第17話予想外だらけ

アイラが学園行事から帰宅してから二日後。


毎年学園では行事が終了した翌日から四日間の休みがもうけられていた。


アイラは足の怪我が回復傾向にあったので少しの時間だけという約束で王都の街へと出向いていた。


アイラは街につくなり一目散にいつもの手芸屋へと出向いた。


カランカランッ、、


「こんにちは」


アイラは店に入ると笑顔で店主へ挨拶をした。


「あらいらっしゃい。ゆっくり見ていってちょうだいね」


アイラに声をかけられた女性店主が笑顔で言った。


「はい。ありがとうございます」


アイラは嬉しそうに応えた。


アイラはニーナに作っている洋服に付け足すリボンやレース、追加の生地を見に来たのだった。


(ニーナに似合うイメージの洋服を形にしてみたけどニーナは可愛らしいからたっぷりリボンとレースを足したいのよね!)


アイラはそんな事を考えながらリボンやレースを吟味していた。


それからアイラは三十分程店内を見回った後かごに入れたリボン、レース、生地、その他のパーツなどの会計を済ませた。


「今日も沢山素敵な物が買えて良かったです。ありがとうございました」


アイラは会計を済ませると笑顔で店主へ言った。


「こちらこそいつもありがとうね。そうして喜んで帰ってくれるとこちらも嬉しくなるからね」


店主が嬉しそうに笑みを浮べて言った。


そんな店主を見てアイラも嬉しそうに笑った。


「あ、そうだ。忘れるところだった」


店主は急にハッとなり少し慌てて言った。


「どうしたんですか?」


アイラが店主へ尋ねた。


「いやね、お嬢ちゃんが以前街の市にお店を出店したでしょう?その時にお嬢ちゃんの出店した店で商品を買った人の一人が私のお茶のみ友達なんだけどね。その友達がお嬢ちゃんの店で買ったブローチをつけていたら周りからどこで買ったのか教えて欲しいと言われたみたいでね。どうやらお嬢ちゃんの作ったブローチを欲しいって人が沢山いるみたいでね」


店主がアイラに説明した。


「私の作ったブローチが」


アイラは店主の説明を聞き驚いた表情で言った。


(私の作ったものをそれほど喜んだり欲しいと思ってくれてる人がいるなんて嬉しいな)


アイラはそんな事を思っていた。


「あぁ。それでその話を聞いた時に私の店に足を運んでくれるお嬢ちゃんが出した店だと話をしたら是非自分の店に商品を置いて欲しいと頼んでみてくれないかとその友達に言われてね」


店主は更にアイラへ説明を続けた。


「私の商品をですか?」


アイラが店主へ言った。


「あぁ。その友達はこの店から少し行った場所に小さな雑貨を扱う店を営んでいるのよ。そのお店にお嬢ちゃんの作る商品を是非置いて販売させて欲しいと思っているから次にお嬢ちゃんがうちの店に来たら話してみてくれないかと頼まれていたのよ」


店主が更に言った。


「そうだったんですか」


アイラが呟いた。


「それで、、どうかしら。お嬢ちゃんさえ良ければお嬢ちゃんの作った商品を友達の店に出品してもことはできないかしら?」


店主がアイラへ言った。


「はい。是非私の作ったものをお友達のお店へ置かせて下さい」


アイラは少し考えると嬉しそうに笑みを浮べて店主へ言った。


「本当かい?ありがとう。きっと友達も喜ぶわ。ではお店の名前と場所を書くから直接店に行って友達と今後の事を話してみてくれるかしら」


店主はアイラの言葉を聞いて嬉しそうに言った。


「はい。分かりました」


アイラは笑顔で応えた。


そしてその後、、


アイラは店主が紙に店の名前と場所、店主の友達の名前を書いてくれたものを受け取り手芸屋を後にした。


(まさか現世でも委託販売が出来るなんて!出店出来る時に市に出店しようとは思ってたけど委託販売出来るなんて思ってもみなかったもんね。委託販売出来るとなると私の作ったものがもっと色んな人に手にとってもらえるって事だもんね。ふふ。嬉しすぎる。まさに私の望むハンドメイドライフが送れそうだわ)


アイラは嬉しそうにそんな事を考えながら歩いていた。


そして手芸屋から少し歩いた場所に教えてもらった店があった。


カランカラン、、


「いらっしゃいませ」


アイラが店へ入ると手芸屋の店主と同じくらいの歳の女性店主がアイラへ言った。


「あの、手芸屋のおばさまからお話を聞いて来たのですが」


アイラが店主へ言った。


「あら〜!ヘレンさんが話をしてくれたのね!ここに来てくれたという事は私の提案を受けてくれるということかしら?」


店主はアイラの言葉を聞いて目を輝かせて嬉しそうに言った。


(あの手芸屋のおばさまはヘレンさんというのね)


アイラが考えていた。


「はい。私で良ければのお話をお受けしようと思います」


アイラは微笑みながら言った。


「ありがとう!きっとあなたが作るのものはまたたくまに人気になること間違いないわ!」


店主がにこにこと笑みを浮べてアイラへ言った。


「そうなると嬉しいですね」


アイラは笑みを浮べて店主へ言った。


「私はヘレンさんの友達でこの店の店主のサリーよ。これからよろしくね!」


サリーが笑顔でアイラへ言った。


「サリーさんよろしくお願いします。私はアイラ・プ・ガルバドールと申します」


アイラはサリーに挨拶をした。


「え?!ガルバドール?!ガルバドールって侯爵家のですか?!」


サリーはアイラの言葉を聞き驚き慌てて言った。


「はい」


アイラは苦笑いを浮かべて言った。


「そうとは知らず馴れ馴れしくしてしまい申し訳ありませんでした」


サリーは戸惑いつつアイラへ謝った。


「サリーさんやめて下さい。かしこまって欲しくてガルバドール家の名を言ったわけではありません。サリーさんのお店へ私の商品を置いて頂くという事に対して礼儀として挨拶をしただけです。ですからガルバドール家ではなく一人のアイラとして接して下さい」


アイラはサリーに慌てて言った。


「しかし」


サリーはアイラの言葉に戸惑いながら言った。


「では、今回のお話をお受けするにあたりアイラ個人として普通に接して頂く事を条件とさせて頂きます」


アイラがヘサリーにこりと微笑みながら言った。


そんなアイラにサリーはポカンと口を開けて呆気にとられていた。


「私の負けです。分かりました。では…アイラさん一個人として今回の件の話を進めさせて下さい」


サリーはやれやれといった表情でふっと笑いアイラへ言った。


「はい、分かりました。よろしくお願いします」


アイラはそんなサリーににこやかに言った。


それから二人はアイラの商品をサリーの店に委託販売する話を具体的に進めていったのだった。


「という訳で大体の話はまとまったので後はアイラさんが商品を持ってきてから商品の説明や注意点、レイアウトなどの話をしましょう」


サリーが二人で話をまとめた後アイラへ言った。


「はい。分かりました。では商品が何点か完成次第持ってこさせて頂きますね」


アイラは頷きながら言った。


「はい。よろしくお願いします」


サリーが笑顔で言った。


その後、アイラはサリーに挨拶をして店を後にした。


(何だか予想外な展開だったけど委託販売の話もスムーズに進んだし後は商品を完成させるだけね)


アイラはサリーの店を出て歩きながらそんな事を考えていたのだった。




アイラは馬車の元へ歩いてると可愛らしい外観のお店が目に入った。


(あの可愛らしいお店は何かしら)


アイラはそんな事を考えながら店の方へと歩いた。


「洋菓子のお店だわ」


アイラは店の前に着くと店内を外から見て呟いた。


(このお店は製菓材料も売ってるのね。今度ニーナと一緒にクッキーを作ろうって約束してるしニーナと作るクッキーのトッピングなんかを買っておこう。ついでにニーナが好きそうな焼き菓子もお茶の時間様に買っておこうかしら)


アイラは店内を見てそんな事を考えていた。


アイラは店内へと入った。


そして店内にある物を見始めた。


(うわぁ〜。本当にこのお店に置いてあるものは可愛いものが揃ってるわね)


アイラは店内を見回してそんな事を考えていた。


(あっ!!)


アイラはカラフルなアイシングセットが目に入った。


(カラーが豊富なアイシングセットだ!可愛いわね。買いね!)


アイラはそんな事を考えながらかごにアイシングセットを入れた。


そして次にアイラの目に入ったのはリボンの形をしたすべて違うアイシングがしてあるクッキーが三枚入った袋だった。


(あのクッキーのセットは絶対ニーナが喜ぶわね。ニーナの好きなリボン型だし)


アイラは微笑みながらそんな事を考えてクッキーのセットへ手を伸ばして取ろうとした。


その時だった、、


アイラと同時にリボン型のクッキーセットへ手を伸ばした人物がいた。


「あ、申し訳ありません」


アイラは同じく手を伸ばした人物に慌てて言った。


「こちらこそ申し訳ない。え?アイラ?」


相手の人物もアイラに言いかけたその時相手の人物がアイラの名前を言った。


アイラは驚き相手を見た。


「え?ヨ、ヨハネス様?」


アイラが驚いた表情で言った。


そう、クッキーに手を伸ばしたもう一人の人物はヨハネスだった。


「アイラがどうしてここに?」


ヨハネスも驚いた表情で言った。


「え?あ、可愛らしいお店だなと思い入ってみたのです」


アイラはどことなくよそよそしく言った。


(び、びっくりした。まさかこんな所でヨハネス様に会うなんて。行事の時以来だけどあの日何だかヨハネス様にキュンとしたからか恥ずかしいな)


アイラはそんな事を考えていた。


「そうじゃなくてアイラ怪我してるよね?怪我が治ってないのに一人で出歩くなんてだめじゃないか」


ヨハネスは心配げにアイラへ言った。


「あぁ。もう怪我の方は大丈夫ですしお父様たちからは少しだけならと許可を頂きましたので」


アイラは苦笑いを浮かべて言った。


「それでもまた怪我がぶり返したらどうするんだい?ちょうどこの後にガルバドール邸に向かう予定だったから送るよ」


ヨハネスは心配げのままアイラへ言った。


「え?うちに行かれる予定なのですか?」


アイラはヨハネスの言葉を聞き驚き言った。


「あぁ。アイラの御見舞にと思ってね」


ヨハネスはにこりと笑みを浮べて言った。


「え?わ、私の御見舞ですか?そんな気を使って頂くなくても」


アイラはヨハネスの予想外の言葉に慌てて言った。


「気なんて使ってないさ。さぁ一先ず会計を済ませて店を出て馬車へ向かおう」


ヨハネスは慌てるアイラを見てクスっと笑いながら言った。


(慌てるアイラは相変わらず可愛いな)


ヨハネスは慌てるアイラを見てそんな事を思っていた。


「え?あ、はい。分かりました」


アイラは慌てて言った。


そして二人は会計を済ませると馬車へと向かった。


「先程の店のクッキーだが私に譲っても良かったのかい?アイラも買おうと思っていたんだろう?」


ヨハネスは馬車へ向かう道中でアイラへ尋ねた。


「はい。あのクッキーをニーナにと思ったのではないのですか?」


アイラがヨハネスへ言った。


「あぁ。そうなんだ。でもどうして分かったんだい?」


ヨハネスは不思議そうにアイラへ言った。


「実は私もあのリボン型のクッキーを見て絶対ニーナが好きそうだと思い次にうちに遊びに来た時のお茶の時間用にと思ったのです」


アイラはくすっと笑みを浮べてヨハネスへ言った。


「あ〜なるほどそういう事か。ハハハ。さすがアイラだね。ニーナの好みをよく分かっているね」


ヨハネスは納得した表情で笑いながら言った。


「ヨハネス様もさすがニーナのお兄様ですね。よくニーナの好みを理解してらっしゃいます」


アイラはくすくす笑いながら言った。


「ハハ。そうかな?アイラがそう言ってくれるのならそうだということだね」


ヨハネスは笑いながら言った。


そうこうしているうちに馬車が停まっている場所へ到着した。


「アイラ、私もアイラの馬車へ同乗させてもらってもいいかな?」


ヨハネスがアイラへ尋ねた。


「え?ヨハネス様もですか?」


アイラはヨハネスの言葉を聞き驚き言った。


「ああ。だめだろうか?」


ヨハネスが言った。


「いえ、だめではありませんがヨハネス様も馬車へ乗ってきておられますし。馬車はどうされるのですか?」


アイラは戸惑いながらヨハネスへ言った。


「あぁ。それなら心配しなくて大丈夫だよ。うちの馬車はアイラの馬車の後をついてガルバドール邸まで行ってもらうから」


ヨハネスはにこりと微笑みながら戸惑うアイラへ言った。


「そうですか?それでしたら馬車の心配は大丈夫ですね」


アイラはホッとした様に言った。


「では私がアイラの馬車に同乗しても構わないかい?」


ヨハネスはにこりと笑みを浮べてアイラへ言った。


「え?あ、はい」 


アイラは慌てて応えた。


(ヨハネス様も一緒に馬車に乗るだなんてヨハネス様の馬車は乗り心地でも悪いのかしら)


アイラはそんな事を考えていた。


「そう?ありがとう」


ヨハネスは笑顔でアイラへ言った。


そして、アイラはヨハネスと共に馬車へ乗り込み馬車がガルバドール邸へと向かい始めた。


ドキドキ、、


(いざヨハネス様が乗ったのはいいけれど何故私の横に座ってるのかしら。当たり前に横に座ってきたもんだから驚いて心臓がドキドキするわ。あまりにもドキドキするからヨハネス様に聞こえてなければいいけど)


アイラは目の前ではなく横に座ってきたヨハネスを横に緊張しつつそんな事を考えていた。


「あ、あの、、行事での時の事ですが改めてお礼を言わせて下さい。本当に助けて頂いてありがとうございました。あの時ヨハネス様が見つけて下さらなかったら今頃こうして王都へも来られていなかったでしょうから」


アイラは緊張してか何かを話さなければと思いヨハネスへと言った。


「本当に気にしないで。私は絶対にアイラを見つけ出すって決めてたからね。あのままアイラが見つからなかったら私は今頃どうなっていたか」


ヨハネスはにこりと微笑みながらアイラへ言った。


キュン、、


「はい」


アイラはヨハネスの言葉に思わずキュンを感じて戸惑いながら言った。


(そんなかっこいい事をさらっと言うなんて。イケメンな上に攻略対象者はやっぱり違うのね。思わずまたキュン感じてしまったわ)


アイラは恥ずかしくなり下を向いてそんな事を考えていた。


ヒョコッ。


「どうしたの?下を向いて。気分でも悪くなったのかい?」


下を向いていたアイラの顔を覗き込みながらヨハネスが言った。


急に顔を覗かれヨハネスとの顔が近い事に驚いたアイラはしどろもどろした。


ドキドキ、、ドキドキ、、


(か、顔が近い!)


アイラはしどろもどろしながら考えていた。


「だ、大丈夫です。気分が悪くなった訳ではありませんので。ただ」


アイラは慌ててヨハネスへ言った。


「ただ、どうしたの?」


ヨハネスは心配げにアイラへ言った。


「いえ。何でもありませんので」


アイラは戸惑いながら言った。


「何でもなくないよね?そこまで言われたら気になってしまうな」


ヨハネスは困り顔で言った。


「ただ、ヨ、ヨハネス様にキュンを感じてしまったので恥ずかしくなり下を向いたのです。それに急に顔が近づいたので思わずドキドキしてしまったのです」


アイラは意を決した表情で恥ずかしながら思い切ってヨハネスへ言った。


(モブだけど前世でも今世でも恋愛事に疎い私が攻略対象者にキュンを感じるなって方が無理な話なんだわ。攻略対象者恐るべしだわ)


アイラは混乱気味に考えていた。


アイラの言葉を聞いたヨハネスは何も言わず黙っていた。


アイラは何も言わないヨハネスを見て戸惑った。


(えっとヨハネス様は何故黙ってるの?まさかやっぱりモブの私なんかにそんな事を言われて呆れてものも言えないのかしら)


アイラは更に戸惑いながら考えていた。


そんな一人戸惑いしどろもどろしているアイラを見てヨハネスはとても優しく愛おしい表情を浮べて微笑んだ。


(まさかアイラが私にドキドキしてくれたとはね。ハハ。好きな相手が自分にあんな事を言われるのがこんなに嬉しいものだとは思わなかったな。今までは女性にあの様な事を言われても煩わしさしかなかったというのに)


ヨハネスはアイラを愛おしそうに見つめてそんな事を考えていた。


アイラはそんな微笑んだヨハネスを見て??という表情を浮かべていた。


そんなアイラを見てヨハネスは更に愛おしさが溢れて優しく笑ったのだった。


(??ヨハネス様笑ってる?という事は一先ず気を悪くしたわけではないってことよね?はぁ、良かったわ)


アイラは微笑むヨハネスを見てそんな事を考えていた。


その後もヨハネスは機嫌良くしていた。


そんなヨハネスを横目にアイラはヨハネスの機嫌がなぜそんなにいいのかを不思議に思いながらウトウトしていた。


(それにしても今日は予想外な事が多すぎて色々と頭がいっぱいだわ)


アイラはウトウトしながらそんな事を考えていた。


そして、、


いつの間にかアイラは眠ってしまったのだった。


ヨハネスは眠ってしまったアイラの体を自分の肩に寄りかからせた。


(今日は嬉しい予想外な出来事が沢山でいい日だな。早くアイラも私に夢中になってくれ。そうしたら私の腕の中に閉じ込めて離さないから)


ヨハネスはアイラの寝顔を愛おしそうに見つめて微笑みながらそんな事を考えていたのだった。

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