第5話
釣りバカ日誌 ~深海の秘密~(続き)
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第17章:封印の扉
伊武雅刀の指示のもと、ハマちゃんとスーさんは深海プロジェクトの施設内部へと慎重に足を踏み入れました。そこには朽ち果てた設備と、無数のモニターが並んでおり、かつてここで行われていた実験の痕跡が色濃く残っています。部屋の奥には重厚な扉があり、その表面には「禁忌」と刻まれた警告文が記されていました。
伊武が扉の前で立ち止まり、二人を振り返りました。「この先にあるのは、私たちが決して目にしてはいけないものだ。だが、君たちがここまで来た以上、知る覚悟はあるだろう」
ハマちゃんとスーさんはお互いを見つめ、深くうなずきます。伊武はその様子を見届けると、扉をゆっくりと開けました。
第18章:深海の変異体
扉の向こうには、大型の水槽がいくつも並び、その中で異様な形状の深海魚たちが漂っていました。これらの魚は、普通の深海生物とは明らかに異なり、鋭い牙や異常な数の目を持つなど、人間の手による遺伝子操作の影響を感じさせます。水槽に近づくと、キンメダイとよく似た魚がハマちゃんを見つめ、狂気じみた瞳を光らせました。
「これが…深海プロジェクトの成果なのか?」と、スーさんが息をのむと、伊武は悲しげにうなずきます。「ああ、人間の欲望と浅はかな好奇心が生み出した、まさに”怪物”たちだ。この魚たちは制御不能となり、我々の手を離れた。それ以来、この施設は封印されたのだ」
ハマちゃんは言葉を失いながらも、次第に怒りがこみ上げてきました。「自然をこんなふうに弄んで…あなたたちは一体、何をしたかったんだ!」
伊武はしばらく沈黙した後、低い声で答えました。「私たちが求めたのは、深海に眠る未知の可能性と、人類の進化の鍵だ。しかし、その代償があまりにも大きかったのだ」
第19章:封印が解かれるとき
突然、施設内の警報が鳴り響き、水槽の中の魚たちが激しく動き始めました。伊武は驚きの表情を浮かべ、「誰かがこの施設のシステムに侵入したようだ…封印が解かれたかもしれん!」と叫びました。
すると水槽の一つが割れ、中から巨大なキンメダイが飛び出してきます。その魚は異常な速さで動き回り、船の方へと向かって泳ぎ出しました。ハマちゃんとスーさんは必死に追いかけるも、その巨大な魚は深海の闇へと姿を消してしまいます。
「これは…大変なことになるかもしれない。あのキンメダイが外に出れば、周辺の生態系に計り知れない影響が及ぶ」と、伊武が焦りを隠せない様子でつぶやきます。
第20章:決意の帰還
施設の警報が鳴り続ける中、ハマちゃんとスーさん、そして伊武は急いで地上へと戻ることを決意しました。彼らはクルーザーに乗り込み、深海の闇から浮上していきます。海面に戻ると、夜空には満月が輝き、まるで深海の秘密を暴いた彼らを静かに見守っているかのようでした。
伊武は振り返り、二人に言いました。「この島から早く立ち去るべきだ。あのキンメダイが何を引き起こすか、我々には予測できない。だが、これ以上深海の秘密に関わるべきではない」
ハマちゃんは不安げな表情でスーさんを見つめました。「スーさん、あの魚を解き放ってしまったのは、もしかすると俺たちの責任かもしれない。でも…俺たちに何ができるんだろう?」
スーさんはハマちゃんの肩に手を置き、穏やかに微笑みました。「ハマちゃん、我々はただの釣りバカだ。自然に逆らうことはできないが、自然に敬意を払い、これからの釣りを楽しむだけでいいさ」
ハマちゃんも笑みを浮かべ、「そうだな、スーさん。釣りを愛する者として、俺たちはただ自然と向き合っていこう」と決意を新たにしました。
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こうして、二人は深海の秘密と危険に触れつつも、釣りの楽しさと自然の畏敬を再認識し、日常へと帰っていくのでした。しかし、深海に消えた巨大なキンメダイは、その後も深海のどこかで静かに蠢いているかもしれない…。
完
妄想ドラマ⑦ 鷹山トシキ @1982
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