第9話急な呼び出し

アイラが第三の攻略対象者であるレオンと遭遇してから二日後、、



明日は学園が休みなのでアイラは一度家に戻り着替えを済ませてからすぐに王都の街へハンドメイドをするのに必要な物を買い足しに行っていた。


アイラはローズから聞いた街で月に一度開かれる市についての情報も街の人に聞いておきたかったのだった。



アイラは以前行ったハンドメイド用品を扱うお店へと足を運んだ。



アイラはこの日も沢山のハンドメイド用品に囲まれて幸せを感じながら購入する物を選んでいた。



(本当にここは最高の場所だわ。毎日でもここに足を運びたいくらいだわ)


アイラはそんな事を思いながらカゴへ必要な物を入れていった。



そして、会計時に店主の女性へ街で開かれる月一の市の事を尋ねた。


「少しお伺いしたいのですが」


アイラは女性へと言った。


「なんだね?」


女性はにこりと微笑み応えた。


「街で開かれる月に一度の市の事をお伺いしたくて。その市では自由にお店を出していいのですよね?」



アイラが女性へ尋ねた。



「あぁ。そうだよ。月に一度開かれる市では沢山の人が自分の売りたい物を用意して各自販売しているんだよ。その市に参加してみたいのかい?」



女性は丁寧に市の事をアイラへと教えてくれた。


そして、アイラに市に参加するのかと尋ねた。



「教えて頂きありがとうございます。初めてなのですが参加してみようかと思っているのです」



アイラは女性へお礼を言うと市に参加しようと思っている事を伝えた。



「そうなのかい?それはいいじゃないかい。本当に沢山の店が出るから沢山の人が訪れる市なのよ。きっと楽しめるわね」



女性は笑顔で言った。



「本当ですか?それは楽しみです」



アイラは笑顔で言った。



「あぁこれ良かったら持って帰るといいよ。市が出される場所の地図が書いてあるから。当日は本当に人が多いから時間はなるべく早く来ておいた方が混雑を避けられるよ」


女性は引き出しから一枚の紙を取り出すとアイラへ手渡しながら色々と教えてくれた。


「わぁ〜。ありがとうございます。とても助かります」


アイラは紙を受け取ると笑顔で女性へお礼を言った。


「当日は楽しんでおいで」


女性がアイラへ優しく言った。


「はい。ありがとうございます。またお店にもお伺いしますね」


アイラは笑顔で女性へ言うと店を後にしたのだった。


アイラは店を出て馬車が待ってる場所まで行く道中街を歩く人々の服装や持ち物、髪の毛などを見ていた。



(この国の王都の街ではあんな感じの服や鞄に髪飾りが主流のようね。よし!市で販売する物は街で流行ってそうなデザインを土台に作ることにしましょ)


アイラは歩きながら街の人々を見て考えていた。


そして、その後アイラは馬車にのり自宅へと戻ったのだった。




アイラが家に着くなりカイルがアイラの元へと慌ててやって来た。



「アイラ!」


カイルが慌てた様子でアイラへ声をかけてきた。


「お兄様?ただいま帰りました。そんなに慌ててどうかされましたか?」



アイラは慌てるカイルを見て少し驚いた表情を浮かべるとカイルへ尋ねた。


「あぁ、おかえり。そのアイラへ話があるから荷物はジャンに任せてすぐに応接室へ私と一緒に来てくれ」


カイルが慌てたままアイラへ言った。


「??分かったわ」


アイラは慌てるカイルへ??という表情を浮かべながらも応えた。


そして、アイラとカイルは応接室へと向かった。


応接室へ着き中へ入るとそこにはスミスとマリがいた。


「お父様とお母様?あ…ただいま帰りました。えっと、何故お父様とお母様も?」


アイラは部屋の中にスミスとマリがいる事を不思議に思いながらも二人へ尋ねた。


「あぁ、おかえり。私からアイラへ急ぎ伝える事があるから一先ずそこへ座りなさい」


スミスはどこか緊張した面持ちを浮かべながらアイラへと言った。


「分かりました」


スミスに言われたアイラはスミスの表情を見て何か深刻な事でも起きたのかと不安げな表情を浮かべながら応えた。



そして、アイラとカイルはスミスとマリの前へと座った。



「あの、それでお父様私にお話というのは?」


アイラが不安げな表情のままスミスへと尋ねた。


「あぁ、それがだな。王太子殿下から手紙を頂いたんだがその手紙には王太子直々にアイラを王宮へ招待したいと書かれていたんだよ」


スミスが真剣な表情を浮かべながらアイラへ伝えた。


「はい?王太子殿下が私をですか?あの…意味がいまいちよく分からないのですが」


アイラはスミスの言葉に驚いた表情を浮かべて言うも意味が分からないという表情になり言った。



「いや我々も急な事で驚いていてな。カイルが学園で殿下から手紙をお預かりして持って帰って来てくれたのだよ。手紙には学園が休みの明日の午前中にアイラを王宮へ招待する是非、招待を受けて欲しいとだけ書いてあるんだよ。何故アイラが殿下から直々に招待されたのか理由などが書かれていない様なんだがアイラ殿下とお会いになったのか?!」


スミスは少し困った表情を浮かべながらアイラへと流れを説明した。


「会ったといいますか一昨日下校前に学園の講堂裏の花壇でたまたま少しお会いしただけなのですが」


アイラはスミスに聞かれて思い出す様に応えた。


(一体どういう事なのかしら。何故急に殿下が私を?ローズさんではなくて?私何か殿下に粗相でもしたのかしら)


アイラはスミスに応えながらも頭を混乱しかけながら考えていた。


「そうか。呼び出しではなく招待と記載してあるから悪い事ではないと思うが」


スミスがアイラの話を聞き考える様な表情を浮かべながら言った。


「そうだといいのですが。あの、ちなみに王宮へは私一人で行かなければならないのですか?」


アイラは不安げな表情でスミスへと尋ねた。


「あぁ。アイラの名前しか記載がない様だから恐らくはアイラ一人で行く事になるだろうな」


スミスは困った表情で応えた。


「そんな。せめてお兄様についてきてもらうのはだめですか?」


アイラは懇願する様な目をしてスミスへ言った。


「ん〜難しいところだな」


スミスは困った表情で応えた。


「そんな」


アイラはスミスの応えにしょぼんとした表情で呟いた。


「アイラそれ程心配はいらないと思うよ?殿下はしっかりしたお方だなら招待するからにはきちんと理由があるだろうからね。理由は記載されていないみたいだけれど悪い話ではないだろうからあまり緊張しすぎなくてもいいと思うよ?」


カイルがしょぼんとするアイラへと優しく言った。


「うん。分かったわ。お兄様」


アイラはカイルの話を聞きしょぼんとした表情ながらも頷きながら応えた。


(殿下が私を招待する理由がわからないから困惑するわ。あの花壇では殿下とはほぼ会話はしていないししいて言えばハンカチを貸したことくらい。後はローズさんと話しただろうから。ん?もしかして私を王宮へ招待して私からローズさんの話を聞きたいのではないの?学園だと周りの目があるしで王宮に私を呼んだんだわ。きっとそうだわ!あの後、きっとローズさんと話をした事でローズさんへ心が動き始めたんだわ…。これは第三の攻略が始まったのかもしれないわ)


アイラはカイルの話を聞くも不安が拭えないままそんな事を考えていた。


その時、アイラは先日ローズとレオンが出会った事を思い出しローズのレオンへの攻略が始まったと推測しながら考えていた。


(そうだとするなら私を呼び出した理由も納得だわ。私とローズさんが話をしていた事で私ならローズさんの事を色々と知っているとふんだに違いないわ。はぁ〜何か粗相などしていたのかと心配になったけど心配して損したわ。殿下が私にローズ様の事で聞きたい事があるだけなのなら王宮へ行くのもどうってこともなさそうね)


アイラは自分の考えに納得するかの様に考えていたのだった。


「ではこの度は私一人でも王宮へ行くことにするわね」


アイラは自分の中での納得する理由が見つかったので先程とはうってかわり覚悟を決めた表情でスミスへ言った。



「だがアイラ」


そんな事を言うアイラへスミスは少し不安げな表情を浮かべて言った。


「大丈夫よ。お父様」


アイラは笑顔でスミスへ言った。


この日アイラは翌日の事を考えていつもより早めに眠りについたのだった。




翌日、、


アイラは朝から出かける支度を済ませると馬車へ乗り込み予定通り一人で王宮へと向かった。



馬車が王宮へ到着すると王宮に仕える執事がアイラを出迎えてくれるとそのままレオンの待つ部屋へと案内されたのだった。


コンコンッ!



「レオン様、ガルバドール侯爵令嬢様がおみえになりましたのでお連れ致しました」


執事が部屋の扉を叩くと部屋の中へ声をかけた。


「あぁ。入って貰ってくれ」


中からレオンが応えた。


「かしこまりました」


執事がレオンへと言った。


「どうぞお部屋の中へとお入り下さい」


「はい。案内ありがとうございました」


執事がアイラへ言うとアイラは執事へとお礼を言ったのだった。


そして、アイラは執事が扉を開けてくれたので部屋の中へと入った。


「殿下失礼致します」


アイラは部屋に部屋に入ると部屋にいたレオンへと言った。


「やぁ!よく来てくれたね」


アイラがレオンへ声をかけるとレオンは笑顔でアイラへと言った。


「本日はお招き頂きありがとうございます」


アイラはカーテシーをしながらレオンへとお礼を言った。


「いやいや急に呼び出してしまって悪かったね」


レオンは申し訳なさそうな表情でアイラへ言った。


「いえ大丈夫です」


アイラはレオンの表情を見て慌てて応えた。


「そうかい?そう言って貰えると助かるよ。さぁソファーへとかけてくれ」


レオンはアイラの言葉にホッとした表情で応えるとアイラへ言った。


「はい」


アイラはレオンに言われそう応えるとソファーへ移動して腰を下ろした。


「今日君を呼んだのは君と話をしてみたいと思ってね」



レオンはアイラがソファーへ座るとアイラを呼んだ理由を伝えた。


(きっとローズさんの事の話をしたいのね。ローズさんの事を聞きたいんだわ)



アイラはレオンに言われるとそんな事を考えていた。


「お話とは何でしょうか?」


アイラがレオンへと尋ねた。


(ローズさんとお兄様の関係とかローズさんがどんな人かを聞きたいのなかしら?)


アイラはレオンに尋ねながらそんな事を考えていた。


「あぁ。あっ、そうだ。話をする前にこれを」


レオンはアイラに尋ねられと話を始めようとする前に思い出したかの様に言うとレオンは立ち上がり机の元に向かい引き出しから何かを取り出してアイラの前へと置いた。


レオンがアイラの前へと置いたのは先日学園の講堂裏の花壇でアイラがレオンへ差し出したハンカチだった。


「これは私が殿下にお渡ししたハンカチですよね?」


アイラは目の前に置かれたハンカチを見てレオンへ言った。


「あぁ。君が貸してくれたおかげで手を汚さずに済んだよ。ありがとう。きれいにハンカチを洗ってから返そうと思っていたんだ」


レオンが笑みを浮かべてアイラへと伝えた。


「手が汚れなかったのは良かったです。ですが、ハンカチは新品でしたのでわざわざ返して頂かなくても大丈夫でしたのに。殿下の手を煩わせてしまい申し訳ありません」


アイラはレオンがわざわざハンカチを洗って返却してくれたの事に申し訳なさを感じながら言った。


(手が汚れたらいけないと思ってハンカチ渡しただけなのにわざわざ綺麗にして返却してくれるなんて王太子って忙しいだろうにハンカチを渡した事で逆に何だか手間をかけさせてしまったみたいで悪い事をしてしまったからしら)


アイラはレオンに言いながらそんな事を考えていた。


「ハンカチを渡してくれたのは見返りを望んだ訳でも何かを企んでるでもなくただの親切心だけで渡してくれたんだな」


レオンは申し訳なさそうに何かを考えているアイラへを見てふっと笑みを浮かべて呟いた。


「はい?」


アイラはレオンが何か言ったのに気づき言った。


「いや何でもない。」


レオンはにこりと微笑みながら言った。


そんなレオンにアイラは??という表情を浮かべていた。


(こんなにも裏表のない令嬢がいるとはな。爵位の高い家の令嬢は育ちに申し分ない者ばかりだが腹の中では何を考えているかわからんものだ。王太子である立場上今のまで色々な令嬢を見てきたがこんな令嬢は初めてだ。何故、今まで気づかなかったのか)


レオンは??を頭に浮かべそうな表情をしているアイラを見ながらそんな事を考えていた。


「そうだ。君の事はアイラと呼んでも構わないか?」


「はい。構いません。アイラとお呼び下さい」


レオンがアイラへ名前を呼んでもいいかと尋ねるとアイラは頷きながら応えた。


「そうか。ありがとう。ではアイラこのハンカチの刺繍はアイラがしたのか?この刺繍している花は何と言うのだ?」


レオンは笑顔でアイラへお礼を言うとハンカチの刺繍を指差しながらアイラへ尋ねた。


「はい。私が刺繍したものです。この刺繍してある花の名前は"胡蝶蘭"と言います」


アイラはレオンに聞かれ応えた。


「アイラが刺繍を。とても上手く刺繍をするもんだな」


レオンはアイラの話を聞き感心した表情で言った。


「そうですか?ありがとうございます。刺繍は得意なのでそう言って頂けると嬉しいです」


アイラはレオンに言われて嬉しそうに笑って応えた。


(刺繍はハンドメイドを始めて一番苦戦したもので本当に指にタコが出来るくらいまで何度も練習して腕を上げたから褒めて貰えると素直に嬉しいわ)


アイラはレオンに応えつつそんな事を考えていた。


そんなアイラをレオンは優しい表情をして見ていた。


「胡蝶蘭?という花は聞いたことのない花だが」


レオンはふとアイラが言った花の名前が気になりアイラへ尋ねた。


「あ、えっとですね、、胡蝶蘭という花は異国に咲く花だそうです。以前本を読んでいた際に綺麗な花だなと思って刺繍してみたのです…。花言葉も幸福が飛んでくるという様で素敵だなと思ったのです」


アイラはレオンが胡蝶蘭を知らなかった事に一瞬慌てるもすぐに慌てるのを誤魔化す様に説明した。


(胡蝶蘭ってこの国には咲いてないのね。花って大体はどこの国でも咲いてると思ってたわ)


アイラはレオンに説明しつつそんな事を考えていた。


「ほぅ〜。異国にはその様な花言葉を持つ花があるのか。確かに花言葉も良いが花も綺麗な花をしているな」


レオンがアイラの説明を聞き感心しながら言った。


(幸福が飛んでくるか。何とも今の私に合う花言葉だな。ハンカチに刺繍してある胡蝶蘭が私にアイラという幸福を運んできてくれたからな)


レオンはアイラへ言いながらそんな事を考えていた。


「そうなのです。殿下は花がお好きなのですか?」


アイラがふと気になった事をレオンへと聞いた。


「何故だ?」


レオンが言った。


「いえ、先日は花を摘みに花壇へ来られていましたので」


アイラが言った。


(だって、花を摘みに来た事がきっかけでローズさんと出会うことになった訳だし。それにローズさんも花が好きだし花が好きという理由であの後も話が弾んだに違いないわ)


アイラはレオンに言いつつそんな事を考えていた。


「あぁあれは母上にお願いされて摘みに行ったのだ」


「え?王妃様にですか?」


「あぁ。そうなんだ。あの日の朝に母上から自分の好きな花が学園の花壇にしか咲いてない様でな。お茶会へ飾るのにどうしてもその花を飾りたかった様でな」


レオンは少し気まずい表情を浮かべながら花壇へ言った理由をアイラへと話した。


そんなレオンの話にアイラは驚き言った。


すると、レオンは花を摘みに言った理由をアイラへと説明したのだった。


「そうだったのですね」


アイラはレオンの話を聞いて驚いた表情のまま言った。


(殿下が花を好きな訳ではなかったのね)


アイラはそんな事を考えていた。


「あぁ。花を摘んだ事などなかったから戸惑ったがあの場にいた何という名前だったかな」


レオンが話ながら悩む様な表情を浮かべて言った。


「ローズさんですか?」


アイラはレオンの話を聞いて表情を明るくして言った。


「あぁそうだ。ローズ嬢だ。私が摘むのに苦戦していたらローズ嬢が摘み方を教えてくれて助かったよ」


レオンはアイラからローズの名前を聞くと思い出した表情を浮かべて言った。


「ローズさんにですか?ローズさんはとても優しくて素敵な方でしょう?」


レオンの話を聞いたアイラは目を輝かせながらレオンへ言った。


(きたきた!やっぱりローズのレオン攻略始まってたのよ!)


アイラはレオンに言いながら内心はワクワクしながら考えていた。


「あ、あぁ。そうだな。優しいかどうかは分からないが丁寧に摘み方を教えてくれたな」


レオンはアイラが突然目を輝かせて言ってきたのでそれに驚きつつ応えた。


「そうでしょう?それでそのローズさんとは他にはどの様なお話をされたのですか?」


アイラは更にワクワクする様にレオンへ尋ねた。


(あ〜何だかプリラブMの攻略をこなしていく時の気持ちになるわぁ)


アイラはレオンへ尋ねながらそんな事を考えていた。


「他にか?他にはそうだな。アイラとは知り合いなのかと聞いただろうか。それ以外は特に何も聞いていないが。私は花を摘んだらすぐに帰宅する馬車へ向かったのでな」


レオンはアイラに聞かれ思い出す様に応えた。


「?はい?それだけ聞かれたら帰られたのですか?」


アイラはレオンの話を聞き一瞬??となり呆気にとられた表情を浮かべて言った。


「あぁ。そうだが何か問題でもあるのか?」


レオンは呆気にとられた表情のアイラを見て不思議そうに尋ねた。


「あ、いえ。問題などありません」


アイラはレオンへ表情をかたくしたまま応えた。


「そうか」


「はい」


レオンはそんなアイラを見ながら不思議そうな表情で言った。


そしてアイラも言った。


(どういう事なの?ローズさんの殿下攻略は始まったんじゃなかったの?ヨハネス様の攻略もそうだけどプリラブM通りにストーリーが進んでない様に感じるのは気の所為ではない気がするだけどな。う〜ん。本当にどうなってるんだろう)


アイラはレオンの話を聞いてから頭を混乱させつつそんな事を考えていた。


その後、アイラはレオンと話をしているのに考え事をするのは失礼だと思い一旦考えるのをやめてレオンとの会話を続けた。


会話をしていたらあっという間に昼前になっていた。




「あっ、もうこんな時間」


アイラは時計を見て言った。


「本当だな。もう昼前か」


レオンも時計を見て言った。


「長い時間お邪魔してしまい申し訳ありません。殿下はお忙しいでしょうから私は失礼させていただこうと思います」


アイラが申し訳なさそうにレオンへ言った。


「いや大丈夫だ。アイラと話しているのが楽しくて時間を忘れてしまったよ。だがそうだな。午後からは執務をやらなければならいから残念だが今日はここでお開きだな」


レオンは笑みを浮かべるも少し残念そうに言った。


「私も楽しい時間を過ごす事ができました。ありがとうございます」


アイラは笑みを浮かべてお礼を言った。


「あ、殿下もしよろしければですがこちらのハンカチは殿下がお使い下さいませ。私が作ったものなので高級な物ではないのですが」


アイラは机の上のハンカチを見てレオンへと言った。


「いいのか?」


レオンは少し表情を明るくして言った。


「はい。元々返して頂こうとは思っていませんでしたので。殿下のお心遣いで綺麗に洗濯までして頂き逆に申し訳なく思うほどです」


アイラはそんなレオンに笑顔で言った。


「そうか。ではお言葉に甘えて私が使わせて貰うよ。ありがとう」


レオンはアイラに言われて嬉しそうな笑みを浮かべて言った。


「はい」


アイラは応えた。


「では、私はこれで失礼致します。」


アイラがレオンへと言った。


「あぁ。では馬車まで見送ろう。」


レオンが言った。




「い、いえ、大丈夫です。私は一人で馬車まで行けますので。殿下はこの後もお忙しいのですからこちらへこのままいらしてください」


アイラは慌てて応えた。


「いや大丈夫だ。見送るよ」


レオンは慌てるアイラへ優しく言った。


「ですが」


アイラはそんなレオンに戸惑いながら言った。


「私が大丈夫だと言ったら大丈夫なのだ」


レオンは少し強引に言った。


「分かりました。それではよろしくお願い致します」


「あぁ。行こう」


アイラは強引めに言うレオンに負けて言った。


そんなアイラへレオンは満足そうな笑顔で言ったのだった。


そして、アイラはレオンに見送られて馬車へ乗り込み自宅へと戻ったのだった。


(まずいな。つい先程まで一緒に居たというのにもうアイラに会いたいと思ってしまっているな。こんな気持ちになったのは初めてだな)


レオンがアイラの乗った馬車を優しい表情で見つめながらそんな事を考えているなど馬車の中のアイラは気づくはずもなかったのだった、、


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