第8話三人目の攻略対象

翌日、アイラはカミラと共に昼食を食べていた。



カカオール学園では中等部・高等部の学舎は別れていたが食事をする場所と講堂は共有できる場所となっていた。



その為、中等部の生徒は食事の時と全校集会の時だけは高等部の生徒と関わる事の出来る時間な為に男女問わず高等部の生徒とどうにかお近づきになりたいと考えている者ばかりだった。



そんな中、アイラとカミラは人気の少ない中庭にあるテラス席で食事をとるのが定着していた。



「カミラは高等部の方々に興味はないの?他の皆は目をギラギラさせて高等部の方々に少しでも近づきたくてというオーラを出しているけどカミラからはそんなオーラ感じないから。あっ、もしかして私がそういう事にあまり興味がないから気を使っているとかならやめてよ?」



アイラはふと首を傾げながらカミラへと尋ねた。



「気なんて使ってないわよ。私もアイラと一緒で特にそう高等部の方々とお近づきになんて思ってないのよ」



カミラは手でないないという仕草をしながら応えた。



「そうなの?それならいいのだけれど」


アイラは少しホッとした表情で言った。



「えぇ。それに私はここだけの話だけれど貴族のご令息の方々や王太子殿下にも興味はないのよ。だって私には心に決めた方が既にいるから」



カミラはクスッと笑いながらアイラへ言った。



「えっ?!本当に?!ど、どんな方なの?」



アイラはカミラの言葉にとても驚き言った。



「その方は王室騎士団の副団長の方なのよ」



カミラは少しはにかむ様に応えた。



「王室騎士団の副団長?って、え?!確かその方ってランド公爵家のご長男のカミラよりも十歳は上の方よね?」


アイラはカミラの言葉を聞き呟くと少し間を空けてハッとなり驚いた表情で言った。



(プリラブMにも出演するキャラだわ。確か騎士団の副団長でもあり王太子殿下の専属騎士の役割も果たしていた人よね)



アイラはカミラへ言いながらもそんな事を思い出し考えていた。



「えぇ。そうなの。ランド公爵家のご長男のロジャー様よ。でもね歳なんて関係ないって事を彼のお陰で知ることが出来たし私、今とても幸せなのよ」



カミラは頷きながら言うと嬉しそうな幸せそうな表情を浮かべてアイラへ言った。



「そっか。カミラの表情を見ていたら本当に彼の事を想っているのが伝わるわ。カミラとても幸せそうな表情をしてるもの」



アイラはカミラの表情を見て自分も嬉しくなり笑顔で言った。



「えぇ。ありがとう」



カミラは嬉しそうに微笑みながら言った。



「いいな〜。私には自分がカミラみたいな表情を浮かべられる日が来るなんて想像も出来ないわ」



アイラは苦笑いを浮かべながら言った。



(前世でも恋愛なんてした事なかったもんな。小さな頃にハンドメイドに興味をもってからはハンドメイドに没頭していて恋愛の方には目も行かなかったからな)



アイラはそんな事を考えていた。



「そんな事ないわよ。アイラにもきっとそんな風に思える相手が現れるわよ。今は想像出来なくてもね」



カミラは笑顔でアイラへ言った。



「そうかな〜」



アイラは少し不安げな表情で言った。


その時だった、、



食堂が騒がしくなった様だった。



「ん?何だろう。食堂が何だか騒がしくない?」



「本当ね。何かあったのかしら」



アイラが騒がしくなった事に気づくと食堂の方を見ながら言った。


カミラも食堂を見ながら言った。



「何かあったのかもしれないから行ってみましょう」



「えぇ」



カミラが言うとアイラが応えた。



そして二人は食堂の方へと向かった。


食堂へ着いた二人は外から食堂の中を覗いてみた。



中を覗くと食堂の中央辺りに人が群れていた。



「何だろうあれ」



「さぁ。人が多すぎて全然見えないわ」



カミラが中を覗きながら言うとアイラも中を覗きながら応えた。



そして少し経つとほんの少し人の群れの隙間から食堂の中央にいると思われる人物がが見えた。



「あっ!あぁ〜中央にいるのは王太子殿下だわ」



アイラが王太子の姿を見て言った。



「え?殿下が?でも殿下が食堂に来られるなんて初めてじゃない?」



「そうね」



カミラがアイラの言葉を聞くと首を傾げながら疑問そうに言った。


アイラも疑問そうな表情で応えた。




(この国の王太子殿下であるレオン・ド・カカオール。プリラブMの第三の攻略対象者。ヒロインの第三の攻略者でありプリラブMでの最終攻略者でもある。ヒロイン・ローズが恋をした相手でもあるのよね。容姿端麗の王太子。輝く金髪にブルーの綺麗な瞳でプリラブMのキャラそのものね)



アイラはレオンを見ながら前世での記憶を思い出し考えていた。




(王太子レオンのターンでこんな場面なんて見た覚えないからサブストーリーなのかしら。実際メインストーリーの方も攻略途中で私が死んでしまったから最後はどうローズがレオンを攻略したかが分からないのよね。でもレオンとローズの出会いは食堂ではなかったからここはスルーでも問題なさそうね。レオンとローズが出会うのは講堂裏でローズがジェシカから酷い目に遭い一人で声を殺して泣いていたところにレオンがたまたまその場所に居合わせる事から二人の仲が深くなっていくのよね)


アイラは更に前世での記憶を思い出しながら考えていた。



(でも昨日のお兄様やローズさん、ヨハネス様の状況を見ていると何だかプリラブMの世界なんだけどストーリーの進み具合が違うのよね。サブストーリーを飛ばしているからかとも思ったけど何だか違う気もする様なって感じなのよね。まぁでもレオンが最終攻略対象者である事に変わりはないだろうからここからプリラブM通りに進んでいくわよね)



アイラは若干の違和感を感じるもそれ以上深く考える事もしなかった。



「殿下が食堂に足を運びれただけであの様子だから本当に殿下も大変よね。おちおち食堂にも来られないのが分かるわね」



カミラが同情混じりの表情で言った。



「えぇ、そうね。殿下も色々と大変ね」



アイラはカミラの声でハッとなり慌てて応えた。



「私達には関係ない事だからテラスに戻って食事の続きをしましょう」



「そうね。まだ食事の途中だったからね」


カミラがアイラにアイラも応えた。



そして二人は再びテラスへと戻り食事の続きをしたのだった。




その日の放課後、、



アイラはカイルが待っている馬車へ向かっている時に講堂の回りにある花壇の手入れをしているローズが姿が目に入った。



(あっ!ローズさんだわ。丁度良かったわ。昨日ローズさんが居るのに寝てしまった事を直接謝りたいと思っていたのよ)



アイラはローズの姿を目にするとそんな事を思いローズの元へと走り向かった。



「ローズさん!」



アイラはローズの元へ行くとローズへ声をかけた。



「あら、アイラ。どうしたの?こんな所で」



声をかけられたローズは少し驚いた表情で言った。



「お兄様の所へ向かう途中にローズさんの姿が目に入ったので。昨日、眠ってしまった事を直接謝りたいと思ったので。昨日は本当に眠ってしまってごめんなさい。本当はもっとローズさんとお話したいと思っていたんですけど。お客様の前で寝てしまうという失態をしてしまったので」



アイラは申し訳なさそうな表情を浮かべて昨日の事をローズのへと謝った。



「何だ、そんな事で走ってここまで来たの?全然気にしなくてもいいのよ。ニーナもアイラも疲れていたんでしょ?話せる機会はいつでもあるんだから大丈夫よ」



ローズはくすくすと笑みを浮かべながらアイラへと言った。



(あぁローズさん優しい方ね。プリラブMの通り攻略者達がローズさんに恋をするのも分かるわね。女の私でも何だか癒やされるというか)



アイラはくすくすと笑うローズを見ながらほっこりとそんな事を思っていた。



「そう言って頂きありがとうございます」



「えぇ。またお宅にお邪魔するからその時は沢山お話しましょうね」


「はい」


アイラはホッとした表情で言うとローズは優しく微笑みながら言った。



「ところでローズさんはここで何を?」



「あぁ花壇の水やりをしていたところなの。私花が好きでしょ?だからねこの場所がとても好きで週に数回水やりに来ているのよ」



「そうだったんですね」



「えぇ。前回はカイルも水やりを手伝ってくれたのよ」



「お兄様が?」



「ええ。水やりをしながら花の花言葉を沢山教えてくれたりもしたのよ?」



「そうなんですか」


アイラはふとローズへ尋ねるとローズは花を見ながら応えた。


ローズはカイルとも一緒に水やりをした事や花言葉を教えてくれた事などを嬉しそうにアイラへと教えた。



(だからローズさんはジェシカに酷い目にあった際も講堂裏のこの場所へ来ていたのね。だからこの場所で王太子のレオンと出会ったのね。でも…お兄様とは私の知らない所でかなり仲良くやっているみたいね。プリラブMではカイルとローズは仲は良くなるけどここまで仲良くはなっていなかったけどな。それにカイル攻略時はジェシカが結構邪魔で攻略するのを苦戦したけどこの世界ではあっさりカイルを攻略してるのよね。そういえばジェシカに何かされてる様子もないのよね。う〜ん)


アイラはローズの話を聞いて頭を悩ませ考えていた。



「こんなに綺麗な花が沢山あるからこの花で押し花を作るのもいいですね」



アイラは笑顔でローズへ言った。



「押し花とは?」



ローズは首を傾げながらアイラへ尋ねた。



(あ、この世界には押し花っていうものはないの?そうなんだ。押し花はどこの世界にもあるものだと思っていたわ)



アイラはローズに言われそんな事を思っていた。



「ああ、えっと、押し花というのは花を本などに挟んで作るものなのですけど。今度我が家に来られた際に作り方をお教えしますね」



「本当に?ありがとう。アイラは本当に物知りね」



「へへ。そんな事ないですが」



アイラはローズへ押し花について伝えるとローズは笑顔で言った。


そんなローズの言葉にアイラは少しはにかみ笑いを浮かべて言った。



「それにしても本当に綺麗な花が沢山咲いていますね。っ!!?」



アイラが花を見た後にローズの方を向き満面の笑みで言った。


しかし、アイラは言い終わったと同時に満面の笑みがサーっと消えたのだった。



(王太子レオン?!)



アイラは驚きの表情を浮かべたままローズの後ろに見えた人物をみて心の中で言った。



そこに立っていたのは王太子・レオンだった。



「そこで何をしているのだ?!」



レオンはアイラとローズへ声をかけた。



「?!あ、王太子殿下。花の水やりをしていたところでございます」



レオンに声をかけられたローズは慌てて応えた。



(え?ローズさんはレオンの事を知ってるの?え?あ、そうか。ローズさんにレオンは同い年だし王太子の事は学園の皆知っているんだったわ)



アイラは目の前に急にレオンが現れた事で慌てたのか自分で自分にツッコミを入れていたのだった。



「そうか。ご苦労。少し花を摘みたいのだが構わないか?」



「え?あ、はい。構いません。どうぞお摘み下さい」



「あぁ。ありがとう。」



レオンはローズへ水やりの労いの言葉をかけると花を詰んでいいかを尋ねた。


ローズが慌てて応えるとレオンはお礼を言った。



(あぁさすが王太子殿下ね。プリラブMでもそうだったけれどオーラが違うというか何かそこに居るだけで様になるというか。これはローズさんも惚れるわね。って、待って!いやいやいやローズとレオンの出会いはもっと先だし状況も違うけど?え?どういう事?出会いは出会いで間違いないけどね)



アイラはレオンの話し方や仕草を見て軽く頷きながらそんな事を思っていたがプリラブMでのローズとレオンの出会い方が違う事に気づき軽く混乱した。



「アイラどうしたの?」



ローズが軽く混乱しているアイラを見て心配そうに声をかけた。



「え?あ、いえ。何でもありません」


アイラはローズに声をかけられハッとなり苦笑いを浮かべて言った。



(今はとりあえずそんな事を考える前にこの場を離れるべきね。二人の出会いに間違いないんだからこの後に二人で話をするはずだから邪魔は出来ないわ)



アイラはそんな事を考えた。



「ローズさん私もう帰りますね。お兄様を待たせてしまっているので」



アイラはローズへ声をかけた。



「え?えぇ。分かったわ。気を付けてね」



「はい。ありがとうございます。ではさよなら」


「ええ」



ローズはアイラへ応えるとアイラはローズへと挨拶を済ませた。



そして、レオンの横を通り過ぎる際にレオンへと一声かけた。



「王太子殿下。失礼致します」



アイラはレオンへと挨拶をした。



「あぁ」



レオンは応えた。



その時、アイラはレオンの手が目に入りハッとなった。



「あの殿下。花を摘まれる際に手に花の茎の汁が付いてしまわれていたので、よろしければこれをお使い下さい」



アイラはレオンの手が汚れている事に気づき言うと鞄から一枚のハンカチを取り出し差し出した。



「これは?」



レオンは差し出されたハンカチを見て言った。



「まったく使っていないハンカチです。手に汁がついたままだと手がかぶれてしまう事もありますのでハンカチで汁をお拭き取り下さい」



アイラがレオンへ伝えた。


「汁で手が。分かった。ありがとう。では、使わせて貰うよ」



レオンは自分の手を見ながら言うとアイラが差し出したハンカチを受け取りアイラへお礼を言った。



「はい。では私はこれで失礼致します」



ハンカチを受け取ったアイラはホッとした表情を浮かべながら応えるとレオンへと改めて挨拶をしてその場を離れようとした。



(花の汁って馬鹿にできないのよね。私も昔花の汁で手がかぶれて痒くて痛くて大変だったのよね)



アイラは昔の事を思い出しそんな事を考えながらカイルが待つ場所へと向かうとした。



「待て!そなた名前は何というのだ?」



そんな去っていくアイラとアイラから受け取ったハンカチを見てレオンがアイラへ声をかけた。



「え?私ですか?」



「あぁ」



アイラはレオンに突然名前を尋ねられ驚いた表情で言うとレオンは頷きながら言った。



「私はガルバドール侯爵家のアイラ・プ・ガルバドールと申します」



アイラは何故自分が名前を聞かれているのかを不思議に思いながらもレオンへと応えた。



「アイラか。分かった。もう行ってもよいぞ」



「??はい。分かりました。では失礼致します」



アイラの名前を聞いたレオンはアイラの名前を小さく呟くとアイラへ帰ってもいいと伝えた。


アイラは一体何なのだろうと思いながらも挨拶をしてカイルの元へと向かったのだった。




アイラはカイルの元へと着くと遅くなった事を謝り共に馬車に乗り込んだ。


帰りの馬車の中では先程ローズと会って話をした事をカイルへと伝えた。


アイラからローズと話をした事を聞くとカイルは自分がローズと水やりをした話や花言葉を教えた話などを嬉しそうにアイラへ話した。




アイラはその話は先程ローズから聞いた事は黙ったままカイルの話を笑顔で聞いていたのだった。



(お兄様本当にローズさんの話を嬉しそうにするのね。本当に心からローズさんの事を想っているのね。でも殿下とローズさんが出会ってしまったからこらからはお兄様にとって辛い現実が待っているのよね。はぁ〜それを考えるとやるせなくなるわね。今頃…殿下とローズさんは話をしているだろうからこれをきっかけに二人の仲は深まっていくのよね)



アイラはカイルの嬉しそうに話をする姿を見ながら頭ではそんな事を考え複雑な思いを抱えていたのだった。



ローズの第三の攻略対象が現れた事で更にアイラを混乱させる出来事が起こるなどこの時のアイラは想像もしていなかったのだった、、

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