第2話 甘過ぎず酸っぱすぎず
あの日から僕と青柳さんの関係が始まった。大学では一緒にいることが増え、講義が終わった後も一緒にご飯食べることが増えた。なんだかんだで話が合うし、苦手な科目が2人して違うのでお互いに教えあうこともある。最近は一緒にいて楽しいと思うことが増えた気がする。
「ねぇ、大草君ってなんでいつもご飯食べた後にりんごを齧るの?」
いつも通りに学食でお昼ご飯を食べ終え、食後のりんごを食べ終わり、これから苦手なら数学をやろうとした時、青柳さんが僕があげたりんごを齧り、溢れてくる蜜を飲みながら聞いてくる。
「え?あー……なんでだろ。青森にいた頃からの習慣というか癖というか……まぁ体には良さそうだから」
「……癖かぁ……アタシにはそういう癖みたいなものは無いなぁ……んー、甘くて美味ー!流石だね」
蜜を少し垂らしながらニカッと笑う。一緒にいてわかったことだが、普段の青柳さんは男勝りというか男らしいというか。言い方を変えればイケメンという部類に入る。だが、こういう自分の好きなものを食べたりしている時の顔は本当に女の子の顔で、可愛いらしいと思ってしまう。
「そうそう大草君。明日って講義無いよね?ピクニックに行かないかい?あ、そこの問題は最初にやったらこの公式を少し応用すれば解けるよ」
「え?あほんとだ、流石リケジョ。で、何故いきなりピクニック?」
教えてもらった公式を使い、ノートにペンを走らせて問題を解く。一通り解き終わり、ノートを閉じてカバンに入れる。
「そそ。ピクニック。ほら、明日は久々のオフでしょ?たまにははっちゃけて遊びに行こ?」
両腕を枕にして机に突っ伏していかにもな疲れていますアピールている。
「……まぁたまには遊ぶのも大事か。うん、いいよ。それで?明日は何時にどこで待ち合わせ?」
「おぉ、やたら細かく聞いていたな。んー、じゃあ明日の11時に大学前に集合しよ?ご飯どうしよう。アタシ作ってこようかな」
瞬間、背筋に寒気を感じる。以前に一度、青柳さんの料理を食べたことがあるがあれは料理と言えるのかすら怪しい。味は最悪、見た目に関しては食べ物がどうかすらわからない。本人はあれで美味しいと言いながら食べていて、流石に青柳さんの前で不味いとは言えないので無理して食べたがあれは2度と食べたくはない。
「青柳さん!お昼ご飯なら僕が作って持ってくるよ!だから大丈夫!ほんとに!」
「?そう?わかった。ありがと!よろしくね!」
なんとか絶望を回避して安堵のため息をこぼす。それから、午後の講義に参加してそのまま解散となった。帰りに明日のお昼ご飯の材料を買い込み、帰路に着く。
家に着くと、すぐに明日の準備を始める。早速買ってきた食材を手早く調理し、終わるとすぐにタッパーに入れて冷蔵庫に放り込む。そのまま夜ご飯を作り、食べ終えるとダンボールからりんごを一つ出してそのまま齧る。甘過ぎず酸っぱ過ぎない丁度いいくらいの蜜を飲み込み、カレンダーを見る。
「明日……楽しみだな。そういえば……青柳さんとオフの日に会うのは初めてか……」
いつもよりも少し早い心臓の鼓動と、少し熱くなった体を無理やり鎮めるかのように風呂に入り、そのまま布団に潜る。が、今夜は寝れそうになく、そのまま夜は老けていく。
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