第4話 雫との最後の1日 後編
──side雫
ブラックジョークをかまして少し落ち込むお兄さんの顔を下から覗き込む。
下から見るお兄さんの顔…めっちゃかっこいいな…。いや惚れてる贔屓目あったとしてもこれは国宝では?写真を撮って額縁に飾りたい。
ん…?写真…?
「ねぇねぇお兄さんお兄さん」
「どしたの雫」
「写真撮ろ!」
「急に?いやまぁいいけど…写るかな」
「きっと大丈夫だよ!多分!」
「元気だなぁ」
私はスマホを取りだしてインカメにしてからお兄さんも入るように頑張って手を伸ばしていく。
「んー!中々入んないなぁ…」
「俺が持つよ雫」
「助かるるる」
お兄さんは私よりも圧倒的に背が高く腕も長いので余裕で私とお兄さんが画角に入る。
最初から頼めば良かったなこれなら…。
「はーい撮るよ雫ー」
「はーい」
「はいチーズ」
「チーズ!」
パシャ
フラッシュが炊かれ私とお兄さんのツーショットが撮れる。写ったかなと二人で話しながら画面をのぞき込む。
「おっ」
「写ってるねお兄さんもちゃんと」
「改めて見たら体勢凄いな」
「そー?別に良くない?」
離れたくないよ私は!離れたいとか言わないでねお兄さん!泣いちゃいますよ私!
離れるなんて言わないでオーラをお兄さんに放ち続ける。
「いやまぁ悪いのは俺だしなぁ…気の済むまでこの体勢でいよっか」
「やったー!」
嬉しくなりついつい後頭部をお兄さんの胸にぐりぐりしてしまう。感触もいいし甘えることによって心も満たされる完璧なムーブ。
「よしよし」
「ぬふへへへへへへへへへ」
それに加えてお兄さんが頭を撫でてくれる。嬉しい。好き。
ひとしきり撫でられて満足したので雑談を再開させる。
思い出話に花を咲かせたり二人で巫山戯あったり…とにかくこの時間を楽しもうと二人で話す。
そんなこんなな話の流れで何故か初恋の話をすることになった。
「お兄さんは初恋とかしたことある?」
「初恋?した事ないなぁ…花の高校生の時は父さんらが死んだばっかでそんなこと考えれなかったし…雫は?」
「うえっ!?私!?」
「おっその反応…したことあんのか初恋。聞きてぇなその話」
「えっえっとぉ…」
何故かじゃないじゃん完全に私の自業自得じゃん…!えっどうしよどうしよ、言う?言うべき?お兄さんが初恋ですって言うべき?でっでも勇気がぁぁぁぁぁ!
いや!覚悟を決めるんだ桐谷雫!後10時間もすればお兄さんとは二度と会えなくなるんだ!ここで言わないでいつ言うんだ!
「あれは中学生の時の話なんだけどさ」
「はいはい」
「その時の私って日々勉強漬けで友達も居ない凄い真面目ちゃんだったじゃんか」
「懐かしいな…3年前かもう」
「毎日毎日将来への不安で押し潰されそうになって…好きでもなんでもない勉強に全部の時間を使って…地獄みたいな日々だった」
「…」
「そんなある日その初恋の人が私に言ったの。『辛そうに勉強してんなお前…うし、お兄さんがお前に悪い遊びを教えてやろう』って」
「あぁ確かにそんなこと言った…な?ん?」
何かに気付いたのか段々とお兄さんの顔が赤くなっていく。可愛い。
「その人に初めてゲーセンに連れて行ってもらったりカラオケに連れて行ってもらったりしてさ、その人にとってはなんでもない事だったのかもしれないけど私はそれに救われたんだ」
「…」
「その時から将来への不安とかが段々と無くなって力の抜き方も覚えて…頻繁にその人と遊んでさ。その人も色々大変だったろうに私のことを考えてずっと楽しませてくれようとしてたその姿に惚れたんだよね」
「雫…」
「上手く伝えられないんだけどさ、お兄さん。私は、お兄さんが大好きだよ。あの時からずっと、ずーっと、誰よりも!」
言った。言ってしまった。よくよく考えればあと10時間もあるのに…えっこれで振られたりでもしたらあと10時間私はどうすればいいの?こいつ俺のこと好きなのかって思われながら喋るの?キツくない?待って待って待ってミスったミスったミスった。
「俺も…」
そんな私の耳にお兄さんの声が入ってくる。
「今ようやく分かったんだけどさ、俺も好きだよ。妹としてじゃなく、異性として、雫のことが」
「えっ…?」
今言われたことが信じられなくてほっぺたを抓ってみる。
「痛い…」
「そりゃ…痛いだろ…どうした?」
「夢じゃ…ないの?」
「現実だよ」
段々とさっきの言葉が私の心に染み込んでくる。
嬉しい。嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい。
嬉しすぎて嬉しすぎて顔のニヤけが止まらないし無意識のうちにえへえへと声が漏れてしまう。
「もっと…早く気がつけてりゃな…」
お兄さんが悲しそうな声でそう言う。
「違うよお兄さん」
「いや違いはしないけど…」
「違うよ!お兄さん!」
「あっはいごめんね口答えしちゃって」
「本当なら気付かれることも無かったかもしれないんだから気付いてくれただけで私は嬉しいの!それにあと10時間は時間があるから!まだ色々できるから!」
「確かに10時間はあるけど色々って何を…」
そんな何も分かってなさそうな鈍感なお兄さんの唇に私の唇を合わせる。
「…え?」
「ふふ、こういうことだよ。お兄さん。…初めてだったんだけどちゃんと出来てた?」
「いやちゃんと出来…え?」
混乱してるお兄さんにさっきのでコツを掴んだのでキスをしまくる。
幸福物質が溢れて止まらない。幸せすぎてクラクラしてくる。でもまだまだ満足出来ない。ちょっ待っみたいな声が聞こえるが無視してキスし続ける。
「私が満足するまで1時間かかりました」
「校長先生?」
1時間もキスされれば慣れたのか落ち着いた様子でお兄さんがそうツッコんでくれる。
「ほらほら次はお兄さんから」
「はいはい。仰せのままに」
そう言ってお兄さんが私にキスをする。お兄さんからされるのはさっきとはまた違った良さがある。どっちも幸せなのには変わらないけど。
それから1時間ほどハグもしたり手も繋いだりしてると等々私の我慢が限界になってしまう。
「ねぇーお兄さーん」
「何ー?どしたの雫」
私をバックハグしてくれているお兄さんがそう答えてくれる。
「しよ?」
「…………何を?」
「分かってるでしょ?」
「いやでも俺あと7時間半くらいで居なくなっちゃうし新しく恋した時のためにもそれは…」
「お兄さん以外と恋愛したくないよ私。ほら脱いでください私も脱ぐので」
「躊躇無さすぎない?えっ?俺がおかしいの?」
「そうですよ」
「そうだったんだ…」
そんな話をしながらスルスルと服を脱いでいき下着姿になる。なんだかんだ言いつつもお兄さんもその気になってくれているのかどんどん服を脱いでくれる。
「お兄さんの性癖も全部分かってるから…満足させられるように頑張るね」
「俺の性癖知られてんの割と嫌だなぁ…」
そう言いつつも裸になった私に視線が釘付けになっているお兄さんにキスしてから営みを開始する。
あぁ幸せだなと、何度目かも分からないそんな気持ちを強く抱いた。
「ねぇーお兄さん」
「なんだ?雫」
「別の世界に行ってもさ、忘れないでね、私のこと。」
「忘れるわけないだろ」
「お兄さんは魅力的な人だから色んな人に惚れられちゃうかもしれないけど、私もハーレムメンバーの一員だからね」
「なんで俺ハーレム作るの前提なん?」
無理よ?と言うお兄さんに抱きつき動かない心臓に心を締め付けられながら言葉を紡ぐ。
「お兄さんは…料理が苦手だから、料理が上手い人を捕まえるんだよ」
「俺が努力する選択肢ないんだけど」
「お兄さんは鈍感だから…ちゃんと女の子の気持ちは考えないとダメだよ?」
「頑張ります」
「それで…それでね?」
「うん」
もう会えなくなってしまうお兄さんに涙をボロボロ流しながら頑張って話す。
「ちゃんと…命を大事にしてね?お兄さんの事が大切な人が、いっぱいいーっぱい居るからさ」
「うん」
「お兄さん」
「…どうした?」
「私…離れたくない。もう、離れたくないよぉぉぉ!やっと!やっと想いが通じあって!これからなのに!離れたくなんてないよぉ!」
「ごめん…」
「水族館デートもしたかった!二人で旅行にも行きたかった!遊園地にも行きたかった!アトラクションを待つ時間でも…お兄さんとなら辛くないから!」
「ごめん…!」
お兄さんの目からも大粒の涙がボロボロとあふれる。
「子供も作って、お父さんとお母さんに孫の顔を見せて…ゲームとか、料理とか、色んなことをしたりして…そんな、そんな日々を過ごしたかったぁ…!」
「ごめんなぁ…!」
その後は二人で抱き合いながら声も出せず泣き続ける。
それでもこれだけは伝えねばならないとあふれる涙を拭いながら言葉を紡ぐ。
「でも、でもね…お兄さん。私を引きずっちゃダメだよ…?忘れて欲しくは無いけど…私のことを気にしてお兄さんが幸せになれない方がずっとずっと辛いの」
「俺…幸せになってもいいのかな」
「当たり前じゃん!幸せになって幸せになって…あの世でいっぱい!いーっぱい!思い出話聞かせて!」
「あぁ…もちろん。いっぱい話すよ…雫」
お兄さんと最期に幸せなキスをしたあと、最初からお兄さんなんて居なかったかのようにお兄さんは姿を消していた。
それでも私のスマホにはお兄さんとの写真が入ってるし私の中にはお兄さんの証がまだ漂ってる。
私もお兄さんに楽しい思い出話を沢山できるようにしようと、前を向いて頑張っていこうと強く思った。
明日から。
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キャラが勝手に動いたと思ったら普通のラブコメの主人公が4話でS〇Xしちゃった…。なんでなんだろう。
モチベに繋がるので感想や星や♥よろしくお願いします。
次回からついに転生します。
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