第13話週明けのアイラ
アイラが市に出店した休日が明けた。
アイラはいつもの様にとカイルと共に馬車で学園へと向かっていた。
「お兄様お願いがあるのですが」
アイラが馬車に揺られながらカイルへ言った。
「どうしたんだ?」
カイルが言った。
「あのこちらの手紙をそれぞれ殿下とヨハネス様へお渡し頂けないでしょうか」
アイラは鞄の中からニ枚の手紙を取り出すとカイルへ差し出しながら言った。
「殿下とヨハネスへ手紙?」
カイルは差し出された手紙を見ながら不思議そうな表情で言った。
「はい。一昨日のミシンの件でお礼をお伝えしたいと思いまして。直接お礼を申し上げたいところですが学園内でお二人にお会いするのはお二人にご迷惑になるでしょうしお手紙でしたらお兄様伝えに渡して頂けますので」
アイラは少し困った表情を浮かべてカイルへ説明した。
(はぁ。ミシンが手に入ったのはとても嬉しいことなんだけど…贈ってくれたのが殿下とヨハネス様だって事が問題なのよね。何故私にもあの様に高価なものを贈ってくれたのかしら。サプライズにしても度を超えてるもの。私ったらミシンのお店でそんなに物欲しそうにしてたのかしら)
アイラはカイルに説明しつつそんな事を考えていた。
「あぁ。その件の事か。一体殿下もヨハネスも何を考えているのやら。さすがに私もアイラから話を聞いて驚いたよ」
カイルはアイラからの話を聞いてアイラのいう事を納得した様な表情で言った。
「私にも何がどうなっているのかさっぱりなんです」
アイラは悩む様な困った様な表情を浮かべながら言った。
「まぁとにかく二人への手紙は私が預かり殿下とヨハネスには渡しておくよ」
カイルがアイラへ言った。
「ありがとうございますお兄様。よろしくお願いします」
アイラがカイルへお礼を言った。
「あぁ。ああそうだ、ローズがアイラから貰った押し花のしおりをとても喜んでいたよ」
カイルが話を変える様に言った。
「本当ですか?!それは良かったです」
アイラは笑顔で言った。
「ローズとアイラが仲良くしてくれているから私はとても嬉しく思っているよ」
カイルは嬉しそうにアイラへ言った。
「私もローズさんと仲良くさせてもらっている事が嬉しいです。ローズさんは本当に何といいますか存在が癒やしといいますか。見ているだけで気持ちがほっこりするのです」
アイラは微笑みながら言った。
(これは本音なのよね。さすがゲームのヒロインだけあって前世でゲームしている時も何度ローズさんの笑顔と心遣いにほっこりしたことか。だからこそ悪役令嬢ジェシカの度重なる嫌がらせが許せなくて絶対ジェシカの邪魔を上手くかわしてミッションをこなしていったのよね)
アイラはカイルに話しかけながらそんな事を考えていた。
「とてもよく解るよ。私も本当にローズと出会いローズと共に過ごして本当にローズには癒やされているしローズの一つ一つの仕草や言動が愛らしいんだ」
カイルは少し照れた様にでも惚気ける様にアイラへ言った。
「ふふ。お兄様ったら。完全に惚気けではありません」
アイラはカイルを見てクスクスと笑いながら言った。
「はは。アイラの前だけだどね私がこんな事を言うのは」
カイルもクスクスと笑いながら言った。
「将来はローズを妻にと考えていいるんだ。ローズも私の妻になりたいと言ってくれているんだよ。ローズの家は爵位は低いが申し分ない令嬢だ。きっと父上と母上もローズが妻になる事を認めてくださるだろう」
カイルは優しく微笑みながらアイラへ言った。
「お二人はきちんと先の事まで考えているのね」
アイラがカイルへ言った。
「あぁ。もしローズが我が侯爵家へ嫁いできたらローズはアイラの義姉となる。だが、二人なら仲の良い姉妹になりそうなのが今から想像できるよ。その時がきたらアイラはローズが我が侯爵家に嫁いでくる事を歓迎してくれるかい?」
カイルがアイラへ尋ねた。
「ええ。もちろんよ…お兄様」
アイラは優しくにこりと微笑みながら言った。
「そ、そうか。ありがとう。アイラがそう言ってくれると何だかとても心強い気持ちになるよ」
カイルは笑顔でアイラへ言った。
「ふふふ」
アイラはクスクスと笑った。
(本当に今の状況だけ見たらお兄様とローズさんは本当に仲が良くてとてもいい感じなのよね。今の状況を見るとローズさんがこの先ガルバドール侯爵家へ嫁いできても不思議じゃないもね。ただ悲しかな。お兄様とローズさんが生涯を共に歩める未来はプリラブMにはないのよね。あぁこんな幸せそうな表情をしているお兄様を見てると先を知っているからとても胸が痛むわ)
アイラはカイルの幸せそうな表情を見ながらそんな事を考えていた。
そうこうしていると馬車が学園へ到着した。
アイラとカイルはそれぞれの校舎へといく所で別れた。
アイラは中等部の校舎へ向かい自分の教室へと向かっていた。
(あぁ〜それにしても週末は本当に楽しかったな。やっぱり前世でもそうだったけど私はイベント出店が好きだわ。まぁこの世界ではイベントとは呼ばないけどハンドメイド品を販売出来る場所なら同じ様なものよね。この世界の市はハンドメイド品を販売している人は少なかったようね。この世界での初めての出店にしては完売だったし上出来よね。これからも頻繁に出店したいわね)
アイラはそんな事を考えながら教室へと向かって歩いていた。
そしてアイラは教室へ到着した。
「アイラおはよう!」
「カミラ!おはよう!」
カミラが教室へ入ってきたアイラへ気づき挨拶をするとアイラもカミラへ挨拶をした。
「カミラ、一昨日は顔を出してくてありがとね!」
アイラが笑顔でカミラへ言った。
「こちらこそ!とても素敵な贈り物をありがとう!貰った日からロジャー様と共に着けさせてもらってるわ!本当にとても素敵よ!」
カミラは嬉しそうに笑顔で言った。
「ふふ、気に入ってくれて良かったわ!」
アイラも嬉しそうに笑顔で言った。
キーーンコーーン!
カーンコーン!
その時チャイムが鳴った。
「さっ、席につきましょう」
アイラがチャイムを聞いて慌てて言った。
「ええ」
カミラは応えると自分の席へとついた。
それからあっという間にお昼に休みになった。
アイラとカミラはいつもの様に中庭のテラスへ向かって歩いていた。
中庭に出るには一度校舎から出る必要がある為二人はいつもの様に校舎から出て中庭へ向かっていた。
その時だった、、
ガシャーーーン!
アイラとカミラの後ろの方から何かが割れる大きな音がした。
アイラとカミラはその音に驚きすぐに後ろを振り向いた。
「えん。鉢植?」
カミラが自分達のすぐ後ろに落ちて
割れている鉢植えを見て表情を歪ませて言った。
「どうしてこんなところに鉢植えが?」
アイラも表情を歪ませて呟いた。
そしてアイラは何気なく上を見上げた。
(え?ちょっと今あそこに人影が見えた気がしたんだけど)
アイラは上を見上げた瞬間に校舎の四階の窓の辺りに人影の様なものを見て眉をひそめながら考えていた。
(まさか誰かが上から鉢植えを私達に向けて落としたってことなの?)
アイラはゾッとした表情を浮かべてそんな事を考えていた。
「もしも少し歩くのが遅ければこの鉢植えは私達の上に落ちていたってことなの?」
カミラが顔を青くさせて少し声を震わせながらアイラへ言った。
「えぇ。そのようね。一歩遅かったら私達の真上に落ちていたわ」
アイラは表情を歪ませて言った。
「そんな。どうしてこんな」
カミラはアイラの言葉を聞きとても動揺しながら言った。
「わからないわ。カミラ怪我はない?割れた破片なんかが飛んできてないわよね?!」
アイラはハッとなりカミラへ尋ねた。
「え?えぇ。大丈夫よ。落ちて割れた音に驚いただけよ」
カミラは頷きながら応えた。
「そう。良かったわ」
アイラはホッとした表情で言った。
「一先ず今日の昼食はテラスで食べるのはやめておきましょう」
アイラがカミラへ言った。
「そ、そうね。そうしましょう」
カミラが慌てて言った。
「危ないからこの事は先生に報告して片付けてもらいましょう」
アイラがカミラへ言った。
「えぇ。そうしましょう。一先ず早くにこの場から離れましょう」
カミラは応えると顔を青くさせたままアイラへ言った。
「ええ」
アイラは頷きながら応えた。
そして、二人は昼食をとる前に鉢植えの件を先生へと報告しに行ったのだった。
落ちた鉢植えは先生が処理してくれる事になったのでアイラとカミラは教室へ戻り昼食をとったのだった。
午後の授業を終えたアイラは終礼の前に教員室へ生徒達に配布する手紙を取りに来てくれと先生から頼まれていなので教員室へと向かっていた。
(配布する手紙って来月に控えているカカオール学園中等部・高等部合同の学園行事についてのでしょうね。毎年この時期に行う行事。日本でいうところの林間みたいなものよね。私は今年で三度目の参加だけど一度目も二度目も楽しかったのよね。まぁ前世の記憶がない状態だけどね。今年はどうなるかしら。なんといっても今年の行事はプリラブMのイベントの一つなのよね)
アイラは歩きながらそんな事を考えていた。
(確か攻略対象の三人が何かとヒロイン・ローズの事ばかり気にして手伝ったりレクレーションの際には攻略対象の三人がローズとペアを組もうと必死になったりととにかくローズ…ローズとなっている事に悪役令嬢・ジェシカかが嫉妬してローズへイタズラをするのよね)
アイラは前世でのゲームのストーリーを思い出す様に考えていた。
(ん〜ジェシカかどんなイタズラをしたんだったかな)
アイラが悩み考えていた。
その時だった、、
ドンッ!!
階段をおりようとしていたアイラの肩を後ろから誰かが押したのだった。
「きゃっ」
アイラは思わず驚き声を出した。
(まずい落ちるわ)
アイラは後ろから押されバランスを崩した瞬間に思った。
「危ない!」
アイラがそう思った瞬間誰かの声がした。
そして、声の主と思われる人物がアイラの体を支えた。
「だ、大丈夫ですか?!」
アイラを支えてくれたのは男子生徒の一人だった。
その男子生徒が慌ててアイラへ声をかけた。
「は、はい。大丈夫です。お陰で助かりました」
アイラは軽く頷きながら男子生徒へ応えた。
「そうですか。それならば良かったです」
男子生徒がホッとした表情でアイラへ言った。
「はい。助けて頂き本当にありがとうございました」
アイラは男子生徒へ頭をぺこっと下げてお礼を言った。
「いえ。今後は足を滑らせない様に気をつけて下さいね」
男子生徒が心配げな表情でアイラへ言った。
「はい。そうならない様に気をつけますね」
アイラは少し間を空けてからにこりと笑みを浮かべながら男子生徒へ言った。
「はい。では私はこれで」
男子生徒がアイラへ言った。
「はい」
アイラが言った。
男子生徒と別れたアイラは一階におりて教員室へ向かった。
(あれは足を滑らせたんじゃないわ。後ろから急に誰かに肩を押されたのよ。だからバランスを崩してしまったのよ。先程の方がたまたま支えてくれたから無傷だったけどもしあの方がたまたま通りかからなかったら今頃は)
アイラは教員室へ向かい歩きながら表情を少し歪めながら考えていた。
(一体誰が?!でも肩を後ろから押された事ではっきりとした事があるわね。昼休みの鉢植えもきっと故意に上から鉢植えを落としたのね)
アイラは目を細めながらそんな事を考えていた。
(でもどうして私なんだろう。この間悪役令嬢のジェシカに恥をかかせてしまったから?それで私に嫌がらせ?ん〜でもここは中等部の校舎だからジェシカやジェシカの取り巻き令嬢達が居るわけないしな。ん〜でも私にこんな事してくるとしたらジェシカしか考えられないしな。この間の事を相当根に持ってるとしたらこんな事をされるのが腑に落ちるもんね)
アイラは自分に意地悪をしてきた人物について頭を悩ませながら考えていた。
(でも狙いが一先ずカミラではないということよね?それだけでも安心だわ。カミラはそれでなくてもこの間のジェシカ達に呼び出された時から怖い思いをした上にさっきの鉢植えだもんね。これ以上カミラに怖い思いはして欲しくないもんね)
アイラはそんな事を考えて少しホッとした表情を浮かべた。
(私って前世の時もそうだったけどどうも自分の事より人の事を考えがちなのよね。まぁそればかりはそうなってしまうんだから仕方ないわよね)
アイラはふとそんな事を考えていた。
そうこうしているとアイラは教員室へ到着した。
アイラは教員室で先生からクラスの人数分の手紙を受け取ると教室へと戻った。
教室に戻りクラスの全員に手紙を配り終えたアイラは帰り支度を始めた。
(あれ?そういえばさっき階段で助けてくれた方って同じクラスではなかったのね。きっと隣のクラスの方なのね)
アイラは帰り支度をしながらふとそんな事を考えていた。
そして、終礼が終わるとアイラとカミラは下駄箱へと向かい二人はそこで別れた。
「アイラまた明日ね!」
「えぇ。また明日!」
カミラが笑顔でアイラに言うとアイラも笑顔でカミラへ言った。
(カミラ良かった。昼間に鉢植えの件で少し怖くなったみたいだったけど今はもう大丈夫そうね)
アイラは笑顔で挨拶をしたカミラを見てそんな事を考えていた。
カミラが帰るを見届けたアイラは靴を履き替えようと下駄箱から外用の靴を取り出した。
パサッ、、
アイラが靴を取り出すると一枚の紙が落ちた。
「何かしら」
アイラが落ちた紙を拾いながら呟いた。
「これは?!」
アイラは拾った紙を見て呟いた。
"あなたが王太子殿下とヨハネス様と一緒にいた事で学園では変な噂が立っている…。これ以上お二人へ迷惑をかけるな!"
アイラが拾い上げた紙にはそう書かれてあった。
アイラへ宛てた手紙のようだった。
もちろん書いた者の名前などは記載されていたなかった。
(殿下とヨハネス様に変な噂ですって?変な噂って何のこと?私が一緒に?)
アイラは手紙を見て内容の意味が分からず考えていた。
(あぁ!もしかして週末の王都の市で殿下とヨハネス様と一緒にいるところを学園の誰かに見られていたってこと?!そういうことよね?!)
アイラは悩みながら考えているとハッとした表情を浮かべて思い当たる節を思いていた。
(そうに違いないわ。学園内では女子生徒に対して特別な扱いをしないで有名なお二人だもんね。それなのに市でお二人に手伝って貰った事がまさかこんな事態になるなんて。あぁ、どうしよう私のせいでお二人に変な噂がたってしまっているなんて。どうしようどうしたらいいのかしら)
アイラは自分の考えにハッとなると困った表情を浮かべて更に悩み考えた。
(一先ず馬車でお兄様が待ってるから馬車には行かないとね)
アイラはそう考えると拾った紙を鞄にしまいカイルが待っている馬車へと急ぎ向かった。
アイラが馬車に着くとすでにカイルは馬車に乗っていた。
「お兄様お待たせしてしまい申し訳ありません」
「いいんだよ!気にしなくて。私もつい先程着いたばかりだから」
アイラはカイルが馬車の中へいるを見ると慌ててカイルへ謝りながら馬車へ乗り込んだ。
そんなアイラへカイルは優しく言った。
帰りまでの馬車内で二人は他愛もない話をしていた。
カイルは学園行事でローズと星を見る約束などをしたと嬉しそうにアイラへ話していた。
そんなカイルをアイラは微笑ましく見ていた。
(どうやら鉢植えの件お兄様は聞いてないみたいね。良かったわ。この間の頬を引っ叩かれた時だってなだめるのが大変だったから鉢植えの件を知ったらまたどうなるかとヒヤヒヤしていたのよね)
アイラはカイルの様子を伺いながらそんな事を考えていた。
(何だかすっかりお兄様とローズさんは学園でもいい関係を保ってるみていね。お兄様もヨハネス様と殿下同様に学園内では女子生徒に対して特別扱いはしない側だったのにローズさんと出会ってからはそれがひっくり返ったんだもんね。お兄様が学園内でローズさんが何もされない様にきっと守ってるのね)
アイラは嬉しそうに話をしてくるカイルを見て考えていた。
(でもそんな二人を間近で見ていて殿下もヨハネス様も平気なのかしら。ううん。平気な訳ないわよね。その上私のせいでお二人に変な噂が流れてるなんて。お兄様は何も言ってこないけどもしかしたらあえて私の耳に入ってはいけないと気を使って話してこないのかもしれないわね)
アイラは急に困った表情を浮かべて考えていた。
アイラは家に着いてからも色々と考え事をしていた。
しかし、考えれば考えるほど頭が混乱してしまい頭がパンク寸前になったアイラは考えるのを一旦やめてハンドメイドに没頭したのだった。
翌日から特にアイラの身には特に何も起こることはなかった。
特に何も起きる事もなく気づけばあっという間に学園行事の日が訪れてたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます