Ex01:未亡人強盗殺害事件【解決済み】

●概要

王歴1992年2月4日、王都ペディングの住宅街の一室にて、女性の撲殺体が発見された。

被害者は当該の部屋に居住するエスティア・ロール(32)。

当初、証拠品や目撃情報がほとんどなかったため迷宮入りが危ぶまれたものの、およそ1年後に真犯人の逮捕に至った。

※本事件は解決済みのため、規定に従い一定期間後にファイルから情報を削除する。


●事件の発覚

王歴1992年2月4日夕刻、被害者の部屋を訪れた知人男性が、ベッドの上で血を流して倒れているエスティアを発見、ただちに王国軍治安維持部隊へと通報した。

被害者は5年前に事故で夫を亡くしてから、この部屋で一人暮らしをしていたという。

特定の職についておらず、複数の友人男性から"援助"を受ける形で生活していた。

第一発見者である知人男性も、その友人の1人だったとされている。


●遺体の状況

死因は頭部を強く殴打されたことによる撲殺。

遺体の傷や血痕の状況から、凶器は部屋に置かれた陶器製の灰皿であったことがわかっている。

被害者宅を訪れたことのある複数の人物に確認したところ、凶器となった灰皿は被害者の物であり、常にベッド脇に置かれていたという。


発見時、被害者宅のドアは施錠されておらず、窓も開いていた。

発見当日に行われた魔力鑑定では一切の魔法残差反応が見られなかったことから、魔法を用いない物理的な犯行であるとされている。


●犯人像と動機

事件発覚当初、被害者宅は複数の男性がたびたび出入りしていたほか、加害者の遺留品と思われるものもほとんど見つからなかったため、捜査の難航が予想された。

しかし翌1993年3月、王国軍治安維持部隊に所属するエラルド・リーヴァ(29)が緊急逮捕されるに至る。

詳細な再捜査を行った際、被害者の衣服に毛髪が残っており、魔力鑑定の結果エラルド容疑者の魔力紋と一致したことが決め手となった。

動機は痴情のもつれとされている。


●裁判の行方

1993年5月、エラルド容疑者の裁判が開始された。

争点は主に毛髪が付着したタイミングで、被告側の主張は「捜査の過程で付着したに過ぎない」というものであった。


エラルド被告は本事件の捜査を担当しており、事件発覚当日に現場検証をしたほか、被害者の衣服などを回収する作業も行っている。

これに対して王国軍治安維持部隊側は、

・初期捜査では毛髪の発見に至らなかった

・衣類の繊維内を調べるといった詳細な再捜査で検出された

という点から、捜査時に付着した程度のものではなく、密着したり擦り付けるなどしない限りはこの状況にならないとして、優位に立った。


また裁判では、事件発覚前日の深夜に被害者宅を訪れるエラルド被告の目撃証言が出るなど、次々と有力な情報が明らかとなる。

これに関して被告は、指摘されている事件発覚前日の夕刻から当日朝にかけて、「自宅にいた」という妻の証言にて反論。

ただし近親者であるため、被告をかばっている可能性が高いとして認められることはなかった。


同年10月、王立裁判所はエラルド被告に対し有罪判決を下し、死刑が言い渡された。

被害者1名での死刑判決は異例であったものの、被害者宅の金品が盗まれた痕跡があったことなどが加味され、強盗殺人として裁かれたのが原因である。


同年10月、再審請求の棄却を受けて死刑が確定。


1994年12月18日、断首による刑が執行。


●事件の影響

・本事件においては、検挙から刑の執行までが極めて速く、十分な捜査や審議がなされたのかを疑問視する声が相次いだ

・エラルドを知るものは彼が愛妻家であることを訴えており、愛人を作るような人物とは思えないことを主張している

・また、エラルドは夫婦そろって倹約家としても知られており、金銭に困っている様子はなかったという

・裁判で明らかとなった「被害者宅から持ち去られた金品」も、日雇い労働者の日給以下の価値しかなかったことなどから、持ち去った理由だけでなく死刑に至るほどのものではないのではないかという疑念が起こった

・なお、これについてエラルドの元上司であるAは、「度々金を貸していたが、返してもらったことはない」と取材に答えている。

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