第14話学園行事(イベント)

学園行事の当日。


学園行事は一泊二日の予定だった。


アイラとカイルは出発前に持ち物の再確認をして目的地へと向かった。


毎年この時期に行われるこの学園行事は王室が管理している森林地区で行われていた。


とても自然が豊かな場所だった。


ただ…危険な場所もあったので事前に十分な注意事項が生徒たちへ教えられていた。


貴族が集まる学園にも関わらずこういった自然の中で二日を過ごすという事が生徒たちの経験と成長に繋がると考えられる行事だった。


この行事は直接現地への集合だった。


アイラとカイルの乗る馬車も直接現地へと向かっていたのだった。


「お兄様は今年が行事へ参加する最後の年ですね。楽しい時間を過ごせるといいですね」


アイラがカイルへ笑顔で言った。


「あぁ。六年間欠かさず参加しているが毎年良い時間を過ごせているからね。今年はローズとの時間もしっかりと取りたいと思っているんだ」


カイルは少し照れた様な表情でアイラへ言った。


「そうなのですね。ローズさんもきっとお兄様と過ごす時間を楽しみにされている事でしょうね」


アイラは笑顔でカイルへ言った。


「あぁ。事前にローズとどの様に過ごすかを話し合っているんだよ。今夜は星を見に行こうと思っているんだよ」


カイルは嬉しそうに言った。


「ふふ。きれいな星が見れるとよいですね」 


アイラはクスクスと笑いながら言った。


「あぁ。ありがとう。アイラも楽しい時間を過ごせるといいね」


カイルがにこりと微笑みながら言った。


「はい」


アイラは頷きながら言った。


(今年は今までの二回とは違い前世の記憶がある状態での参加だからこの行事がプリラブMのイベントの一つだっていう事を踏まえた上で過ごさないといけないな)


アイラはカイルへ返事をするとそんな事を考えていた。


(確か学園行事のイベントでは攻略対象者達がローズの事ばかり気にかけている事にジェシカが腹を立てるのよね。三人それぞれが入れ代わり立ち代わりでローズの近くにいるからジェシカはなかなかローズに近づく事ができなかったけど夜になりある一瞬の隙をついてローズに意地悪をするんだったわよね。ジェシカの意地悪によってローズは暗闇の森の中で一人怖い思いをしたんだったよね。ローズが居なくなった事に気づいた攻略対象者がローズを賢明に探しに行ったのよね。そしてやっとの思いでローズを見つけて助け出したのが第二攻略者であるヨハネスだったのよね。その事がきっかけでローズはヨハネスとの距離が縮まるんだったわね)


アイラは前世の記憶を辿りながら考えていた。


(ただ何故だがこの世界のローズさんはお兄様との距離が離れるどころか縮まっているのよね。それに…ヨハネス様も殿下もローズさんの存在を気にしているはずなんだけれど何故か二人がローズさんに近づく気配がないのよね。ん〜この行事で何かが変わってくるのかな〜。イベントだとわかっているんだからローズさんに何か危険が及ばない様に私も気をつけて見ておかないといけないな。今回は私自身も気をつけといた方がいいのかな。学園での鉢植えと階段の件は間違いなく私を狙ったものだろうし。裏でジェシカが手を引いている可能性も0じゃなさそうだしね。どうしてモブキャラである私が標的にされているから不明だけど気をつけるに越したことはないよね)


アイラは一人頭を悩ませながらそんな事を考えていた。


そうこうしているうちに現地へと到着したのだった。


到着した生徒たちは森の中にある宿舎の一階にて出席確認の為の受付を済ませてオリエンテーションの時間までは大広間で待機していたのだった。


アイラとカイルは受付を済ませると大広間で待機していた。


「アイラはカミラと行動するんだよね?アイラ達は今年はどの項目を選んだのかな?」


カイルがアイラへ尋ねた。


「今年はカミラと相談して項目の二番を選びました」


アイラが応えた。


「項目の二ということは自然を感じる為の項目だね。確か夕食は自分達で作るのではなかっかい?」


カイルは項目の二番を思い出しながらアイラへ言った。


「はい。そうです。今年は夕食を自分達で作り自然豊かな野外で食べようということになりました」


アイラはにこりと微笑みながら応えた。


「アイラが最近は自宅でもお菓子作りなどをしているのは知っているけど本当に大丈夫かい?毎年項目の二番目は平民の学生達ばかりだと記憶しているけど」


カイルは心配げな表情でアイラへ言った。


「お兄様…心配して頂いてありがとうございます。ですが大丈夫ですので。むしろ楽しみで仕方ありません。普段はなかなか出来ない経験ですし分からない事は聞けばいいのですから。普段はあまり平民の生徒の方たちとお話する機会がありませんのでこの機に仲良くなれたらなとも思いますしね」


アイラは笑いながらカイルを安心させる様に言った。


(前世では一般市民だったんだからむしろ平民の学生達と過ごす方が気楽だしね。それにあの下駄箱に入ってた紙に書いてあった事を考えたら殿下やヨハネス様との距離は置いたほうがいいだろうしね。二人に迷惑はかけられないしね)


アイラはカイルに説明しながらそんな事を考えていた。


「そうか。アイラはその様な事まで考えて選んだんだね。でも何かあればすぐに私のところに言いに来るんだよ?私はローズと項目の一番を選んだから項目一番の場所にいるからね」


カイルはアイラの言葉を聞きふっと笑みをこぼした後に真剣な表情になり言った。


「はい。ありがとうございます。お兄様」


アイラはニコリと微笑みながら応えた。



その後、続々と学生たちが集まった。


そして、高等部・中等部と別れ更に項目別に別れ整列した。


アイラとカミラは項目二番の列へと並んだ。


(やっぱり項目二番を選んだ貴族は私とカミラだけのようね。後は平民の学生たちばかりのようね。まぁ平民の学生達は貴族の生徒たちと同じ項目を選んで息の詰まる様な時間なんて過ごしたくないもんね)


アイラは列に並んでいる学生達を見てそんな事を考えていた。


「ねぇアイラ。項目二番を選んだ貴族の学生は私達だけの様だけど本当に大丈夫かしら」


カミラが不安げな表情で小声でアイラへ耳打ちした。


「大丈夫よ。行事という名目のお茶会に参加するよりこっちの方が断然楽しめるわよ。私が一緒だから心配しないで」


不安げな表情のカミラを安心させる様に笑顔で応えた。


「うん。そうだね」


カミラはアイラの言葉を聞き頷きながら笑顔で応えた。





その後、先生からの注意事項などの話が終わると各項目ごとのオリエンテーションが開始された。


項目一番の方では女子学生の黄色い声が飛び交っていた。


それもそのはずで、、


項目一番にはカイル、ヨハネス、レオンがいたからだった。


カイルはローズの手をしっかりと握り周りにそれを見せつけ牽制していた。


ヨハネスとレオンも黄色い声など無視している様だった。


(相変わらずお兄様もだけど殿下とヨハネス様は人気ね。あのように無視をしても黄色い声は止まないだもんね。大変ね)


アイラはそんな光景を見て同情するかの様な目で見ながら考えていた。


そんな光景を横目に見ながらアイラとカミラは項目二番のオリエンテーション場所へ向かったのだった。


アイラ達は軽い登山をする事になっていた。


項目二番を選んだ人数はアイラとカミラを含めて八人だった。


この八人はすべて中等部の学生だった。


登山ルートは二箇所あり男女で分かれての登山だった。


女子生徒はアイラとカミラと平民の学生二人の四人だった。


四人は早速登山を開始した。


(この行事はプリラブのイベントだけどモブキャラであるアイラの場面なんて出てこなかったからこんな登山ルートがあるなんて知らなかったけどとてもいいルートね。前世でよしみと行った山を思い出すわね)


アイラは歩きながら木々を見てそんな事を考えていた。


その時、、


「きゃっ」


アイラとカミラの後ろを歩いていた女子生徒の一人が声を出した。


声に反応したアイラとカミラはすぐさま後ろを振り向いた。


どうやら女子生徒の一人が石に引っかかり転けたようだった。


「あの、大丈夫ですか?」


アイラが転んだ女子生徒へ声をかけた。


「あ、はい。大丈夫です」


転けた女子生徒はアイラに声をかけられると少し気まずそうな表情で応えた。


「どうかしましたか?もしかして立てない程の怪我をしたのですか?」


アイラは気まずそうにする女子生徒の様子を見て心配そうな表情で言った。


「いえ、そういう訳ではないのですが、そのどうやら転けた表紙にスカートの横の部分が破けてしまったようで」


女子生徒が苦笑いを浮かべて少し恥ずかしそうに言った。


「え?スカートがですか?!」


アイラが驚き言った。


そんなアイラへ女子生徒が頷いた。


「嫌でなければ私が破れた部分を繕いましょうか?応急処置の様になってしまいますが」


アイラが女子生徒へ提案した。


「え?繕うですか?」


女子生徒はアイラの言葉に驚き言った。


「はい。あっ無理にとは言いませんが破けたままだと進むのも戻るのも大変かと思うので」


アイラは驚いた女子生徒を見て慌てて言った。


「アイラの裁縫の腕はとてもいいのです。だからアイラに繕ってもらう事をおすすめしますわ」


カミラが横から女子生徒へ言った。


「カミラ」


アイラがカミラへ言った。


「わかりました。でしたらその、、お願いしてもよろしいですか?」


女子生徒がもじもじしながらアイラへ言った。


「はい!任せて下さい。」


アイラは笑顔で応えた。


そして、アイラは近くにあった大きめの岩へ女子生徒を座らせた。


そして、アイラは自分の鞄の中から携帯用として用意していた裁縫道具を出すと手際よく破れたスカート部分を繕っていった。


あっという間にスカートは綺麗に繕ったのだった。


「はい、出来ました。これで下山するまでは大丈夫だと思います。下山したら替えのスカートに履き替えて下さいね」


アイラは笑顔で女子生徒へ言った。


「ありがとうございます。破けた部分がわからなくなる程です。本当に助かりました」


女子生徒は驚きの表情を見せるも笑顔でアイラへお礼を言った。


「いえ。このくらいはお安い御用ですので」


アイラは笑顔で応えた。


「私の様な平民の者に親切にして頂いて申し訳ないです」


女子生徒は申し訳なさそうな表情でアイラへ言った。


「そんな。困っている時に身分など関係ありません」


アイラは慌てて言った。


(私だって元々は前世で一般人だったわけだしね)


アイラは女子生徒に言いながらそんな事を考えていた。


「そう言って頂きありがとうございます」


女子生徒はホッとした表情で言った。


「えっと、お二人は隣のクラスの方ですよね?よろしければお名前をお伺いしてもいいですか?」


アイラが女子生徒二人へ尋ねた。


「はい。私はセナといいます」


女子生徒の一人が応えた。


「私はミサといいます」


もう一人の女子生徒が応えた。


「セナさんとミサさんですか。私は二人も一緒にこの行事を楽しみましょうね」


アイラが女子生徒二人へ笑顔で言った。


「「はい」」


そんなアイラに少し戸惑いながらもセナとミサは笑顔で頷きながら応えた。


「よし!では改めて登山を再開しましょう!」


カミラが笑顔でアイラとセナとミサへ言った。


「えぇ」


「「はい」」


アイラ達が笑顔で頷きながら応えた。


そして、四人は登山を再開させた。


登山を終えた後は昼食を摂って昼からはまた別のオリエンテーションへ参加した。


アイラ、カミラ、セナ、ミサの四人は時間を過ごすうちにすっかり仲良くなっていたのだった。


そして、夕食の時間が近づいた。


項目二番の夕食は一番を選んだ生徒ととは別で夕食を自然の中で自分達で作って食べるという形式になっていた。


平民の生徒が項目二番を選ぶ理由はそこにもあったのだった。


平民の生徒達は自分達で料理を作ることが日常茶飯事な為に変に貴族の生徒と食事を共にするよりも遥かに気楽だったからだ。


項目二番を作ったのも学園側の配慮でもあったのだ。


項目二番の夕食作りの場所は宿舎とは別の場所に備えられていた。


食器に調理器具に食材は全て揃っているのだった。


調理場所で別行動をしていた男子生徒達と合流して夕食準備を始めたのだった。


(前世でいうところの野外活動行事みたいな感じがして懐かしいな。小中共に楽しみにしてた行事だったもんな。まさか現世でも体験できるなんて)


アイラは前世を思い出してそんな事を考えながら野菜を切る作業をしていた。


「アイラ様はとても手際がいいんですね。普段から料理をしている私達より手際がいいので驚きです」


セナがアイラの作業を見て驚きと感心の表情を浮かべて言った。


「そうですか?あ、私昔から料理に興味があったのでよく家でこっそりとシェフに頼んで料理を作らせてもらっていたからですかね。ハハ」


アイラはセナに言われると苦笑いを浮かべて誤魔化すかの様に応えた。


(そりぁまぁ前世では普通に家事してたからね。料理が出来て当たり前なのよね。ハハ。そんな事絶対言えないけどね)


アイラはセナに応えながらそんな事を考えていた。


「何だか…貴族の方でも料理をされたりするのだと思うと少しホッとした気持ちになります」


セナが少し照れくさそうにモジモジしながらアイラへ言った。


「本当に。私達平民からしたら貴族の方々は雲の上の様な存在でもあります。ですが、アイラ様やカミラ様と過ごしているととても安心できる様な…上手く言えませんが心から空気を楽しめるのです」


ミサも少し照れくさそうな表情で言った。


「ミサさん、セナさん」


アイラは二人の言葉が嬉しくて胸がキューっとなる感覚を覚えながら言った。


「何だかそんな事言われたとないから照れてしまうわね」




カミラは照れ笑いを浮かべて言った。


「本当ね」


アイラは笑顔でカミラの言葉に頷きながら言った。


(本当に何だかこの感覚とても久しぶりだな。前世だろうが現世だろうが関係なく嬉しい事を言われるとほっこりするわ。プリラブではモブキャラアイラのこんなストーリーなんて当たり前だけどなかったけどモブキャラも捨てたもんじゃないな)


アイラはそんな事を考えながら心がほっこりとなるのを感じたのだった。


「あっ!そうだわ!皆さんよろしければ夕食は外で食べませんか?外にはちょうど机と椅子がありますので近くで焚き火を焚きながら食事をするのもいいのではないかと思うのですがどうですか?」


アイラはハッと思いついた様な表情でそこにいた皆へ尋ねた。


「うん。なかなかいい案ね。外でこうして皆で食べる機会なんて滅多にないんだし皆との良い思い出にもなりそうだしね」


カミラはアイラの言葉を聞いて笑顔で言った。


「私も賛成です。皆でワイワイしながら食べるご飯は楽しいので」


「私も同じく賛成です。とても楽しそうです」


セナとミサも笑顔で言った。


「そう仰るのでしたら僕も賛成です」


「僕も異論はありません」


「僕もです」


「僕も賛成です」


他の四人の男子生徒達も少し考えた末に頷きながら応えた。


「皆さんありがとうございます。では、外で夕食を食べましょう」


アイラは嬉しそうに笑みを浮かべて皆へ言った。


そして、、


夕食が完成すると食事を外の机へと運んだ。


男子生徒達が机から少し離れた場所に焚き火をつけた。


その後、皆で席に座り食事を始めたのだった。


男子生徒達も最初はアイラとカミラに対してぎごちない表情と態度だったがアイラとカミラがとても話しやすい人達だと気づくといつの間にか打ち解けて話をしていた。


(楽しいな。モブキャラだろうと貴族令嬢に転生した訳だから元々一般人の私には少し堅苦しくさを感じた事もあったけどこうして気兼ねなく笑って楽しい時間を過ごせるって嬉しいな。このまま楽しい時間を過ごして行事が終わるといいな)


アイラは賑やかの目の前の光景を見て嬉しそうな表情を浮かべながらそんな事を考えた。


食事がある程度済むとアイラは手作りのお菓子をデザート代わりに机に並べた。


アイラはクッキーとマドレーヌとパウンドケーキを作ってきていたのだった。


カミラを含め皆アイラのお菓子を口にしてあまりの美味しさに感動していたのだった。


そんな皆の姿をアイラは微笑ましく見ていたのだった。


その時アイラはふと一人の男子生徒の顔をじっと見た。


そして、その男子生徒を見てハッとなった。


「あの、もしかしてあなたは少し前に階段で助けて下さった方ですか?」


アイラは目の前に座っていた男子生徒へ声をかけた。


「はい。そうです。覚えていて下さったのですね」


男子生徒は少し照れくさそうに応えた。


「もちろんです。バタバタと作業をしていたのでじっくりとお顔を見るタイミングがなかったので今気づいたのですが。その節は本当にありがとうございました。本当に助かりました」


アイラが男子生徒へ改めてお礼を言った。


「い、いえ。当然の事をしたまでですし」


男子生徒は少し照れくさそうに応えた。


「それでもあの時にあなたが助けて下さらなかったら私は今日の行事にも参加できていなかったかもしれませんし」


アイラが男子生徒へ言った。


「そう言ってもらえると助け甲斐がありましたね」


男子生徒が笑みを浮かべて言った。


「はい」


アイラも笑顔で言った。


その時だった、、


「どいう事?アイラが助けてもらったって」


アイラの後ろから聞き覚えがある声がした。


アイラは咄嗟に後ろを振り返った。


振り返った先にいたのはレオンとヨハネスだった。


「え?!で、殿下とヨハネス様?!」


アイラはそこにいた二人を見てとても驚いた表情で言った。


他の学生達もすぐに椅子から立ち上がりレオンとヨハネスへ礼をした。


「ねぇ。先程の話は一体何の話なの?」


ヨハネスが目を細めながらアイラへ尋ねた。


「えっと、、何のお話でしょうか?」


アイラは目を泳がせながら誤魔化す様に応えた。


(ヨハネス様に私が階段から落ちそうな話なんてしたらお兄様の耳にもその話が入るしまた絶対に面倒な事になるんだから)


アイラはヨハネスに応えたながらそんな事を考えていた。


「私も是非耳にしたい話だが?」


レオンも目を細めながらアイラへ言った。


「殿下まで一体何を仰っているのか」


アイラは苦笑いを浮かべて誤魔化す様に応えた。


「アイラが話してくれないならそこの学生に聞くまでだけど」


ヨハネスがアイラを助けた男子生徒をちらりと見ながら言った。


「え?!そ、それはその」


アイラがヨハネスの言葉に驚き言った。


(そんな事したら彼が可哀想だわ。貴族、それも爵位の高い方々に話なんて聞かれたら彼が萎縮していまうわ)


アイラはそんな事を咄嗟に考えた。


「わかりました。私からお話します」


アイラは諦めた様にヨハネスへ言った。


「そう?ではお願いするよ」


ヨハネスはにこりと笑みを浮かべて言った。


(もぉーー!何でこんな事になるのよー!)


アイラは心の中で叫んだ。


「お話する前に他の皆を先に休ませてあげてもよろしいですか?」


アイラはレオンとヨハネスへ尋ねた。


「あぁ、構わない」


「あぁ大丈夫だよ」


レオンとヨハネスが応えた。


「ありがとうございます。皆楽しんでたところ申し訳ないのですが調理場で休んでもらっててもいいですか?」


アイラはレオンとヨハネスへお礼を言うと他の学生達とカミラへ言った。


「分かったわ。とりあえず私達は調理場へ移動するわね。また落ち着いたら声をかけてね」


カミラが空気を察して応えた。


「カミラありがとう。申し訳ないけどよろしくね」


アイラは申し訳なさそうにカミラへ言った。


「大丈夫よ。気にしないで」


カミラはそう言うと他の皆と一緒に調理場へと移動した。


そして、その場に残ったアイラとレオンとヨハネスは椅子に腰掛けた。


「よし、では先程の男子学生との話を詳しく聞かせてくれるか?」


レオンがアイラへ言った。


「はい。わかりました」


アイラは頷きながら応えた。


そして、、


アイラはレオンとヨハネス自分が階段から足を踏み外して転げそうなところを先程の男子生徒が庇い助けてくれた流れの説明した。



アイラは悩んだ末に誰かに押されて階段から足を踏み外した事。


鉢植えが落ちてきた事。


下駄箱の中に入っていた紙の事。


について二人に話すのはやめておいた。


変に心配させて二人に迷惑がかかる事とカイルや家族に知らると色々と厄介事になると思っての事だった。


「うむ。先程の学生には感謝しなければならないな。アイラを助けてくれたのだからな。もしも彼が助けてくれてなければ今頃は大怪我をしていたかもしれないからな」


レオンがアイラの説明を聞いて何か考える様な表情で言った。


「殿下の仰る通りですね。その時に彼が助けなければ今頃アイラが大怪我をしていると思うとゾッとしますね」


ヨハネスがレオンの言葉を聞き言った。


「しかしアイラもおっちょこちょいな所があるのだな」


レオンはクスっと口角を上げながらアイラへ言った。


「ハハ。そうなのかもしれませんね」


アイラは苦笑いを浮かべて応えた。


(おっちょこちょいも何も後ろから押されただけなんだけどね)


アイラは応えたながらそんな事を考えていた。


「今後は階段をおりる際には足元にいつも以上に気をつけるんだよ?」


ヨハネスは心配そうな表情でアイラへ言った。


「はい。そうする事にします」


アイラは苦笑いを浮かべて応えた。


(今後は階段をおりる時は後ろを確認しておりるつもりです)


アイラは応えつつそんな事を考えていた。


「あの、ところでお二人は何故ここへ?」


アイラは疑問に思っていた事をレオンとヨハネスへ尋ねた。


(二人がここへ来たと知られる前に宿舎に戻ってもらえると助かるんだけどな。あの手紙の内容の事を考えると私といる事で二人へ迷惑はかけたくないもんね)


アイラはそんな事を考えていた。


「カイルからアイラが項目二番を選択したと聞いてな。どの様な事をしているのか見てみようと思ってんだよ」


レオンが応えた。


(本当はただアイラの顔を見たいだけだったのだが)


レオンは応えつつそんな事を考えていた。


「私も殿下と同じだよ。殿下とはここへ向かう途中にばったりと会ったんだ」


ヨハネスが応えた。


(アイラに会いたいと思ったのだがまさか殿下に遭遇するとはな)


ヨハネスは応えつつそんな事を考えていた。


「??そうなのですね。見ての通り項目二番を選んだ皆さんと共に一日楽しい時間を過ごす事が出来ました」


アイラは少し不思議そうな表情を浮かべるも応えた。


(二人共学園行事の内容に関心を持つなんてやっぱり偉い人達は違うわね。でも二人は確かこの行事でローズさんに構ってばかりだったはずだけど。項目一番の状況が分からないからあれだけどローズさんの事はいいのかな。それともお兄様とローズさんがいる姿を見るのが辛くなったのかな)


アイラはそんな事を考えていた。


「本当に楽しそうで何よりだよ。身分など関係なく皆で楽しそうにしている姿は遠くからでも見て分かるほどだったからね」


レオンが言った。


(男子生徒ととも楽しそうにしていて妬ける程にな)


レオンは話しながらそんな事を考えていた。


「本当に。楽しそうにしていて何よりだよ」


ヨハネスはにこりと微笑みながら言った。


(私もアイラと楽しい時間を過ごしたいというのに)


ヨハネス話しつつそんな事を考えていた。


「はい。あっ、それとこんな所で言うのも何なのですがミシンのお礼を直接言える場なので。お二人とも高価なミシンを贈って頂きありがとうございました。あの日はお二人には色々と手伝って頂いたにも関わらずあの様な素敵な物を頂いてしまって。何とお礼を言ったらいいのか。本当に本当にありがとうございました」


アイラはふとミシンのお礼を言うチャンスだと思い二人へお礼を言った。


「あぁ。お礼の手紙をカイルから受けったよ。あれくらいの事いつでも贈るさ。アイラが喜んでくれて何よりだよ」


レオンは優しい笑みを浮かべて言った。


(ヨハネスと同時に贈った事は未だに腑に落ちなかいがアイラが喜んでくれるならそれが一番だ)


レオンはそんな事を考えていた。


「私も手紙を受け取ったよ。こちらが好きで贈ったのだから気にしなくていいんだよ。これからはミシンを沢山使用してまた素敵な物を作るといいよ」


ヨハネスは笑みを浮かべて言った。


(殿下も同時に贈ったというのは気に食わないがまぁアイラが喜んでくれるのが一番だからな)


ヨハネスはそんな事を考えていた。


「本当にありがとうございました」


アイラは笑顔で再度二人へお礼を言った。


「あぁ。お礼ついでにこのお菓子を少し貰って帰ってもいいかい?」


レオンが机の上のお菓子を指さしてアイラへ尋ねた。


「え?お菓子ですか?!ですがそれは私が作ったものですので殿下のお口に合うかどうか」


アイラは慌てて応えた。


「私はアイラが作ったお菓子が食べたいから構わないよ」


レオンは笑顔で応えた。


「そうですか?それでしたら机の物は食べかけですのでこちらをお持ち帰り下さい」


アイラは??という表情を浮かべるもハッとなり近くに置いていたバスケットの中から新しいパウンドケーキを取り出してレオンへ差し出した。


「こちらは新しいものなのでご安心下さい」


アイラがレオンへ言った。


「そうなのかい?ではお言葉に甘えてこちらを頂くよ」


レオンは嬉しそうな表情を浮かべて言った。


「はい」


アイラは頷きながら言った。


「アイラ、私も良ければお菓子を持って帰りたいのだが?」


ヨハネスが笑みを浮かべてアイラへ言った。


「え?ヨハネス様もですか?」


アイラは驚き言った。


「あぁ。だめだろうか?」


ヨハネスは残念そうな表情で言った。


「いえ。だめではありません。でしたらヨハネス様にはこちらを」


アイラは慌てて応えたるとバスケットから新しいマドレーヌの詰め合わせを取り出してヨハネスへ差し出した。


「こちらも新しいものですのでこちらをお持ち帰り下さい」


アイラがヨハネスへ言った。


「ありがとう。では頂いて帰るよ」


ヨハネスは嬉しそうな表情でアイラへ言った。


(二人共甘いものが好きなのかしら)


アイラはお菓子を受け取り嬉しそうな表情をしている二人を見て考えていた。



その時、、


アイラは誰かの視線を感じてキョロキョロと周りを見た。


「アイラどうかしたのかい?」


レオンが急にキョロキョロしたアイラを見て尋ねた。


「あ、いえ。何でもありません。殿下もヨハネス様もそろそろ宿舎へお戻りになった方がよろしいかと思うのですが。宿舎の皆様も心配されるでしょうし私も…片づけを皆へ任せるわけにもいきませんので」


アイラは誤魔化す様に応えるとレオンとヨハネスへと言った。


「そうだな。急に我々が来てしまったからな。分かったよ。我々はそろそろ宿舎へ戻るとするよ」


レオンはアイラの言葉を聞き言った。


「ヨハネス我々は戻るとしよう」


レオンがヨハネスへ言った。


「はい」


ヨハネスは頷きながら応えた。


「では、アイラ我々は行くよ」


レオンがアイラへ言った。


「はい。お気をつけて」


アイラが言った。


そして、、


レオンとヨハネスは宿舎へと戻って行った。


(さっき何か視線を感じた様な気がしたんだけどな。気の所為だったのかな。ローズさんは今お兄様と一緒かな。プリラブのイベント通りならローズさんの身に危険が及ぶ可能性があるから心配だな)


アイラはレオンとヨハネスが去った後にそんな事を考えていた。


そして、、


アイラは調理場へ向かうと皆と片づけを始めたのだった。


片づけが終わると皆で宿舎へと戻った。


宿舎へ戻るとカミラ→アイラの順でお風呂を使った。


アイラがお風呂から出るとカミラの姿がなかった。


「カミラ?」


アイラは部屋にカミラが居ない事を心配に思い部屋から出てカミラを探した。


「カミラー!どこー?」


アイラは宿舎の一階を探していた。


「おかしいな。カミラどこ行ったのかな」


アイラは心配そうな表情で呟いた。


「カミラ様なら先程忘れ物をしたからと外の調理場へ行かれてましたよ」


アイラが心配していると声をかけられた。


声をかけてきたのは中等部の貴族の女子生徒達だった。


「調理場ですか?」


アイラが首を傾げながら尋ねた。


「ええ。ねぇ?あなた達も聞きましたよね?」


「えぇ。調理場に行くと言ってましたわ」


「えぇ。言ってましたわ」


一人の女子生徒が言うと残りの二人の女子生徒が応えた。


「そうですか。教えて頂いてありがとうございます」


アイラは女子生徒達にそう言うと急ぎ調理場へと向かった。


(カミラったらこんな遅くに一人で調理場に向かうなんて危ないのに)


アイラはカミラを心配しながら調理場へ急ぎ向かった。


アイラは暗い中小さなランプの光をと調理場への矢印の立て掛けを頼りに調理場へと走った。


しかし、アイラは途中で道が違う事に気づいた。


(あれ?調理場までこんなに遠かったっけ?それにこんな道だったかな。でも、矢印の立て掛けは確認したもんね)


アイラは道の途中で立ち止まりそんな事を考えていた。


そしてランプで周りを照らしながら辺りを見渡した。


「カミラー!!」


アイラはカミラの名前を呼んだ。


その時だった。


アイラが足を踏み外したのだった。


「えっ?」


アイラが言った。


それと同時に崖の様な場所からアイラは転げ落ちてしまったのだった、、

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