第3話 実った果実の大きさは
翌日、いつもより早く目が覚める。スマホの画面を見るとAM 5:48。完全に寝る直前に見た時間がAM 2:03。眠気もあり寝ようとするがやっぱり寝れない。まだ眠い体を無理やり起こし、軽くシャワーを浴びる。それから、いつもの日課のラジオ体操をして、昨日の夜ご飯の余りを食べる。
「11時集合だから……9時30分にはご飯作り始めた方がいいかな?」
現在時刻は午前7時ジャスト。まだ時間があるので昨日間違えた数学の問題の復習をする。一休みをしようと顔を上げ、時計を見ると9時45分になっていて、慌てて準備を始める。
「えっと……冷めても美味しいやつ……卵焼きと唐揚げかな?あとは……」
慣れた手つきで料理を始め、出来上がるとすぐにカバンに入れる。完全に準備が終わると時間もちょうどいいくらいなので、大学へと向かう。
「お、10分前行動とは。流石だね、大草君」
「そういう青柳さんも5分前行動だけどね」
アパートを出た時間からして少し遅れるかもと思ったが予想外に全ての信号で止まることがなかったので時間よりも早く着いた。それから少しして青柳さんが来る。
「じゃ、行こっか」
「いやあの、いい笑顔と行こっかとか言われても、とこでピクニックするか言われてないんだけど」
そんな小言を無視して青柳さんが歩き始める。歩くペースがいつもより速く、駆け足で追いつき、横に並ぶ。
「はい、着いたよ」
大学から20分ほど歩いたところに、その場所はあった。周りに人はいなく、少し高い丘のようになっていて頂上には大木が一本生えている。
「いいでしょ?ここ。多分アタシしか知らない秘密の場所」
大木まで行き、ビニールシートを広げる。街と違って騒音も無く、ただただ草が揺れる音で包まれる。
「すごい……東京にこんな場所があったんだ……なんか、うん。落ち着く」
「でしょ?あ、ここのことは誰にも言わないでね?さ、ご飯食べよ!」
カバンの中からお弁当を出して蓋を開け、講義の話や教授の愚痴を話しながら食べ始める。
「ん!この唐揚げ美味!?流石大草君。なんで君ホントは女子じゃないのか?」
「そんなわけないでしょ。青森にいた頃からばあちゃんの手伝いしてたら勝手に上達しただけだよ」
青柳さんは時折本人が気にしてることを躊躇いなく言う。その分カバーが上手なために争い事にはならない。食べ終わった後、突然青柳さんが「正座して」と言うので正座をすると太ももに頭を乗せてきた。
「ん?大草君の太もも少し硬い……というか意外と筋肉あるよね。あ、頭撫でて」
「畑仕事は筋肉つかうからね。いわゆる細マッチョってやつですよ」
少し躊躇ったが青柳さんの頭を撫でながら雑談をする。それから30分ほど経過し、青柳さんが寝息を立てて寝てしまう。日当たりのいいこの場所なら仕方ないかと思いつつ、自分もうつらうつらとしてしまう。
「おーい、大草君。起きてー」
いつのまに寝てたのか、気づいたら僕が青柳さんの太ももて寝ていた。少しして意識も覚醒し、再び青柳さんの希望で膝枕をしてあげる。
「ねぇ、大草君」
すると、青柳さんが左手で僕の頬に触れ、微笑みながらわかりやすく、簡潔に四文字の言葉を話す。
「好きだよ」
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