王たる存在である。
森はその王に仕え、試練を与える。試練が問うのは、侵入者が愚者か勇者か――。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
試練の場に立つ者に、森の王がその巨大な影を投げかけ、静かに問いかける。
その声は風となり、木々を震わせ、森全体が耳を傾けるようだった。
『お前たちは、何を求め、この森に足を踏み入れた?』
『お前たちに、その覚悟はあるのか――愚かなる者か、それとも勇者か?』
『答えよ、我が問いに――生きるに値する者は誰か? 森が認める者は誰か?』
その問いかけには、試される者の心を見透かすかのような威厳が宿っていた。
愚者は震え、勇者は決意を固める――試練を乗り越えるか、森の一部となるか。
愚者は逃げ惑い、無様に屍をさらし、森の養分となる。
勇者は試練を乗り越え、その力を得て、文明の繁栄をもたらすだろう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
森の息吹が肌を刺す中、愚者は膝をつき、怯えた眼差しで背後を振り返った。
「なぜだ……こんなはずでは……!」
彼の言葉は虚しく響き、静寂に飲み込まれる。
大地から這い出す蔦が足元に絡みつき、冷たく優雅に彼の体を引き寄せた。
その体はゆっくりと大地に吸い込まれ、まるで森が自らの一部を取り戻すかのように――。
「逃げられない……助けて……神よ……!」
だが、その声もやがて途切れ、愚者の体は完全に森の中へと消えた。
残されたのは、わずかな風の音と、彼が森の養分となった証――。
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