4月

第7話 君の名は

「おーい起きてっか真ー」

「起きてます…」

「とても目が覚めてるようには見えんが…」


サカモトさんに起こされたのでノロノロ動きながらも顔を洗い目を覚ます。


「サカモトさん結局和服で行くことにしたんですか?」

「スーツが鬼似合ってなくて…」


保護者は服装自由らしいけどこういう時の自由って基本スーツじゃない?


なんなんだろうねあの裏の意図察しろよみたいな風潮。察せれないから軋轢しか生まれないんだよな俺。


「まぁ時間だしそろそろ行くか…忘れ物ない?」

「ないでーす」

「おっしゃんじゃ行くか」


準備が終わったのでサカモトさんに先導される形で学園に向かっていく。


「にしてもやっぱ緊張しますね…」

「初めましての人間と喋るのはやっぱ緊張するよなぁ…」

「神様にもそう言うのあるんです?」

「俺元人間だし…」

「だから異様に人間のエンタメに詳しかったんですね」


衝撃の新事実すぎるな。


「まぁこっから学園までちょっと遠いから体力セーブしとけよ」

「あと何分くらい?」

「2分」

「ほぼ目と鼻の先じゃねぇか」


真ん前???


言われた通り2分弱歩いていると学園と思わしきものが見えてくる。


「でっかいですねここ…」

「でっけぇよなぁ…生徒10人の規模じゃねぇよパッと見」

「パッと見マンモス校ですもんね」


そんなことを話しながら学園に到着すると先生と思わしき人が佇んでいるのが見えた。


黒髪黒目に高身長イケメンの女性先生に見える。パッと見は。


「おっ新入生か?一応名前聞いていいか?」

「桐谷真です」

「えーっと桐谷…桐谷…おしいるな。んじゃ体育館で始まるまで待っててくれ。そちらの方はお父さんですか?」

「複雑な事情があるんで父ではないんですが…まぁ育ての親…ですかね」


嘘すぎません?


「すみません不躾なことを…ではどうぞ体育館へ」

「頑張ってください」


ヒラヒラと手を振りながら推定先生と別れ看板に記された道通りに進み体育館を目指す。


「早く来すぎたかね」

「始まる時間何時でしたっけ」

「10時」

「今の時間は?」

「8時半」

「何してんすか」


1時間半も早かったのかよ俺たち。だからちょっと微妙そうな顔してたのか推定先生。


体育館に到着したので席についてサカモトさんと雑談する。一月ゲームだのなんだのして交流を深めたからかもうサカモトさんとはズッ友である。


「誰もいねぇな見事に」

「そりゃ1時間半も前ですからね俺たち…あんだけ近いならもっと遅くても良かったんじゃないですか?」

「それは…そう」

「そうなんじゃないですか」

「遅刻ってあかんやん?」

「だとしてもですよ」


もう1時間くらい家いて良かったでしょこれなら。


そんなこんなで10分ほど雑談をしているともう1組新入生が体育館に入ってくる。


「いややっぱ早く着きすぎだって父さん」

「いや遅刻するよりかは早い方が良くない?ほら、もう1組いるじゃないか」

「ほんとだ」


その人たちと目と目が合う。父親と思わしき人は黒目のスキンヘッドでこう言ってはなんだがヤのつく職業の人っぽさがある。


威圧感が凄い。


声的に娘…娘?いや制服がズボンだな、ってことは息子か。サカモトさんが言ってた中性的な人の中の1人かな?


その人は髪は真紅のように真っ赤で目は珍しい黄色だった。身長も高く目測だが180は超えていそうだ。髪型はロングで恐らく痩せ型…はっ!しまった割と好みの姿してたからつい魅入ってしまった…。…父親との見た目の差凄くない?


そうやってその息子さんをじっと見つめていると向こうも何故かこちらを凝視しているのに気がついた。


「ちょっサカモトさん」コソコソ

「何どうした」コソコソ

「あの背の高い中性的な人にすんごい凝視されてるんですけどなんでなんですかこれ」コソコソ

「惚れられたんじゃね?」コソコソ

「んなわけないでしょ」コソコソ


そうやってコソコソと話しているとその2人が何か耳打ちしたかと思うとこちらに近付いてくる。


「初めまして。お2人もこの学園に入学を?」


ヤクザのような風貌の人がそう問うてくる。


「えぇ。お2人も?」

「そうなんですよこの春からこの学園に入学を。まさか全校生10人とは思いませんでしたが」

「えぇ俺もびっくりしましたよそれは」

「ここであったのも何かの縁…少し向こうで喋りませんか?」

「ふむ…良いでしょう少し向こうで喋りましょうか」


サカモトさんがその人と会話をしたかと思うと何故か向こうの方へと歩いていってしまう。何やら立ち去り間際にサカモトさんがウインクをしてきたような気がするがなんだったんだろう。


てか初対面の人間と2人っきりにしないでくれよ頼むから。


「ねぇねぇ君も新入生なの?」

「うんそうだよ」

「なんだか私たちすっごく仲良くなれそうな気がするな」

「初対面で?」

「うん。何となくだけどそんな気がする。あっ自己紹介がまだだったね、私は青江仁守あおえのにまも里兵衛さとべえ。よろしく」

「なんて?」


うんうん…なんて?


「えっだから青江仁守里兵衛だよ。まぁ長いから里兵衛で良いよ全然」

「あぁなら里兵衛って呼ばせてもらうな」


苗字呪文すぎて耳に入ってこないし。


「りょー。えと、君の名前は?」

「俺は桐谷真だ。まぁ気軽に真様って呼んでくれていいよ」

「どこが気軽なんだよ」

「まぁ呼び方は自由でいいよ。俺を呼んでるって分かれば」

「じゃあ真で」

「OK。2人とも帰ってこないみたいだし少し話す?」


良いんだよ全然。でもやっぱ初対面だし話したくはないかなとか言ってくれても。


「いいね!真とは仲良くしたいからどんどん話そう!」

「なんで俺の好感度そんなに高いの?」


何?顔?顔なのか?ぶっちゃけ中の中だよ?


良くも悪くもって感じ。


「んーじゃあ趣味なんなの真」

「趣味…ゲームとか…読書?まぁ漫画しか読まないけど」

「えっ一緒じゃん!どんなゲームするの?」

「最近だとさっき里兵衛のお父さん?に連れてかれた人とツイン〇ーとかス〇ブラとかやってたよ」

「ツインビ〇知ってんの!?」

「えっまさか…?」

「私も好きなんだよね〇インビー!」

「運命かよ」


まさかこの時代にツインビ〇の話で盛り上がれる同級生が居たとはね…前世でも居なかったのにこの話出来るやつ。


やっぱ運命かな?


そのあとも色々な質疑応答をして…分かったことは何故か好きな食べ物や休日にしたいことも一致してるし得意なスポーツや科目も一緒。果ては話のノリも合うときた。


これは運命を感じずには居られない。


そんなこんなで話が盛り上がり気がついたら…。


「全然帰ってこないね父さんたち」ペタペタ

「他の新入生も来ないしなぁー」

「ふふ…2人っきりだね」ペタペタ

「顔赤らめながら俺の顔触らないでくんない?自分の顔の良さ自覚した方がいいって」

「顔が良いだなんて…そんな…」ペタペタ

「聞いて?」


本人の元々の気質も相まってかめっちゃ甘えられるようになっていた。


「ふふまさにこれは運命の導き…入学式終わったら遊び行こーね真」

「それは構わないけど何する?」

「もちカラオケ」

「最高だな」


3年間くらい仲良かったのかな?ってくらいの距離感で里兵衛と雑談を交わしていく。


入学式前にこれだけ仲のいい人間が出来て良かった。本当に良かった。1人で過ごす学校生活は地獄そのものだからな。


3年間の学園生活。こいつとならなんでも楽しめる気がする。…テスト以外。


────────────────────

里兵衛はすんげぇ美人です。


モチベに繋がるので感想や星や♥よろしくお願いします。

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