第16話攻略対象者達の密談
宿舎の王太子専用の部屋では。
レオン、ヨハネス、カイルの三人が集まり話をしていた。
「カイル!それは本当なのか?」
レオンが表情を歪ませてカイルへ尋ねた。
「はい殿下。先程アイラの部屋へと様子を見に行く為に言ったのですがノックをしようとした時に部屋の中からアイラと友人のカミラの話し声が漏れてきました。所々の会話しか聞き取れませんでしたが間違いなくアイラは何者かにハメられて今日の出来事が起きたようです」
カイルは怒りを露わにした表情でレオンへ説明した。
「おかしいとは思っていたがやはり何者かが関与していたのだな。なんと愚かな事をしてくれたのだ」
レオンも怒りを露わにしながら言った。
「アイラがその者達の顔を見ているのでアイラへ話を聞き全生徒を見て誰なのかを聞けばよいかと思います」
カイルがレオンへ言った。
「そうだな。アイラに顔を見て教えてもらうのが一番正確にならず者を見つける事ができるな」
レオンはカイルの言葉を聞き頷きながら言った。
「恐らくアイラを嵌めようとした者はバーレン公爵家のジェシカ嬢が絡みの者ではないかと思います」
ヨハネスが考え込む様な表情でレオンへ言った。
「バーレン公爵家のジェシカ嬢だと?!」
レオンが驚き言った。
「確かに。あり得なくはないな。ジェシカ嬢に関しては以前の件もあるしな」
カイルは険しい表情で言った。
「以前の件とは何だ?アイラとジェシカ嬢は何かあったのか?」
レオンが??という表情でカイルへ尋ねた。
「はい。実は」
カイルはレオンに言われると気まずそうな表情で頷きながら言った。
そして、カイルはレオンへ以前カミラ絡みでジェシカがアイラの頬をぶった事を話した。
アイラの意思もありその件に関しては大事にはしなかった事。
その日にジェシカはアイラがカイルの妹だと知ったこと。
などを説明した。
「まさかその様な事があったとは」
レオンはカイルの話を聞いて驚きと怒りの混じった表情で言った。
「私がその場に居合わせなかったら恐らくジェシカ嬢は更にアイラに危害を加えていたことでしょう」
ヨハネスはその時の事を思い出すかの様に表情を険しくさせながら言った。
「しかしジェシカ嬢が絡んでるとなるとなかなか厄介だな」
レオンが困った表情を浮かべて言った。
「はい。殿下の仰る通りです」
カイルは頷きながら微妙な表情を浮べて言った。
「君たち知っての通りバーレン公爵はかなりの野心家だ。グラマー公爵家が白い公爵家ならばバーレン公爵家は黒い公爵家といえるだろ。その野心家の娘であるジェシカ嬢も父上譲りの野心家なのは見てわかる通りだ。自分の野望の為ならば手段を選ばないだろうな」
レオンは頭を抱えながら言った。
「そうでしょうね。今回のアイラの件についてもジェシカ嬢が取り巻きの令嬢達を使って仕組んだことでしょう。ジェシカ嬢は恐らく自分の手を汚す事なく物事を陰で動かすタイプでしょうからね。完全な証拠がない限りはこちらが何を言ってもしらを切り通すでしょうね」
カイルは悔しそうな表情で言った。
「もしかしたらアイラは他にも私達の知らない嫌がらせをされてるのではないでしょうか?アイラの事だから何かあってもカイルにすら報告しなさそうですし」
ヨハネスは眉間にしわを寄せながら考える様に言った。
「ヨハネスの言う通り他にも何か嫌がらせをされている可能性は極めて高いな。これはアイラの周りの者にアイラに気づかれない様に話を聞く必要がありそうだな」
レオンがヨハネスの言葉を聞き頷きながら言った。
「殿下、今回の件に絡んでる者についてですがあえてアイラに顔の確認してもらう事をしないでおくのはどうでしょう?」
ヨハネスがレオンへ提案した。
「ん?それは何故だ?」
レオンが言った。
「恐らくアイラに声をかけて嵌めようとした者は貴族の令嬢である事は間違いないですしわざわざアイラに確認させなくとも相手はアイラが戻ってきた事で自分達のした事が嘘だということがバレてしまうと恐れているはずです。ビクビクしている様な者なら私達が見れば一瞬でその者達が誰なのかわかることでしょう。あえて相手を泳がせておいて油断させておくのも悪くないかと思います…。それにわざわざアイラに確認させて嫌な気持ちにさせるのも嫌ですし」
ヨハネスが自分が思っている事をレオンへと説明した。
「なるほど。確かにそれもそうだな。明日の集合時に生徒たちの中から今回の件に絡んでいる者を見つけるのは容易いことだな。アイラにはもう今日の事をわざわざ掘り返してまで気を病んでほしくないしな」
レオンはヨハネスの言葉に納得した様に言った。
「アイラは恐らく明日カイルにでも自分に話しかけてきた者がいると伝えてくるだろうからそこはカイルが上手くアイラへ話をつけておいてくれ」
レオンがカイルへ言った。
「はい。お任せ下さい」
カイルは頷きながら応えた。
「我々は周りに気づかれない様に水面下で今回の件を含めて動く事としよう」
レオンがヨハネスとカイルへ言った。
「承知しました」
「承知しました」
ヨハネスとカイルが応えた。
(アイラをこの様な目にあわせた者たちを絶対に許さない。今考えてもアイラにもしもの事があったかもしれないと思うと肝が冷える。絶対にアイラに危害を加えたその者たち全てに制裁を下してやる)
レオンは表情を険しくさせてそんな事を考えていた。
(アイラをこの様な目にあわせた者たちを全員洗い出して重い罰を与えてもらわないとな…。絶対にアイラに手を出した事を後悔させてやる)
ヨハネスは険しい表情でそんな事を考えていた。
(可愛い妹に危害を加えた者たちを必ず見つけ出して後悔させてやる)
カイルは眉間にしわを寄せながらそんな事を考えていた。
その後、三人は夜中まで密談を続けていたのだった。
※
翌日。
アイラは身支度を済ませるとカイルの部屋へと向かった。
コンコンッ。
「お兄様?おはようございますアイラです。もう起きてますか?」
アイラが部屋の中へと向かって声をかけた。
ガチャ、、
「アイラおはよう。だいぶ前に起きていたよ。さぁ中に入るといいよ」
扉が開くと中からカイルが出てきて笑顔でアイラへ言った。
アイラは笑顔で頷きなくとカイルの部屋へと入った。
「アイラ昨夜はきちんと休めたのかい?きちんと眠れた?足の怪我はまだ痛むかい?」
カイルは心配そうにアイラへ言った。
「はい。ベッドに入ったら緊張の糸が切れてしまったのがすぐに寝入ってしまってました。お陰でとてもよく眠れました。怪我の方もまだ腫れてはいますが歩けますので問題ありません」
アイラは軽く微笑みながらカイルへ応えた。
「それならば良かったよ。でも怪我は悪化してしまったら駄目だから無理はしない様に家に帰ったらまたすぐに休むんだよ?」
カイルは少しホッとした表情で言うもすぐに真剣な表情で言った。
「はい。それよりも昨夜は色々とご心配とご迷惑おかけしました」
アイラは申し訳なさそうなカイルへ言った。
「そんな事気にしなくていい!アイラが無事だったそれだけでどれほど安心したか。アイラが謝る事ではないからね?」
カイルはアイラへ言った。
「はい」
アイラは申し訳なさそうに頷きながら言った。
「それで昨夜の件でお兄様にお話しておきたい事がありまして」
アイラは少し言いづらそうにカイルへ言った。
「なんだい?」
カイルが言った。
「はい。それがお伝えしようか迷ったのですがカミラがだしに使われたのが許せなかったのでお伝えしておこうと思いまして」
アイラは少しムッとした表情でカイルへ言った。
(伝える理由が自分が嵌められた事に対してではなくカミラがだしに使われた事が許せないからと。まったく…我が妹ながら自分の事より人の心配だからな。まあアイラらしいというか何というか)
カイルはアイラの話を聞いて少し複雑な心境でそんな事を考えていた。
「それで伝えたい事とは何だい?」
カイルがアイラへ言った。
「それが。実は私は昨夜部屋にカミラが居ないことに気づいてカミラを探している時に声をかけられたのです。その声をかけてきた方達がカミラが調理場に忘れ物をした様で忘れ物を取りに外へ出ていくのを見たと言われたのです。それで私は夜も遅いしでカミラが心配ですぐに外へ出てカミラを探しに行ったのです。しかし昨夜宿舎へ戻りカミラと話をしたところカミラはずっと宿舎の中へいてただ飲み物を取りに部屋を空けただけだったという事が判明したのです。ですのでその声をかけてこられた方達はカミラの名前を使い私に嘘を教えたようなのです」
アイラはカイルへと説明した。
「そんな事があったのか。何と愚かな事をしたのだ」
カイルは苛立ちを露わにした表情で言った。
(やはり絶対に許される案件ではないな)
カイルは話しながらそんな事を考えていた。
「で、ですが別にだからといってその方達をどうこうして欲しいとかではありません。ただ伝えておいた方がいいと思ったので。お兄様だけにお伝えしたのです」
アイラは苛立つカイルを見て慌てて言った。
(まずいわ。お兄様が怒ってるわ。まぁ妹の私があんな目にあったんだから分からなくもないけど大事にはしたくないのよね。それにどうせジェシカが手を回した令嬢達だろうし…。私はただ平凡に過ごしたいだけだし面倒なのはごめんだわ)
アイラはカイルをチラッと見ながらそんな事を考えていた。
「わかったよ。アイラがそういうのであれば私だけでこの話は留めておこう。ただしもしもまたこの様な事があれば次は私も黙ってはないからね?」
カイルはやれやれという表情で言うとすぐ真剣な表情になりアイラへ言った。
(やはり殿下達のいう様にアイラに顔の確認をお願いしなくて正解だったな。アイラは大事にしたくない様だしな。アイラは本当に優しすぎる。このままアイラには内緒で殿下達と話を進めるしかなさそうだな)
カイルはアイラの優しすぎる性格に頭を抱えつつそんな事を考えていた。
「は、はい。わかっています」
アイラは慌てて応えた。
(はぁ〜これでどうにか大事にならずに済みそうだわ。あぁ〜早く家に帰って無我夢中でハンドメイドをしたいわ)
アイラはカイルに話しながらそんな事を考えていた。
その後、、
話を終えたアイラは自分の部屋とへ戻って行った。
アイラが部屋を出て自分の部屋へと向かうのを確認したカイルはレオンの部屋とへ向かった。
コンコンッ、、
「カイルです。」
カイルは扉を叩くと部屋の中へ向かって言った。
ガチャ、、
「入れ」
するとレオンが扉を開けて出てきて言った。
カイルは頷きながら部屋の中へと入った。
「それでアイラは話をしに来たのか?」
レオンがカイルへ尋ねた。
「はい。先程。やはりアイラは完全に嵌められた様です。しかしアイラ本人は今回の事を大事にしたくはない様で私だけで留めておいて欲しいとの事でした。しかも私へ話をしようと思ったのも自分が嵌められ事より友達であるカミラの名前をだしに使われた事が許せなくてという理由でした。まったくアイラはいつも自分の事より人のことばかりで」
カイルがレオンへ説明した。
「やはりそうだったか。やはり我々が内密に調査をした方がよさそうだな。それよりも自分の心配より人の心配。アイラらしいといえばアイラらしいが」
レオンは険しい表情を浮かべていうもすぐにやれやれという表情で言った。
「はい。アイラらしいですがあまりにも自分の事が無頓着なので心配になります」
カイルは苦笑いを浮べて言った。
「まぁまぁいいじゃないか。それがアイラのいいとこでもあるのだしアイラが自分の事に無頓着なのであれば我々が守ってやればいいだけの事だ」
ヨハネスがクスっと笑みを溢しつつカイルへ言った。
「それもそうだな」
レオンがクスっと笑みを浮べて言った。
「確かにね」
カイルもクスっと笑みを浮べて言った。
「それでヨハネス。例の件はどうなっていた?」
レオンは真剣な表情でヨハネスへ尋ねた。
「はい。やはり殿下の読みが当たっていました。調査場へ向かう矢印板が崖がある方の道へ行く場所に差し替えられてました。暗いのもありアイラはその矢印板見て道を進んだものと思われます。矢印板が故意に差し替えられていたのは間違いないでしょう」
ヨハネスは怒りを露わにした表情でレオンへ伝えた。
実は昨夜レオンはヨハネスへ宿舎からアイラが落ちた場所までの道のりにおかしな点がないかを調べるように伝えていたのだった。
「やはりそうだったか。おかしいと思っていたのだ。宿舎から調理場までは矢印板があるのに崖の方に行くわけがないと。ここまで用意周到にしていたとはな」
レオンはヨハネスの話を聞き怒りがこみ上げながら言った。
「念の為に証拠になる様にと矢印板の位置が故意に変えられていたがわかる様に数枚写真を撮っておきました」
ヨハネスがレオンへ言った。
「あぁ、ありがとう。助かるよ」
レオンがヨハネスへ言った。
「この後は解散前の集合ですね。そこで昨夜アイラに声をかけた令嬢達を確認すればいいだけですね」
カイルが怒りを露わにして言った。
「あぁ。昨日の今日だから表情を見れば明らかだろう」
レオンは眉間にしわを寄せながら言った。
「「はい」」
ヨハネスとカイルが言った。
それから少しして大広間に全校生徒が集合した。
そこで学園長と王太子であるレオンが行事を締めくくる挨拶をした。
レオンは挨拶をしながらヨハネスとカイルは整列した状態で三人はあからさまに動揺を隠せず怯えている令嬢を数名確認した。
アイラは学園長もレオンも昨夜の件について特に触れることなかったのでホッとしていたのだった。
そして、、
その後は各自解散して迎えの馬車へ乗り各自帰っていった。
アイラは馬車の中でウトウトしていた。
(昨夜はよく眠れたはずなのに睡魔が襲ってくるわ。やっぱり自分が思ってる以上に肉体的にも精神的にも疲れてたのかな)
アイラはウトウトしながらそんな事を考えていた。
「アイラ家に着くまで眠るといいよ。着いたら起こしてあげるから」
カイルはウトウトしているアイラを見て優しく言った。
「ごめんなさい。ではお言葉に甘えてそうさせてもらいます」
アイラはカイルにそう言うとスーっと眠りについたのだった。
そしてアイラが目覚める頃には侯爵邸へと到着していた。
侯爵邸に到着してアイラが馬車から降りるとスミスとマリがアイラの元へと焦った表情でやってきた。
「アイラ無事で良かった。本当に良かった。怖い思いをしただろう?足の怪我は大丈夫なのか?」
スミスがとても心配そうにアイラへ言った。
「本当に知らせを聞いたときは居ても立っても居られなかったのよ」
マリは半泣きになりながらアイラを抱きしめながら言った。
学園長の方からアイラの昨夜の件についてサティス侯爵家へ連絡が入っていたのだった。
アイラが嵌められてその様な事になったという事は学園長にもふせてあったので侯爵家へはアイラが行方不明になって怪我を負ってしまったが無事に救出されたという事が伝えられていたのだった。
「お父様、お母様ご心配おかけして申し訳ありませんでした。ですが私は大丈夫です。足の怪我の方も数日あれば治るでしょうし心配しないで下さい」
アイラは優しい笑みを浮べて二人の心配を少しでも晴らそうとして言った。
(良かったわ。どうやら私が何故その様な状況になったかまでは二人には伝わってないみたいね。もし伝わってたら大変だったもんね)
アイラは二人に言いながらも内心はホッとしつつそんな事を考えていた。
「アイラ。とにかく一刻も早く休みなさい。足の怪我ももう一度医者に診てもらおう」
スミスはまだ心配そうな表情でアイラへ言った。
「はい、お父様。ありがとうございます」
アイラはスミスへ言った。
「馬車移動も疲れたでしょう?エミリーに言って部屋にお茶を運ばせるわね」
マリが心配そうな表情で言った。
「ありがとうございます。お母様」
アイラはマリへ言った。
そして、、
アイラは自室に戻り侍女のエミリーに着替えを手伝ってもらった後にお茶を飲み一息ついた。
その後はスミスが呼んでいた医者がやってきてアイラの足の怪我を診てもらい処置をしてもらった。
その後アイラはベッドに寝転んだ。
(あぁ昨日は本当に何だか濃厚な一日だったわ。まさか自分がプリラブのヒロインみたいな目にあうとは。でも新しい友達も出来たし庶民的な体験も出来たし楽しい思い出も沢山出来たな。前世での生活みたいで何だか懐かしかったなぁ)
アイラは寝転んだまま天井をみてそんな事を思い出し考えていた。
(それにヨハネス様が助けに来てくれた時は嬉しいというかホッとしたというか。それにとてもドキドキしてしまったのよね。今思い出しても何だかドキドキしてしまうもんね。さすがイケメン攻略対象者だわ)
アイラは昨夜の事を思い出すとポッと頬を赤らめながら考えていた。
(でも私の知ってるプリラブのゲームの内容やイベントは今回の攻略イベントまでなのよね。このイベントをやり終えたあたりで死んじゃったからね。だから今後の展開が分からないからどうしたものか)
アイラはん〜と頭を悩ませながら考えていた。
(急に展開が変わったりするのかな。でもお兄様とローズさんを見てる限り二人の絆がどうこうとかならなさそうだしな。それとも何か急に絆が壊れたりするのかな。そんな事になってほしくはないんだけどな。ヨハネス様と殿下の今後の状況もまったく読めないしな。やっぱり二人ともこれからローズさんに猛アタックしたりするのかな。ん〜本当にさっぱり分からないわ)
アイラは更に頭を悩ませながら考えていた。
そんな風に考え込んでいると急に眠たくなってしまいそのまま眠りについてしまったのだった。
それから一時間と少し寝て目を覚ましたアイラはやりたくてウズウズしていたハンドメイドをやり始めたのだった。
「あぁ〜やっぱりハンドメイドをしている時が一番落ち着く時間だわ」
アイラはにんまりしながら呟いた。
「せっかくミシンがあるんだからニーナに洋服でも作ってみようかしら」
アイラはミシンを見て言った。
「うん!そうしよう!ニーナにぴったりな可愛い服を作ろう!」
アイラは満足げに笑みを浮べて言った。
そしてアイラはその後も無我夢中でハンドメイド時間を楽しんだのだった。
同じ頃、、
カイル、スミス、マリの三人はスミスの執務室にて話をしていた。
「何だと?!それは一体どういう事だ?!」
スミスが声を張り上げて言った。
「父上、声のトーンを落としてください。アイラの部屋まで聞こえてしまいます」
カイルは慌ててスミスへ言った。
「そうよ。スミス一旦落ち着いてちょうだい」
マリはスミスをなだめる様に言った。
「そんな話を聞いてどう落ち着けというのだ!」
スミスは怒りを露わにしながら言った。
実は、カイルがアイラの両親であるスミスとマリにはアイラには内緒で今回のアイラの件での真相を話しておかなければならないと思いレオンの許可を得て二人に話をしたのだった。
「気持ちはわかりますが…落ち着いて下さい。アイラは今回の件について大事にしたくない様なのでアイラの事を思うのならばアイラにお二人が真相を知った事に対して知らないふりをしてもらわなければならないのです」
カイルはスミスの怒りを鎮める様に言った。
「カイルの言うとおりにしましょう」
マリは落ち着いてスミスへ言った。
「分かった。それで今回の件についてはどう対処しようとしているのだ?さすがに我が娘がこの様な目にあっては私も黙ってはいられないぞ?」
スミスは一旦気持ちを落ち着かせながら言った。
「はい。それは私も同じ気持ちです。このまま黙って見過ごすことなどできるわけがありませんから。今回アイラを嵌めたであろう令嬢達の目星はついていますがあえて泳がせておくことにしたのです。今後どう動くのかをしっかりと監視するつもりです。殿下のお考えは確実に追い詰めて逃げ場のない状況まで追い込み罰を与えるおつもりなのです。今後侯爵家としての力を貸して頂く事があると思うのでその際は父上宜しくお願いします」
カイルがスミスとマリに言った。
「分かった。殿下がそこまで考えて下さっているのであれば我々は指示に従い動くとしよう。そして何が何でも今後この様な危険な目にアイラがあわない様に全力を尽くそう」
スミスがカイルの話を聞き頷きながら言った。
「アイラはとても優しい子だから何かあっても私達に迷惑かけまいと黙っている事もあるだろうからそこも気をつけて見守ってあげましょう」
マリは心配そうな表情で言った。
「そうだな。そうしてやろう」
スミスも心配そうな表情で言った。
「一先ずは父上も母上もアイラの前では何も知らないふりを徹底してくださいね。また何か動きがあれば随時お伝えしますので」
カイルが二人へ言った。
「あぁ、わかった。頼んだぞ」
「わかったわ」
スミスとマリは頷きながら応えた。
こうしてアイラの知らぬところでアイラの周りの人達は内密に動き始めたのだった。
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